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ランク戦ブース、誰か良さげな奴いないかなーと後輩達の戦闘を見ていたら、ふっとキャップのつばが目に入った。
「ちす」
「荒船か。久しぶりだな」
「うす。ご無沙汰してます」
荒船は軽くお辞儀すると、あたしの横に立って一緒に画面を見始めた。
「ランク戦しねえのか?」
「俺はあきさん見かけたんで来ただけっす」
「なんじゃそら」
「あきさんこそ、混ざらないんですか?」
「なんかなーこいつとやりたい! ってなる奴がいないんだよなー」
「そっすか」
手に持っているジュースを飲みながら、脳内で後輩の動きにケチをつける。なんでそこで踏み込まないんだとか、何故それをかわせねえんだとか。まだまだ青い動きは、隣の男が入隊した時を思い出させた。
「パッとしねぇなー、お前が入って来た時のがまだいい動きしてた」
「あきさんが褒めてくれるなんて珍しいっすね」
「別に褒めてはねえだろ。荒船は教え甲斐があったって話だ」
荒船が入隊した頃、あたしはもうランキングの上位にいて、代わり映えのしないメンツに飽きてきていた。そんな時に出会った荒船の、荒々しくて大胆な動きは私を惹きつけた。こいつは育ったらどんな攻撃手になるんだろうとワクワクして、初めてあたしは自分の技術を教えたいと思った。声をかけたら、「女性に教わるのはちょっと」と渋ったこいつを、ブースに連れ込んでボコボコにしてやったのはいい思い出だ。
「あたしはお前をトップランカーにしたくて、剣を教えたのになー。まさか狙撃手に転向するとは」
「それについてはすんません」
「なんだよーじゃあ今からでも戻ってこいよー」
「それは出来ないっす」
「ちぇー」
唇を尖らせて抗議すれば、ふっと少しだけ笑ったのが見えた。
「なあ、久々に一戦どうだ? 腕が鈍ってねえか見てやるよ」
「鈍ってないですけどいいですよ」
空になった紙コップを握りつぶす。意気揚々とブースに入ろうとすると、
「あの、勝ったらお願い一つ聞いてもらっていいすか」
そんな言葉が聞こえた。振り向くと、あたしを真っ直ぐ見る瞳とかち合う。
「?? いいぞ、なんだ?」
そう問えば、ふぅーっと深く息を吐き出し口を開く。
「俺が勝ったら、俺の彼女になってください」
「……は?」
あたしが目を見開けば、にっと挑戦的に笑う。昔から、その目と表情は好きだった、けど。
「じゃあ俺、102番のブースに入ってますから」
キャップを深く被り直しながら、荒船はあたしの横を通り過ぎる。あれは、本気の時の仕草だ。知ってる。
「え、ええええー?!」
顔は自分のものと思えない程熱い。あたしは、どうしたらいいんだ? 勝つべきなのか、それとも? どうしたいのか分からないまま、あたしは対戦ブースに入る。弟子が彼氏に昇格するかもしれないなんて。脳裏に思い出されたのは、今と変わらぬ彼の真剣な目だった。
「ちす」
「荒船か。久しぶりだな」
「うす。ご無沙汰してます」
荒船は軽くお辞儀すると、あたしの横に立って一緒に画面を見始めた。
「ランク戦しねえのか?」
「俺はあきさん見かけたんで来ただけっす」
「なんじゃそら」
「あきさんこそ、混ざらないんですか?」
「なんかなーこいつとやりたい! ってなる奴がいないんだよなー」
「そっすか」
手に持っているジュースを飲みながら、脳内で後輩の動きにケチをつける。なんでそこで踏み込まないんだとか、何故それをかわせねえんだとか。まだまだ青い動きは、隣の男が入隊した時を思い出させた。
「パッとしねぇなー、お前が入って来た時のがまだいい動きしてた」
「あきさんが褒めてくれるなんて珍しいっすね」
「別に褒めてはねえだろ。荒船は教え甲斐があったって話だ」
荒船が入隊した頃、あたしはもうランキングの上位にいて、代わり映えのしないメンツに飽きてきていた。そんな時に出会った荒船の、荒々しくて大胆な動きは私を惹きつけた。こいつは育ったらどんな攻撃手になるんだろうとワクワクして、初めてあたしは自分の技術を教えたいと思った。声をかけたら、「女性に教わるのはちょっと」と渋ったこいつを、ブースに連れ込んでボコボコにしてやったのはいい思い出だ。
「あたしはお前をトップランカーにしたくて、剣を教えたのになー。まさか狙撃手に転向するとは」
「それについてはすんません」
「なんだよーじゃあ今からでも戻ってこいよー」
「それは出来ないっす」
「ちぇー」
唇を尖らせて抗議すれば、ふっと少しだけ笑ったのが見えた。
「なあ、久々に一戦どうだ? 腕が鈍ってねえか見てやるよ」
「鈍ってないですけどいいですよ」
空になった紙コップを握りつぶす。意気揚々とブースに入ろうとすると、
「あの、勝ったらお願い一つ聞いてもらっていいすか」
そんな言葉が聞こえた。振り向くと、あたしを真っ直ぐ見る瞳とかち合う。
「?? いいぞ、なんだ?」
そう問えば、ふぅーっと深く息を吐き出し口を開く。
「俺が勝ったら、俺の彼女になってください」
「……は?」
あたしが目を見開けば、にっと挑戦的に笑う。昔から、その目と表情は好きだった、けど。
「じゃあ俺、102番のブースに入ってますから」
キャップを深く被り直しながら、荒船はあたしの横を通り過ぎる。あれは、本気の時の仕草だ。知ってる。
「え、ええええー?!」
顔は自分のものと思えない程熱い。あたしは、どうしたらいいんだ? 勝つべきなのか、それとも? どうしたいのか分からないまま、あたしは対戦ブースに入る。弟子が彼氏に昇格するかもしれないなんて。脳裏に思い出されたのは、今と変わらぬ彼の真剣な目だった。