short-1-
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
風間隊作戦室前。チョコレートの詰まったタッパーを持って、私は深呼吸を繰り返していた。今日はバレンタインデー。普段お世話になってる人に、昨日作ったトリュフチョコを配って回っている。そう、これはただの義理チョコだ。菊地原君への本命チョコではない。これは義理チョコ、義理チョコ…………。うん、よし。意を決して扉に手をかける。
「失礼しまーす! ハッピーバレンタイーン!」
「今度は早乙女か」
「わーあきちゃんもチョコ持って来てくれたの?」
風間さんと三上先輩の反応を見るに、ここを訪れたのは私が初めてじゃない様だ。それなら渡しやすいと、少し気が楽になった。タッパーを開け、チョコを振る舞う。
「どうぞ、食べてください!」
タッパーからチョコが摘ままれ、皆の口に運ばれる。
「おいし~!」
「ん。美味い」
「よく出来てますね。流石、早乙女さんです。もう一個貰ってもいいかな?」
「あ、どうぞ!」
皆さんの反応は上々。歌川君はおかわりしてくれたし。あとは…………。
「き、菊地原君も、どうかな!?」
少し離れたところ、私に構わず作業をしている背中に声をかける。彼は振り向くと、ゆっくりこちらに寄って来た。緊張で心臓が締め付けられる。菊地原君の指が、チョコをひとつ摘まんで口へ運ぶ。
「……うん、美味しい。よく出来てるんじゃない」
「!? 菊地原君が、褒めた……!!」
「はあ?」
菊地原君は不服そうに眉を寄せた。だって、褒めてくれるなんて想定外だ。
「絶対なんか言われると思ってた。それか無言」
「あのねえ、僕チョコの良し悪しなんて正直よく分からないから。大体、僕だって褒めるときは褒めるし」
そう言いながら、菊地原君はふたつめのチョコを口に入れた。
「うん、美味しい」
「あ、ありがとう……」
「…………これ、あとは誰にあげんの」
「え? えっと、後は諏訪さんのところ……」
「じゃあ、残り僕にちょうだい。他の奴に配んないで」
「へ?」
「ほら、分かったらさっさと諏訪さんところ行って戻ってくる!」
「え、え、わ、分かった」
半ば追い出される様に風間隊の作戦室を出る。えっと、残ったチョコ全部菊地原君にあげるってこと? タッパーの中身を確認する。……諏訪さんにはちょっと我慢してもらおうかな。もう一度、菊地原君にチョコをあげなければならないと気付いてまた緊張するけど、今日もう一度菊地原君と話せると思えば嬉しかった。私はダッシュで諏訪隊の作戦室に向かった。
「……素直にもっとチョコ欲しいって言えばいいのに」
早乙女が去った後、ちくり、と歌川にそう言われる。
「…………本命チョコ用意しないあいつが悪い」
他と一緒くたに渡されたことに不満を漏らす。ちゃんと、自分だけに特別なチョコをくれると思っていたのに。縮まらない距離が、もどかしかった。
「失礼しまーす! ハッピーバレンタイーン!」
「今度は早乙女か」
「わーあきちゃんもチョコ持って来てくれたの?」
風間さんと三上先輩の反応を見るに、ここを訪れたのは私が初めてじゃない様だ。それなら渡しやすいと、少し気が楽になった。タッパーを開け、チョコを振る舞う。
「どうぞ、食べてください!」
タッパーからチョコが摘ままれ、皆の口に運ばれる。
「おいし~!」
「ん。美味い」
「よく出来てますね。流石、早乙女さんです。もう一個貰ってもいいかな?」
「あ、どうぞ!」
皆さんの反応は上々。歌川君はおかわりしてくれたし。あとは…………。
「き、菊地原君も、どうかな!?」
少し離れたところ、私に構わず作業をしている背中に声をかける。彼は振り向くと、ゆっくりこちらに寄って来た。緊張で心臓が締め付けられる。菊地原君の指が、チョコをひとつ摘まんで口へ運ぶ。
「……うん、美味しい。よく出来てるんじゃない」
「!? 菊地原君が、褒めた……!!」
「はあ?」
菊地原君は不服そうに眉を寄せた。だって、褒めてくれるなんて想定外だ。
「絶対なんか言われると思ってた。それか無言」
「あのねえ、僕チョコの良し悪しなんて正直よく分からないから。大体、僕だって褒めるときは褒めるし」
そう言いながら、菊地原君はふたつめのチョコを口に入れた。
「うん、美味しい」
「あ、ありがとう……」
「…………これ、あとは誰にあげんの」
「え? えっと、後は諏訪さんのところ……」
「じゃあ、残り僕にちょうだい。他の奴に配んないで」
「へ?」
「ほら、分かったらさっさと諏訪さんところ行って戻ってくる!」
「え、え、わ、分かった」
半ば追い出される様に風間隊の作戦室を出る。えっと、残ったチョコ全部菊地原君にあげるってこと? タッパーの中身を確認する。……諏訪さんにはちょっと我慢してもらおうかな。もう一度、菊地原君にチョコをあげなければならないと気付いてまた緊張するけど、今日もう一度菊地原君と話せると思えば嬉しかった。私はダッシュで諏訪隊の作戦室に向かった。
「……素直にもっとチョコ欲しいって言えばいいのに」
早乙女が去った後、ちくり、と歌川にそう言われる。
「…………本命チョコ用意しないあいつが悪い」
他と一緒くたに渡されたことに不満を漏らす。ちゃんと、自分だけに特別なチョコをくれると思っていたのに。縮まらない距離が、もどかしかった。