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本部のラウンジ、背の高い男子に囲まれて私は身動きを取れずにいた。頭上では、カゲと荒船が睨み合っている。2人の後ろにはポカリとゾエがそれぞれ付いているので威圧感が半端ない。周囲の人間は、関わらないよう遠巻きに離れて様子を伺っている。要は完全に浮いているのだ。こんな状況は何度目になるだろうか。
「おい、カゲ。あきから手ぇ離せよ。困ってんだろ」
「あぁ? お前が離せよ。あきはこれから俺の隊室でダラダラすんだよ」
「はぁ? ちげーよ、うちの隊室で映画鑑賞だ。俺の膝の上でな」
「ふざけんな、そんなん許すか」
「…………二人とも、やめて」
私が口を開くと、私を囲む馬鹿共はパァっと顔を輝かせて私を見る。
「かわいい~!!」
「マジ癒されるなー……」
「もっかい! 今のもっかい頼む!」
「本当、可愛いな、声が」
私は呆れてため息を吐いた。こいつらが言うには、私の声は極上の萌えボイスとやららしい。私が言葉を発する度にこの盛り上がりようなので、話しにくくて仕方がない。流石に任務の時は自重してくれるけど。ずいっと荒船が顔を近づけてくる。後ろにカゲがいるから半歩しか下がれない。
「なあ、映画見ようぜ? そんでその声で感想聞かせてくれ」
「私、アクション興味ないよ」
「じゃあ、筋トレカウントしてくれ、俺の」
「私そんな暇じゃないから」
荒船隊2人は崩れ落ちた。大げさな。次は俺だとばかりにカゲが身を乗り出してくる。
「隊室でダラダラならいいだろ? 読んで欲しい漫画あんだよ」
「……私声出して読む趣味ない」
「じゃあ、ゾエさんと麻雀は?」
「いや、ルール知らないから!」
ぐはぁと影浦隊も撃破した。まったく、あの手この手で私に喋らせようとするのやめてほしい。スタスタと立ち去ろうとすれば、待ってだの俺の癒しがだのと追いすがられる。
「だあぁ、もう!! しつこい!」
「「「「かわいい~……」」」」
四人が蕩けた声を出しているうちに、ダッシュでその場を離れた。ラウンジを出て、通路を通り抜ける。追ってくることを考慮してわざと曲がりくねったルートを選ぶ。人にぶつかりそうになり謝ると、私の顔と声を聞いて、ああ、と微笑まれた。その反応に苦い感情を覚えた。トリオン体じゃないとすぐに息が上がってしまう。角を曲がり、ここまでくれば大丈夫だろう。私は足を止め呼吸を整える。
「あきじゃねーの。バテちまってどーした?」
「なーんかエッロいね!」
「……当真に犬飼」
頭上からの声に、今度はお前らかと内心舌打ちする。実際にはしない。軽く睨むに留める。
「睨んでるつもりだろうけど、逆効果だからね? そーいう態度は、かえって男を煽るよ?」
「うっさい、バカ犬」
「その声で言われても可愛いだけなんだよなー」
ヘラヘラと笑うので、腹をこずいてやった。こっちは困っているっていうのに。
「なー勉強教えてくれよ。あきが教えてくれんならちょっとやる気出る」
「荒船か今ちゃんに頼んで。ていうか、やる気は出せ」
「じゃあ俺とカラオケデートしようよ~」
「却下! この流れデジャヴなんだけど」
「おい、見つけたぞ!」
背後からの声に、ビクッと肩が上がる。この声は荒船だ。振り返らず、当真と犬飼の間をすり抜ける。犬飼に腕を掴まれそうになったが、振り払ってまた走り出した。今度は相手も走っている。どこをどう走れば逃げ切れるだろうか。闇雲に足を動かしていたら、不意に横からグイッと引っ張られた。そのまま、どこかの部屋に入ってしまう。閉じられたドアの向こうを、荒船達が通り過ぎていくのが見えた。振り返れば、少し珍しい人物が私の身体を支えていた。
「ごめん、なんか追われてるみたいだったから、咄嗟に引っ張った」
「いや、助かった。鋼、珍しいね?」
「ちょっと提出する書類があったから。……大変だな、人気者も」
少し眉尻を下げて笑う鋼を見て、なんだかぐっとお腹からなにかがこみ上げて、不覚にも目の前がぼやける。人気者……その響きが皮肉のように思えて、自分の中のなにかが否定されたような、暗い気持ちに囚われた。
「……私って、声が可愛いだけなのかな」
「??」
「みんな、声が可愛いってばっかり……なんか、疲れちゃった」
薄暗い部屋の中、沈黙が広がる。ここは資料倉庫かな、なんて関係ないことを考えながら、鋼の答えを待つ。やがて、鋼は口を動かした。
「……俺も声は可愛いと思うけど、」
鋼のまっすぐ向けられた視線が、少しだけ下を向く。
「けど、それ以上に、あき自体が可愛いと思うよ。だから、元気出して欲しいな」
ニコッと笑いかける鋼につられて、自然と私の口角も上がる。そっか。
「うん、ちょっと元気出た。ありがとう」
同んなじ「可愛い」という言葉なのに、こんなに響きが違うものなのか。鋼の可愛いは、私を安心させてくれた。
「あいつらにも、あきが困ってたって言っとくよ。悪気はない筈だから、許してやってくれ」
「……うん。そうだね」
自然と撫でられた頭に、内心照れてしまったのは内緒。
後日、「喋らなくたって僕達は君が好きです!!」と書かれた横断幕を持ってみんなが謝りに来た。横断幕なんて作るの大変だろうに、暇かよ、と思ったけど笑ってしまった。馬鹿だなぁって、やっぱりみんなのこと嫌いになんてなれないのだった。
「おい、カゲ。あきから手ぇ離せよ。困ってんだろ」
「あぁ? お前が離せよ。あきはこれから俺の隊室でダラダラすんだよ」
「はぁ? ちげーよ、うちの隊室で映画鑑賞だ。俺の膝の上でな」
「ふざけんな、そんなん許すか」
「…………二人とも、やめて」
私が口を開くと、私を囲む馬鹿共はパァっと顔を輝かせて私を見る。
「かわいい~!!」
「マジ癒されるなー……」
「もっかい! 今のもっかい頼む!」
「本当、可愛いな、声が」
私は呆れてため息を吐いた。こいつらが言うには、私の声は極上の萌えボイスとやららしい。私が言葉を発する度にこの盛り上がりようなので、話しにくくて仕方がない。流石に任務の時は自重してくれるけど。ずいっと荒船が顔を近づけてくる。後ろにカゲがいるから半歩しか下がれない。
「なあ、映画見ようぜ? そんでその声で感想聞かせてくれ」
「私、アクション興味ないよ」
「じゃあ、筋トレカウントしてくれ、俺の」
「私そんな暇じゃないから」
荒船隊2人は崩れ落ちた。大げさな。次は俺だとばかりにカゲが身を乗り出してくる。
「隊室でダラダラならいいだろ? 読んで欲しい漫画あんだよ」
「……私声出して読む趣味ない」
「じゃあ、ゾエさんと麻雀は?」
「いや、ルール知らないから!」
ぐはぁと影浦隊も撃破した。まったく、あの手この手で私に喋らせようとするのやめてほしい。スタスタと立ち去ろうとすれば、待ってだの俺の癒しがだのと追いすがられる。
「だあぁ、もう!! しつこい!」
「「「「かわいい~……」」」」
四人が蕩けた声を出しているうちに、ダッシュでその場を離れた。ラウンジを出て、通路を通り抜ける。追ってくることを考慮してわざと曲がりくねったルートを選ぶ。人にぶつかりそうになり謝ると、私の顔と声を聞いて、ああ、と微笑まれた。その反応に苦い感情を覚えた。トリオン体じゃないとすぐに息が上がってしまう。角を曲がり、ここまでくれば大丈夫だろう。私は足を止め呼吸を整える。
「あきじゃねーの。バテちまってどーした?」
「なーんかエッロいね!」
「……当真に犬飼」
頭上からの声に、今度はお前らかと内心舌打ちする。実際にはしない。軽く睨むに留める。
「睨んでるつもりだろうけど、逆効果だからね? そーいう態度は、かえって男を煽るよ?」
「うっさい、バカ犬」
「その声で言われても可愛いだけなんだよなー」
ヘラヘラと笑うので、腹をこずいてやった。こっちは困っているっていうのに。
「なー勉強教えてくれよ。あきが教えてくれんならちょっとやる気出る」
「荒船か今ちゃんに頼んで。ていうか、やる気は出せ」
「じゃあ俺とカラオケデートしようよ~」
「却下! この流れデジャヴなんだけど」
「おい、見つけたぞ!」
背後からの声に、ビクッと肩が上がる。この声は荒船だ。振り返らず、当真と犬飼の間をすり抜ける。犬飼に腕を掴まれそうになったが、振り払ってまた走り出した。今度は相手も走っている。どこをどう走れば逃げ切れるだろうか。闇雲に足を動かしていたら、不意に横からグイッと引っ張られた。そのまま、どこかの部屋に入ってしまう。閉じられたドアの向こうを、荒船達が通り過ぎていくのが見えた。振り返れば、少し珍しい人物が私の身体を支えていた。
「ごめん、なんか追われてるみたいだったから、咄嗟に引っ張った」
「いや、助かった。鋼、珍しいね?」
「ちょっと提出する書類があったから。……大変だな、人気者も」
少し眉尻を下げて笑う鋼を見て、なんだかぐっとお腹からなにかがこみ上げて、不覚にも目の前がぼやける。人気者……その響きが皮肉のように思えて、自分の中のなにかが否定されたような、暗い気持ちに囚われた。
「……私って、声が可愛いだけなのかな」
「??」
「みんな、声が可愛いってばっかり……なんか、疲れちゃった」
薄暗い部屋の中、沈黙が広がる。ここは資料倉庫かな、なんて関係ないことを考えながら、鋼の答えを待つ。やがて、鋼は口を動かした。
「……俺も声は可愛いと思うけど、」
鋼のまっすぐ向けられた視線が、少しだけ下を向く。
「けど、それ以上に、あき自体が可愛いと思うよ。だから、元気出して欲しいな」
ニコッと笑いかける鋼につられて、自然と私の口角も上がる。そっか。
「うん、ちょっと元気出た。ありがとう」
同んなじ「可愛い」という言葉なのに、こんなに響きが違うものなのか。鋼の可愛いは、私を安心させてくれた。
「あいつらにも、あきが困ってたって言っとくよ。悪気はない筈だから、許してやってくれ」
「……うん。そうだね」
自然と撫でられた頭に、内心照れてしまったのは内緒。
後日、「喋らなくたって僕達は君が好きです!!」と書かれた横断幕を持ってみんなが謝りに来た。横断幕なんて作るの大変だろうに、暇かよ、と思ったけど笑ってしまった。馬鹿だなぁって、やっぱりみんなのこと嫌いになんてなれないのだった。