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冷静になれ、俺。今起きたことを整理すんだ。本部の廊下に突っ立って、ない頭を回そうとするが、どうにも上手くいかない。大きく加速してしまった心臓も治まらない。気分は高揚しているような急降下しているような。曖昧でグラグラだ。くそ、なんでこんなことになったんだ。
早乙女あきと俺の関係性は、防衛隊員と回収班というひどく浅いものだ。ただ、他の隊員よりも少し関わる機会が多いのは、うちの隊長があきさんを妹分として可愛がっているから。なんでも、分かりもしないのにトリガーの仕組みとか、トリオン兵の構造とか、話してやるとそりゃ嬉しそうに聞いてくれんだと。回収班は技術部に出入りすることも多いから、自然と話すようになったらしい。隊長が防衛隊員に転向した時は、それはそれは寂しがっただとか。別にボーダー辞めるわけでもねえのに。案の定、今でも隊長とあきさんの関係は続いていて、あきさんは時たまうちの隊室に顔を見せる。あきさんが顔を見せるのは、決まって彼女がなにか失敗して落ち込んでいる時だった。あきさんは結構天然で、しょっちゅうドジを踏む。鈴鳴の太一といい勝負だと思う。ふわふわした雰囲気と、ふにゃっとした笑顔で大抵許されてるけど。この前俺に飲み物持ってこようとして全部俺にぶちまけた時は、ベタすぎんだろと驚いたが。まあ許した。すぐなんか踏むしなんか落とすし、終いにはコケるし、見ていてハラハラする人だ。隊長はそんな所が可愛いと、泣きつきにくるあきさんを励ます。甘やかしてんなーとは思うけど、俺も同じ立場だったらそうしてしまうんだろう。不思議な魅力のある人でもあった。
そんなあきさんが、なにやら大量の資料を抱えて前を歩いていたら、そりゃ心配にもなる。俺はその背中を見つけて慌てて駆け寄った。
「あきさーん、またやらかすぜ?」
「当真くん! まだ私なにもやってないよ!」
俺の茶化しに頬を膨らまして抗議するが、説得力なんてあったもんじゃない。てか、いい歳のお姉さんがやるリアクションじゃねぇ。
「ほら、荷物持っていってやるよ」
「大丈夫大丈夫! もうそこの部屋に運ぶだけだから!」
確かに、目的の部屋はすぐ目の前だった。あきさんは荷物を抱えたまま、ドアを開けようと手を伸ばす。すると、それと同じタイミングで部屋から人が出てきた。
「うわっ」
「!! 危ねっ!!」
咄嗟に左手を出し、後ろにのけぞったあきさんの身体を支える。なぜか後ろに足を蹴り進めるあきさんをぐいっと押し出して真っ直ぐ立たせた。
「すいません、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。当真くんも大丈夫だよね?」
「おう、俺はなんともねーぜ」
「よかった。失礼しました」
軽くお辞儀をして、飛び出してきた人物は去っていった。あきさんはふらつきながら道を開けると、部屋に足を踏み入れた。
「それじゃ、当真くんありがとね! また隊室お邪魔します!」
「ああ、いつでもどうぞー」
ひらひらと左手を振ってやれば、ふにゃっと笑う。そうして、扉の向こうに消えてから数秒。先ほどあきさんに触れた左手を見る。手に残っているのは、柔らかな感触。
「ーーーーっ!!」
柔らかな、感触。ボッと顔に熱が集まる。背中を触ったつもりだった。けれど、手は思ったよりも下に触れていて。そのまま、片手で彼女の全体重を支えたから、指は肉に食い込んだ。笑顔と一緒でふにゃふにゃした、けれども弾力のある触り心地。押し出す時に、つるりと撫で付ける様に滑ってしまった指。ぷりんと形がいいことを覚えてしまった。というか、俺の指、割れ目に入り込んでなかったか?
「ーーマジ勘弁してくれよ」
ラッキースケベと喜ぶ反面、汚してしまったような罪悪感に苛まれてグルグルする。左手は気持ちよかったとあの感触を忘れようとしてくれない。ただ触れただけなのに、ここまで取り乱している自分がなんだか情けなくて、なんでもないように笑っていた彼女が憎たらしくなった。ドキドキと主張する心臓に、恋にしてたまるかと悪態をついた。
早乙女あきと俺の関係性は、防衛隊員と回収班というひどく浅いものだ。ただ、他の隊員よりも少し関わる機会が多いのは、うちの隊長があきさんを妹分として可愛がっているから。なんでも、分かりもしないのにトリガーの仕組みとか、トリオン兵の構造とか、話してやるとそりゃ嬉しそうに聞いてくれんだと。回収班は技術部に出入りすることも多いから、自然と話すようになったらしい。隊長が防衛隊員に転向した時は、それはそれは寂しがっただとか。別にボーダー辞めるわけでもねえのに。案の定、今でも隊長とあきさんの関係は続いていて、あきさんは時たまうちの隊室に顔を見せる。あきさんが顔を見せるのは、決まって彼女がなにか失敗して落ち込んでいる時だった。あきさんは結構天然で、しょっちゅうドジを踏む。鈴鳴の太一といい勝負だと思う。ふわふわした雰囲気と、ふにゃっとした笑顔で大抵許されてるけど。この前俺に飲み物持ってこようとして全部俺にぶちまけた時は、ベタすぎんだろと驚いたが。まあ許した。すぐなんか踏むしなんか落とすし、終いにはコケるし、見ていてハラハラする人だ。隊長はそんな所が可愛いと、泣きつきにくるあきさんを励ます。甘やかしてんなーとは思うけど、俺も同じ立場だったらそうしてしまうんだろう。不思議な魅力のある人でもあった。
そんなあきさんが、なにやら大量の資料を抱えて前を歩いていたら、そりゃ心配にもなる。俺はその背中を見つけて慌てて駆け寄った。
「あきさーん、またやらかすぜ?」
「当真くん! まだ私なにもやってないよ!」
俺の茶化しに頬を膨らまして抗議するが、説得力なんてあったもんじゃない。てか、いい歳のお姉さんがやるリアクションじゃねぇ。
「ほら、荷物持っていってやるよ」
「大丈夫大丈夫! もうそこの部屋に運ぶだけだから!」
確かに、目的の部屋はすぐ目の前だった。あきさんは荷物を抱えたまま、ドアを開けようと手を伸ばす。すると、それと同じタイミングで部屋から人が出てきた。
「うわっ」
「!! 危ねっ!!」
咄嗟に左手を出し、後ろにのけぞったあきさんの身体を支える。なぜか後ろに足を蹴り進めるあきさんをぐいっと押し出して真っ直ぐ立たせた。
「すいません、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。当真くんも大丈夫だよね?」
「おう、俺はなんともねーぜ」
「よかった。失礼しました」
軽くお辞儀をして、飛び出してきた人物は去っていった。あきさんはふらつきながら道を開けると、部屋に足を踏み入れた。
「それじゃ、当真くんありがとね! また隊室お邪魔します!」
「ああ、いつでもどうぞー」
ひらひらと左手を振ってやれば、ふにゃっと笑う。そうして、扉の向こうに消えてから数秒。先ほどあきさんに触れた左手を見る。手に残っているのは、柔らかな感触。
「ーーーーっ!!」
柔らかな、感触。ボッと顔に熱が集まる。背中を触ったつもりだった。けれど、手は思ったよりも下に触れていて。そのまま、片手で彼女の全体重を支えたから、指は肉に食い込んだ。笑顔と一緒でふにゃふにゃした、けれども弾力のある触り心地。押し出す時に、つるりと撫で付ける様に滑ってしまった指。ぷりんと形がいいことを覚えてしまった。というか、俺の指、割れ目に入り込んでなかったか?
「ーーマジ勘弁してくれよ」
ラッキースケベと喜ぶ反面、汚してしまったような罪悪感に苛まれてグルグルする。左手は気持ちよかったとあの感触を忘れようとしてくれない。ただ触れただけなのに、ここまで取り乱している自分がなんだか情けなくて、なんでもないように笑っていた彼女が憎たらしくなった。ドキドキと主張する心臓に、恋にしてたまるかと悪態をついた。