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授業が午前中に終わった放課後。下級生は部活動に勤しんでいるが、生憎高校三年生の私達は受験勉強に打ち込んでいる。珍しく暇だった荒船を捕まえて、机を向かい合わせてから小一時間。荒船は特に躓くこともなく、スラスラと問題を解いている。こっちは解説と睨めっこしながら解いているというのに。そこらの女子なんかより整った、小綺麗な顔を盗み見る。なんというか、黙っていれば隙のない完璧君なんだよなぁと勉強と関係のないことを考えてしまう。いかんいかん、集中しなければ。一旦気持ちをリセットしよう。私は飲み物でも買いに行こうかな、と立ち上がった。すると、ガタッと荒船も席を立つ。
「……??」
「…………」
黙っているので構わず行こうとすると、行く手を阻まれる。そのまま、荒船は距離を詰めてきた。思わず後ずさるが、どんどん近寄ってくるので逃げ場がない。やがて、背中が壁にくっついた。なんだこれ。荒船は口角を上げると勢いよく私の顔の横に手を着いた。ドン、という音にビクッと肩が上がってしまう。顔を覗き込まれ、荒船の口が動く。
「どこに行く気だ、ハニー?」
「くっさ!!」
「なんでだよ!」
「いやいや、それこっちのセリフだからね!?」
私の正直な感想に、渾身のドヤ顔でこれを披露した男は不満顔になった。寧ろどんな反応を期待していたというのか……。荒船は少し離れて腕を組んだ。片足に体重を預けて、若干モデル立ちなのが腹立つ。
「今度は何に影響受けたのよ……?」
「少女漫画が原作の映画を立て続けに見た」
ふん、と何故か自慢げな荒船に、また始まったと頭を抱える。そう、こいつはとにかく映画や漫画に影響を受けやすい。映画で気に入ったセリフとか、好きなキャラの喋り方とか、さり気なく、時に強引に、日常生活にぶち込んでくる。本人はカッコつけているつもりらしい。荒船とは中学からの付き合いになるが、これの被害を私が1番受けていると思う。
「女子は壁ドンに憧れてるんじゃねーのかよ」
「あのねえ、シチュエーションとかムードとか足りてないでしょ! あと何故ハリウッド臭を混ぜた」
「俺らしいかと思って」
「いや、まあ、うん。らしいことはらしいけれども」
それはギャグとして、ということにこいつは気づいていないのだろうか。
「というか、なんで急に少女漫画原作の映画なんか見てんの? 趣味じゃないじゃん」
「え、」
疑問をぶつけると、荒船は顔を赤くしてそっぽを向いた。いやいや、何故そこで照れてんの?
「なに、なんかあんの?」
「いや、別に……」
「何もないのに見るジャンルじゃないでしょ。どうしたのよ?」
「べ、別にいいだろ! 女心の勉強したって!」
「…………はい?」
今度はなにを言い出すんだこいつ。あからさまに訳が分からない顔をすれば、荒船はさらに真っ赤になった。
「ーーっ、なんか飲み物買ってくんだろ! 早く行ってこいよ! 俺は緑茶な!」
乱暴にそう言うと、荒船は座ってしまった。今度は俺様キャラか。本当、予測不能で面白い奴。自然と笑顔になっている自分を自覚しつつ、私は荒船の分も飲み物を買いに行った。
「……??」
「…………」
黙っているので構わず行こうとすると、行く手を阻まれる。そのまま、荒船は距離を詰めてきた。思わず後ずさるが、どんどん近寄ってくるので逃げ場がない。やがて、背中が壁にくっついた。なんだこれ。荒船は口角を上げると勢いよく私の顔の横に手を着いた。ドン、という音にビクッと肩が上がってしまう。顔を覗き込まれ、荒船の口が動く。
「どこに行く気だ、ハニー?」
「くっさ!!」
「なんでだよ!」
「いやいや、それこっちのセリフだからね!?」
私の正直な感想に、渾身のドヤ顔でこれを披露した男は不満顔になった。寧ろどんな反応を期待していたというのか……。荒船は少し離れて腕を組んだ。片足に体重を預けて、若干モデル立ちなのが腹立つ。
「今度は何に影響受けたのよ……?」
「少女漫画が原作の映画を立て続けに見た」
ふん、と何故か自慢げな荒船に、また始まったと頭を抱える。そう、こいつはとにかく映画や漫画に影響を受けやすい。映画で気に入ったセリフとか、好きなキャラの喋り方とか、さり気なく、時に強引に、日常生活にぶち込んでくる。本人はカッコつけているつもりらしい。荒船とは中学からの付き合いになるが、これの被害を私が1番受けていると思う。
「女子は壁ドンに憧れてるんじゃねーのかよ」
「あのねえ、シチュエーションとかムードとか足りてないでしょ! あと何故ハリウッド臭を混ぜた」
「俺らしいかと思って」
「いや、まあ、うん。らしいことはらしいけれども」
それはギャグとして、ということにこいつは気づいていないのだろうか。
「というか、なんで急に少女漫画原作の映画なんか見てんの? 趣味じゃないじゃん」
「え、」
疑問をぶつけると、荒船は顔を赤くしてそっぽを向いた。いやいや、何故そこで照れてんの?
「なに、なんかあんの?」
「いや、別に……」
「何もないのに見るジャンルじゃないでしょ。どうしたのよ?」
「べ、別にいいだろ! 女心の勉強したって!」
「…………はい?」
今度はなにを言い出すんだこいつ。あからさまに訳が分からない顔をすれば、荒船はさらに真っ赤になった。
「ーーっ、なんか飲み物買ってくんだろ! 早く行ってこいよ! 俺は緑茶な!」
乱暴にそう言うと、荒船は座ってしまった。今度は俺様キャラか。本当、予測不能で面白い奴。自然と笑顔になっている自分を自覚しつつ、私は荒船の分も飲み物を買いに行った。