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私は根暗で、素直じゃなくて、向上心も薄い、つまらない人間だ。周りの子達は、流行りものを身にまとい、媚びたメイクをして、楽しそうにお喋りをする。悪いけど、全く興味が持てない。今時の女子高生のノリについていけなくて、今日も今日とてスマホのゲームがお友達。どちらかといえば、一人の方が好き。気が楽だもの。こんな私だけど、最近ある人物を目で追ってしまうようになった。
「奈良坂くーん、今度の日曜空いてない? 遊園地一緒に行こうよ!」
「悪いけど、その日任務なんだ」
「えーざんねーん」
今、可愛いと評判のあの子の誘いを断った彼である。私と奈良坂君は、特に親しいわけではない。この前まで席が隣同士だったくらい。けど、奈良坂君の声や佇まいは落ち着いていて、なんだか心が安まるのだ。奈良坂君を観察するのが、私の日課になっていた。
午後の授業も終わり、ひとり、またひとりと帰っていく。私は面倒なことに、今日は日直だった。さらに最悪なことに、相方が知らないふりして帰りやがった。1人で黒板を掃除し、日誌を記入しなければならない。ため息を吐き、黒板を濡れふきんで拭く。私の背では、上の方まで拭ききれない。
「早乙女さん、俺やろうか」
後ろから声がして、私より大きな手にふきんを取り上げられる。びっくりして横を見れば、至近距離に奈良坂君がいる。心臓に悪い。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして。俺黒板拭いておくから、日誌を書いたらいい」
「うん、そうする」
教卓の上で彼と背中合わせ。教室を見れば、私達以外誰もいなかった。その事実に、鼓動が早くなる。どうしよう、こんなチャンス2度と来ないんじゃないだろうか。別に、奈良坂君に想いを伝えようと思ったことはない。けど、それはタイミングと勇気がなかったからだ。今は、勇気を出せば伝えられる。じゃあ、伝えてどうするの? 奈良坂君の彼女になんて、なれるわけ無いのに。
「……早乙女さんさ、」
「は、はい」
「いつも俺のこと見てるよね。なんで?」
「なっ……!」
衝撃の事実。この男にはバレていた。顔を伺うと、いつもの整った、涼しい顔のまま。
「俺のこと、どう思ってる?」
「どうって……」
予期せずに訪れた告白のチャンス。というよりは、尋問だ。頭がぐるぐるして、誤魔化すことも、想いを口にすることも出来ずに、口の中が乾く。
「俺は、早乙女さんのこともっと知りたい」
「え、」
「早乙女さん、好きだ。俺と、付き合って欲しい」
夢でも見ているんだろうか。頬をつねると、普通に痛かった。奈良坂君と目は合わせられないけど、奈良坂君の顔も赤くなっているのが見えた。
「えと、あの」
「今度の日曜日、10時に校門の前にいるから。そこで返事聞かせてくれ。来なくても、待ってる」
それだけ言うと、奈良坂君は鞄を持って教室を出た。呆然と、立ち尽くす。日曜は、任務じゃなかったの。私のために、待っていてくれるの。
「…………!!」
嬉しくて、涙が出そうだ。私は根暗で、素直じゃなくて、向上心も薄い、つまらない人間だ。けれど、奈良坂君の気持ちが嘘じゃないなら。少しだけ、自分を好きになれる気がした。
「奈良坂くーん、今度の日曜空いてない? 遊園地一緒に行こうよ!」
「悪いけど、その日任務なんだ」
「えーざんねーん」
今、可愛いと評判のあの子の誘いを断った彼である。私と奈良坂君は、特に親しいわけではない。この前まで席が隣同士だったくらい。けど、奈良坂君の声や佇まいは落ち着いていて、なんだか心が安まるのだ。奈良坂君を観察するのが、私の日課になっていた。
午後の授業も終わり、ひとり、またひとりと帰っていく。私は面倒なことに、今日は日直だった。さらに最悪なことに、相方が知らないふりして帰りやがった。1人で黒板を掃除し、日誌を記入しなければならない。ため息を吐き、黒板を濡れふきんで拭く。私の背では、上の方まで拭ききれない。
「早乙女さん、俺やろうか」
後ろから声がして、私より大きな手にふきんを取り上げられる。びっくりして横を見れば、至近距離に奈良坂君がいる。心臓に悪い。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして。俺黒板拭いておくから、日誌を書いたらいい」
「うん、そうする」
教卓の上で彼と背中合わせ。教室を見れば、私達以外誰もいなかった。その事実に、鼓動が早くなる。どうしよう、こんなチャンス2度と来ないんじゃないだろうか。別に、奈良坂君に想いを伝えようと思ったことはない。けど、それはタイミングと勇気がなかったからだ。今は、勇気を出せば伝えられる。じゃあ、伝えてどうするの? 奈良坂君の彼女になんて、なれるわけ無いのに。
「……早乙女さんさ、」
「は、はい」
「いつも俺のこと見てるよね。なんで?」
「なっ……!」
衝撃の事実。この男にはバレていた。顔を伺うと、いつもの整った、涼しい顔のまま。
「俺のこと、どう思ってる?」
「どうって……」
予期せずに訪れた告白のチャンス。というよりは、尋問だ。頭がぐるぐるして、誤魔化すことも、想いを口にすることも出来ずに、口の中が乾く。
「俺は、早乙女さんのこともっと知りたい」
「え、」
「早乙女さん、好きだ。俺と、付き合って欲しい」
夢でも見ているんだろうか。頬をつねると、普通に痛かった。奈良坂君と目は合わせられないけど、奈良坂君の顔も赤くなっているのが見えた。
「えと、あの」
「今度の日曜日、10時に校門の前にいるから。そこで返事聞かせてくれ。来なくても、待ってる」
それだけ言うと、奈良坂君は鞄を持って教室を出た。呆然と、立ち尽くす。日曜は、任務じゃなかったの。私のために、待っていてくれるの。
「…………!!」
嬉しくて、涙が出そうだ。私は根暗で、素直じゃなくて、向上心も薄い、つまらない人間だ。けれど、奈良坂君の気持ちが嘘じゃないなら。少しだけ、自分を好きになれる気がした。