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今日は防衛任務がないので、研鑽のため個人ランク戦に勤しんでいた。何十戦か終えて、少し疲れたので小休止にコーヒーを買いにブースを出る。自販機に小銭を入れると、ガコン、とスチール缶が吐き出された。取り出して、開けて口をつける。カフェで飲んだ方が美味しいけど、無機質な缶コーヒーの方が気を使わなくて私には合っていた。適当なベンチに腰をかけ、ふーっと息を吐く。
「早乙女先輩って、おねえさんで合ってる?」
「……君誰?」
本当はこの子には見覚えがある。ランク戦を凄い勢いで上位に上がってきた、玉狛第二の攻撃手の子だ。名前までは覚えてないけど。対戦したこともないこの子に、なんで話しかけられたんだろう。
「はじめまして、空閑遊真といいます。お見知り置きを」
「……早乙女あきよ。よろしく」
「早乙女先輩は、物に込められた思いが分かるって本当?」
「誰から聞いたの?」
「むらかみ先輩」
「……鋼か」
確か鋼はこの前、空閑君と当たってたはずだ。そっか、仲良くしてるんだな。別に隠してるわけではないので、特にバラされたことは気にはしない。
「そうね、だいたいは分かるよ。物に触れると、それを作った人とか、使った人の気持ちが色で見えるの」
このSE、オンオフが出来ないのがなかなか困りものだ。イライラした人が使った後の物を触ると、キツイ赤色が点滅したようになるし、めんどくさいと思いながら淹れられたコーヒーを飲むと、どんよりとした灰色が見えるし。あんまり、いいことはない。
「じゃあ、この指輪に込められた思いも分かる?」
「指輪?」
「俺の親父の形見なんだ」
そう言って空閑君は少し悲しげな表情になった。こんな小さい子が、もう親と死に別れてるなんて。きっと、辛くて寂しいだろう。
「触らせて」
「うん」
正直、大事にされている物に触れるのは勇気がいる。何が見えるか分からないし、強い思いほど強い色で見えるから。けど、せっかく声をかけてくれたのだ。私で力になれるなら、協力したいと思った。そっ、と彼の左手の指輪に触れる。
「……!!」
ふわっと優しく色が広がった。暖かみを感じるオレンジに、澄んだ水色がグラデーションのように混じっている。
「綺麗……」
「きれい?」
「うん。なんか安心する色だよ。オレンジと水色が混じってる」
「それってどんな思いなの?」
「そうだね……多分、空閑君が大事だったんじゃないかな。包み込むみたいに広がってるから」
「……そっか」
空閑君は納得のいかないといった顔をした。
「……空閑君は、お父さんのこと、好きだった?」
「うん。大好きだったよ」
「お父さんも、空閑君のこと大好きだったんだよ、きっと」
「……うん」
薄く広がる水色は、きっとお別れが悲しかったんだろう。それでも、それで良かったのだと、言っているように感じた。それで、幸せだったのだと。濁りのない、澄んだ色。
「お父さん、幸せだったんだね」
「……なんでだよ、親父」
空閑君は、悔しそうに、切なそうに、そう呟いた。深い事情は分からない。けれど、少しでも想いが伝わるように、彼の白い頭を撫ぜた。
「早乙女先輩って、おねえさんで合ってる?」
「……君誰?」
本当はこの子には見覚えがある。ランク戦を凄い勢いで上位に上がってきた、玉狛第二の攻撃手の子だ。名前までは覚えてないけど。対戦したこともないこの子に、なんで話しかけられたんだろう。
「はじめまして、空閑遊真といいます。お見知り置きを」
「……早乙女あきよ。よろしく」
「早乙女先輩は、物に込められた思いが分かるって本当?」
「誰から聞いたの?」
「むらかみ先輩」
「……鋼か」
確か鋼はこの前、空閑君と当たってたはずだ。そっか、仲良くしてるんだな。別に隠してるわけではないので、特にバラされたことは気にはしない。
「そうね、だいたいは分かるよ。物に触れると、それを作った人とか、使った人の気持ちが色で見えるの」
このSE、オンオフが出来ないのがなかなか困りものだ。イライラした人が使った後の物を触ると、キツイ赤色が点滅したようになるし、めんどくさいと思いながら淹れられたコーヒーを飲むと、どんよりとした灰色が見えるし。あんまり、いいことはない。
「じゃあ、この指輪に込められた思いも分かる?」
「指輪?」
「俺の親父の形見なんだ」
そう言って空閑君は少し悲しげな表情になった。こんな小さい子が、もう親と死に別れてるなんて。きっと、辛くて寂しいだろう。
「触らせて」
「うん」
正直、大事にされている物に触れるのは勇気がいる。何が見えるか分からないし、強い思いほど強い色で見えるから。けど、せっかく声をかけてくれたのだ。私で力になれるなら、協力したいと思った。そっ、と彼の左手の指輪に触れる。
「……!!」
ふわっと優しく色が広がった。暖かみを感じるオレンジに、澄んだ水色がグラデーションのように混じっている。
「綺麗……」
「きれい?」
「うん。なんか安心する色だよ。オレンジと水色が混じってる」
「それってどんな思いなの?」
「そうだね……多分、空閑君が大事だったんじゃないかな。包み込むみたいに広がってるから」
「……そっか」
空閑君は納得のいかないといった顔をした。
「……空閑君は、お父さんのこと、好きだった?」
「うん。大好きだったよ」
「お父さんも、空閑君のこと大好きだったんだよ、きっと」
「……うん」
薄く広がる水色は、きっとお別れが悲しかったんだろう。それでも、それで良かったのだと、言っているように感じた。それで、幸せだったのだと。濁りのない、澄んだ色。
「お父さん、幸せだったんだね」
「……なんでだよ、親父」
空閑君は、悔しそうに、切なそうに、そう呟いた。深い事情は分からない。けれど、少しでも想いが伝わるように、彼の白い頭を撫ぜた。