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いつも予想通りで分かりやすい男だから、誘ったんだけど。
「あーー…………行ってみるか?」
「えっマジ?」
時を数分巻き戻す。俺は、最近一人暮らしを始めた諏訪の、部屋にお呼ばれして宅飲みをしていた。日付がとっくに変わった頃、酔いに任せてずっと隠していた想いを告げてみた。
「俺さぁ、お前と2人きりで遠く行きたいわ」
「は? 遠くってどこだよ」
「遠くは遠くだよ。誰も顔を知らねぇようなとこ。2人きりで、出来れば今すぐ」
「しかも今かよ。明日夜任務だろ俺たち」
「だからこそだよ」
吸っていたタバコを灰皿に押しつけ、もう一本咥えて火をつける。それに釣られるように、諏訪も新しく吸い始めた。薄く開けた窓から、煙が流れていく。
「取り返しのつかないこと、どうにも起こしたい気分なんだよ」
この箱庭のような街から逃避行したい。4年半前から地続きの毎日は、それなり幸福でそれなりに不幸だ。息が、苦しい。一言で言えば、そんなところだった。けれど、明日の夜の防衛任務はサボれないし、それは諏訪も分かってるはずなのに。冒頭に戻る。
「なんだよ、お前が言い出したんだぞあきクン」
「いや、そうだけど……却下されるの前提っていうか」
「はーお前さぁ……」
「な、なに」
「なんでもかんでも、諦めた上で発言するのやめろよ。そのうち、誰もお前の言葉を聞かなくなるぞ」
言葉を失った。虚を突かれた。どこかで自分が恐れてたこと。それをきちんと言葉で伝えてくれたことにただただ驚いた。
「いやぁ、びっくり。諏訪って俺のことよく見てんね」
「はぁ? 馬鹿にしてんのか?」
「いいや、ありがとう。心底感動した」
この世もまだ捨てたもんじゃない、だとか。なんでだか思えた。親を亡くした俺を、そこまで見守ってくれてる存在なんて、いないと思ってたんだ。
「で? どこ行くんだよ。やるなら徹底的に知らねぇ場所まで」
「いや、もういい。大丈夫だ」
「いいのかよ……人騒がせな奴だな」
諏訪はこめかみを掻くと、タバコを消した。そうして、何事もなかったように布団を敷き始める。
「んじゃ、疲れてる様子のあきちゃんは布団で寝てくださいねー俺はソファでいいから」
「え、悪いよそれは」
「じゃあなんだよ、2人して布団入るか?」
冗談なのは分かってた。けど、さっきも同じことした癖に、もう一回試したくなって。
「うん。2人で寝ようぜ」
「…………マジかよぉ」
嫌がりながらも詰めろと蹴ってきた諏訪を、俺は一生裏切ることはないだろう。
「あーー…………行ってみるか?」
「えっマジ?」
時を数分巻き戻す。俺は、最近一人暮らしを始めた諏訪の、部屋にお呼ばれして宅飲みをしていた。日付がとっくに変わった頃、酔いに任せてずっと隠していた想いを告げてみた。
「俺さぁ、お前と2人きりで遠く行きたいわ」
「は? 遠くってどこだよ」
「遠くは遠くだよ。誰も顔を知らねぇようなとこ。2人きりで、出来れば今すぐ」
「しかも今かよ。明日夜任務だろ俺たち」
「だからこそだよ」
吸っていたタバコを灰皿に押しつけ、もう一本咥えて火をつける。それに釣られるように、諏訪も新しく吸い始めた。薄く開けた窓から、煙が流れていく。
「取り返しのつかないこと、どうにも起こしたい気分なんだよ」
この箱庭のような街から逃避行したい。4年半前から地続きの毎日は、それなり幸福でそれなりに不幸だ。息が、苦しい。一言で言えば、そんなところだった。けれど、明日の夜の防衛任務はサボれないし、それは諏訪も分かってるはずなのに。冒頭に戻る。
「なんだよ、お前が言い出したんだぞあきクン」
「いや、そうだけど……却下されるの前提っていうか」
「はーお前さぁ……」
「な、なに」
「なんでもかんでも、諦めた上で発言するのやめろよ。そのうち、誰もお前の言葉を聞かなくなるぞ」
言葉を失った。虚を突かれた。どこかで自分が恐れてたこと。それをきちんと言葉で伝えてくれたことにただただ驚いた。
「いやぁ、びっくり。諏訪って俺のことよく見てんね」
「はぁ? 馬鹿にしてんのか?」
「いいや、ありがとう。心底感動した」
この世もまだ捨てたもんじゃない、だとか。なんでだか思えた。親を亡くした俺を、そこまで見守ってくれてる存在なんて、いないと思ってたんだ。
「で? どこ行くんだよ。やるなら徹底的に知らねぇ場所まで」
「いや、もういい。大丈夫だ」
「いいのかよ……人騒がせな奴だな」
諏訪はこめかみを掻くと、タバコを消した。そうして、何事もなかったように布団を敷き始める。
「んじゃ、疲れてる様子のあきちゃんは布団で寝てくださいねー俺はソファでいいから」
「え、悪いよそれは」
「じゃあなんだよ、2人して布団入るか?」
冗談なのは分かってた。けど、さっきも同じことした癖に、もう一回試したくなって。
「うん。2人で寝ようぜ」
「…………マジかよぉ」
嫌がりながらも詰めろと蹴ってきた諏訪を、俺は一生裏切ることはないだろう。