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小さい頃の夢は、理容師となり家を継ぐことだった。あの日までは。家と両親を亡くした私は、すがりつくように組織に入る。太刀川慶とはここで出会った。
「髪、切ってくんね?」
秋の足音が聞こえる頃、太刀川くんはボサボサ頭で私の部屋にやってきた。私はボーダー本部に部屋を借りている。悠々自適で孤独な一人暮らしだ。
「……前も言ったけど、私下手くそだよ」
「いいよ、って前も言っただろ?」
「いいよってのが、分からないんだけど」
だらしない男なのだから、せめて身だしなみくらいは整えたらいいと思う。ため息を吐いても、彼はニンマリ笑うだけ。仕方なく、形見になったハサミを持ち出す。
「ここ座って」
「はいはーい」
シャワールームに同い年の男を通している。相手が太刀川くんであることが、なんとなく残念だ。
「俺さぁ、また遠征行くんだよね」
「そう」
髪にハサミを入れる。ショキリ、と小気味良い音と共にハラハラと下に落ちる。太刀川くんの髪質は、少し硬くゴワゴワとしている。鏡越しに目が合う。伝えたいことなど、ない。それに気を悪くしたのか、太刀川くんは口を尖らせた。
「なんかねーのかよぉ。心配だーとか」
「あんたに限ってないでしょ」
還らない影など、もう待ちたくないもの。何日も両親が帰ってくるのを待ったが、結局戻らなかった。
「前髪、切るよ」
「ん」
太刀川くんの真横に立ち、前髪を整えていく。真っ黒な太刀川くんの眼が、パチクリと瞬きを繰り返した。
「さっきのだけど」
「どれ」
「あれ、遠征」
ぼんやりとしていた、昔を思い出して。別の人間だった頃の私。ここのところは、現実離れしてしまった。あの日から、剥離した道を歩み続けている。地に足がついてない、浮遊感の中漂っている。
「寂しいから、一晩寝てくんない?」
「サイテー」
「そうか? 案外寂しいんじゃないの#晶#ちゃん」
太刀川くんの眼が私の眼に光を射つ。
「独りきりの夜が続くぜ?」
無言で最後の仕上げをした。ケープから切った髪を払い、シャワーで髪を排水口へ流してしまう。
「え、無視?」
「そうね、独りきりじゃ泣いてばかりだったかもね」
今でも呼吸をしているのは、間違いなく目の前の男を始めとした、ボーダーの仲間がいたからだ。
「私は満足よ、今」
「…………ちぇー」
貴方になら殺されるのも悪くないし、許しちゃうかもね。
「さ、さっさと出て行って。私これから任務」
「待ってていい?」
「だから、嫌」
文句ありげな背中を蹴飛ばした。扉を閉じた後、ハサミを撫でてそっと呟いた。
「帰ってきたら、また髪切らなくちゃ」
「髪、切ってくんね?」
秋の足音が聞こえる頃、太刀川くんはボサボサ頭で私の部屋にやってきた。私はボーダー本部に部屋を借りている。悠々自適で孤独な一人暮らしだ。
「……前も言ったけど、私下手くそだよ」
「いいよ、って前も言っただろ?」
「いいよってのが、分からないんだけど」
だらしない男なのだから、せめて身だしなみくらいは整えたらいいと思う。ため息を吐いても、彼はニンマリ笑うだけ。仕方なく、形見になったハサミを持ち出す。
「ここ座って」
「はいはーい」
シャワールームに同い年の男を通している。相手が太刀川くんであることが、なんとなく残念だ。
「俺さぁ、また遠征行くんだよね」
「そう」
髪にハサミを入れる。ショキリ、と小気味良い音と共にハラハラと下に落ちる。太刀川くんの髪質は、少し硬くゴワゴワとしている。鏡越しに目が合う。伝えたいことなど、ない。それに気を悪くしたのか、太刀川くんは口を尖らせた。
「なんかねーのかよぉ。心配だーとか」
「あんたに限ってないでしょ」
還らない影など、もう待ちたくないもの。何日も両親が帰ってくるのを待ったが、結局戻らなかった。
「前髪、切るよ」
「ん」
太刀川くんの真横に立ち、前髪を整えていく。真っ黒な太刀川くんの眼が、パチクリと瞬きを繰り返した。
「さっきのだけど」
「どれ」
「あれ、遠征」
ぼんやりとしていた、昔を思い出して。別の人間だった頃の私。ここのところは、現実離れしてしまった。あの日から、剥離した道を歩み続けている。地に足がついてない、浮遊感の中漂っている。
「寂しいから、一晩寝てくんない?」
「サイテー」
「そうか? 案外寂しいんじゃないの#晶#ちゃん」
太刀川くんの眼が私の眼に光を射つ。
「独りきりの夜が続くぜ?」
無言で最後の仕上げをした。ケープから切った髪を払い、シャワーで髪を排水口へ流してしまう。
「え、無視?」
「そうね、独りきりじゃ泣いてばかりだったかもね」
今でも呼吸をしているのは、間違いなく目の前の男を始めとした、ボーダーの仲間がいたからだ。
「私は満足よ、今」
「…………ちぇー」
貴方になら殺されるのも悪くないし、許しちゃうかもね。
「さ、さっさと出て行って。私これから任務」
「待ってていい?」
「だから、嫌」
文句ありげな背中を蹴飛ばした。扉を閉じた後、ハサミを撫でてそっと呟いた。
「帰ってきたら、また髪切らなくちゃ」