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深夜も深夜の丑三つ時。なんとなく、不安で胸が詰まって眠れずにいた。なにが、なんて理由はないのだけれど。大切なものが知らぬ間に手をすり抜けているような気がして。眠ってしまったら、全て終わってもう思い出せないような気がして。そのなにかが、分からないことが不安で。自分の将来に展望も見いだせず、どんどん心が死んでいく。そんな中、思い出したのは陽介の顔だった。起きてるかな。一縷の望みをかけて、「起きてる?」とだけLINEを送った。じっと液晶を見つめていると、付いた既読の文字。それから、「起きてっけど?」の返信。縋るように、気がつけば電話をかけていた。
「おわっびっくりした。どうした、珍しいじゃん」
非常識な時間帯に怒るなんてことはせず、少し潜めているけど明るい声。安心が込み上げてきて、声を出せずにいると、
「え? 泣いてる? なになに、俺なんかした?」
陽介はすぐに私が泣きそうなことに気付いてしまった。案外聡いところ、大好きで嫌いだな。堪え切れなくなった涙は、次々に零れて嗚咽を漏らす。いよいよ、陽介の声は心配そうなものに変わる。
「どうしたんだよ……俺行ったほうがいいか? 無理か、お互い親寝てるもんな。俺、どうしたらいい?」
「切ら、ないで」
「ん?」
「電話、切らないで」
それだけ伝えるのが精一杯だった。しばらく、無言の時間が流れる。そのうち、あーだとかうーだとか、陽介が唸るのが聞こえる。たったそれだけなのに、少し心が落ち着いてきた自分がいる。陽介の心配で、自分のことを忘れたからだ。
「陽介、ごめん」
「いや、別に。それより、大丈夫か? ちょっと落ち着いた?」
「うん」
「そっか。ならよかった!」
陽介は優しい。裏表のない言葉が、心に沁みる。陽介の好きなところを数えていれば、私の悩みなんて忘れてしまう。死んだ心が、また生き返っていく。
「まあ、その。一応、俺彼氏だし?」
電話の向こうで、咳ばらいが聞こえる。唾を飲み込んだ音も。陽介が作り出した緊張感に、自然と鼓動が速くなる。
「あきのことくらいは、守りたいって思ってっから。いつでも、頼ってこいよ」
陽介が笑っているのが、電話越しでも分かった。こんな夜更けに電話してくるような面倒な女に、ひとつも呆れたりせずに付き合ってくれる。止まっていた涙がまた溢れ出した。
「ちょ、なんで泣くんだよ? 今泣かれてもなにも出来ないんだって」
「ご、めん」
「もう寝ようぜ? 寝たらきっと、忘れてるから。明日は、迎えに行ってやるからさ。寝坊するつもりだったけど!」
サボり魔な彼氏の堂々カミングアウトに、泣きながら笑ってしまった。明日きっと、時間通りに彼は迎えになんて来れないだろう。でも、来てくれるまで待とうと思う。二人して、遅刻して、怒られる前にサボってしまおう。そう悪巧みをすれば、日の出が怖くなんてなくなっていた。
「陽介、ありがとう」
「おう。愛してんぞー」
ちょっぴり背伸びした、愛の告白にちゃんとまだ応えられないけど。君と生きていく世界は美しく素晴らしいと、きっといつか伝えるから。それまで、私から離れずにいてほしい。
「ありがとう、おやすみなさい」
「いい夢見ろよー」
少し前までの不安が嘘のように消えて、途端に眠たくなってきた。不安の正体なんて、分からなくていい。明日も、陽介と生きていくこと。それが世界の全てでいいなんて。大袈裟かもしれないけど、そう思えた。ゆっくりと沈み込む意識の中、世界は愛に満ちていた。
「おわっびっくりした。どうした、珍しいじゃん」
非常識な時間帯に怒るなんてことはせず、少し潜めているけど明るい声。安心が込み上げてきて、声を出せずにいると、
「え? 泣いてる? なになに、俺なんかした?」
陽介はすぐに私が泣きそうなことに気付いてしまった。案外聡いところ、大好きで嫌いだな。堪え切れなくなった涙は、次々に零れて嗚咽を漏らす。いよいよ、陽介の声は心配そうなものに変わる。
「どうしたんだよ……俺行ったほうがいいか? 無理か、お互い親寝てるもんな。俺、どうしたらいい?」
「切ら、ないで」
「ん?」
「電話、切らないで」
それだけ伝えるのが精一杯だった。しばらく、無言の時間が流れる。そのうち、あーだとかうーだとか、陽介が唸るのが聞こえる。たったそれだけなのに、少し心が落ち着いてきた自分がいる。陽介の心配で、自分のことを忘れたからだ。
「陽介、ごめん」
「いや、別に。それより、大丈夫か? ちょっと落ち着いた?」
「うん」
「そっか。ならよかった!」
陽介は優しい。裏表のない言葉が、心に沁みる。陽介の好きなところを数えていれば、私の悩みなんて忘れてしまう。死んだ心が、また生き返っていく。
「まあ、その。一応、俺彼氏だし?」
電話の向こうで、咳ばらいが聞こえる。唾を飲み込んだ音も。陽介が作り出した緊張感に、自然と鼓動が速くなる。
「あきのことくらいは、守りたいって思ってっから。いつでも、頼ってこいよ」
陽介が笑っているのが、電話越しでも分かった。こんな夜更けに電話してくるような面倒な女に、ひとつも呆れたりせずに付き合ってくれる。止まっていた涙がまた溢れ出した。
「ちょ、なんで泣くんだよ? 今泣かれてもなにも出来ないんだって」
「ご、めん」
「もう寝ようぜ? 寝たらきっと、忘れてるから。明日は、迎えに行ってやるからさ。寝坊するつもりだったけど!」
サボり魔な彼氏の堂々カミングアウトに、泣きながら笑ってしまった。明日きっと、時間通りに彼は迎えになんて来れないだろう。でも、来てくれるまで待とうと思う。二人して、遅刻して、怒られる前にサボってしまおう。そう悪巧みをすれば、日の出が怖くなんてなくなっていた。
「陽介、ありがとう」
「おう。愛してんぞー」
ちょっぴり背伸びした、愛の告白にちゃんとまだ応えられないけど。君と生きていく世界は美しく素晴らしいと、きっといつか伝えるから。それまで、私から離れずにいてほしい。
「ありがとう、おやすみなさい」
「いい夢見ろよー」
少し前までの不安が嘘のように消えて、途端に眠たくなってきた。不安の正体なんて、分からなくていい。明日も、陽介と生きていくこと。それが世界の全てでいいなんて。大袈裟かもしれないけど、そう思えた。ゆっくりと沈み込む意識の中、世界は愛に満ちていた。