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ある日、突然迅に呼び出されこう言われた。
「あのさ、ボーダー辞めてくれる?」
あれは上司からの戦力外通告と受け取っていいのだろうか。言われてから、三日が経つ。私に非なんて一つもなくて、ただただ無慈悲に告げられた言葉。迅の言葉通りにボーダーを辞めるとしたら、私の今までの努力はなんだったのだろうか。迅にそう問い詰めても、ボーダーを辞めてくれの一点張りで。懇願するような瞳に、それ以上は何も言えなかった。なんでなのかは予想がつくけれども。
(自惚れだよなぁ…………)
迅には、超えさせてくれない一線がある。どんなに仲良くなってもそれは確かに存在して、私をいつも遠ざける。私の、迅への思いのせいなのか、迅の都合なのかは分からない。でも、迅は私を大切にしてくれて、私も迅を大切にしたいと思っている。それはきっと本当のことだ。自惚れではない。問題は、その先。私が、迅に恋愛感情を持っているということである。
(私の片想いがうっとうしくなったとか……?)
少し考えて、その説は否定した。迅はそんな個人的な理由で動くはずはない、と思う。嫌なのであれば、はっきりと先手を打って断るだろう。では、何故急にボーダーを辞めてくれなんて言ったのか。未来に関わることなのだろうか。それすらも教えてくれなかった。こうやって、疑問ばかりが増えていく。ため息が出て、部屋の空気に溶け込んでいく。しばらく部屋で横になってぼんやりしていると、ノックされるドア。
「あき、少しいい?」
「……いつでもどうぞ~」
三日ぶりの迅悠一。慣れているはずでも、二人きりで部屋にいるとドキドキとする。しばらく、向かい合って座り込んだまま、無言。やがて、迅は口を開いた。
「この間はゴメン。急に辞めろなんて言って」
迅の顔を見つめる。その目はどことなく虚ろで、疲れているのがよく分かる。それでも迅は、無理して笑った。こんな時、私の胸は苦しくなる。
「…………それは、私はボーダーにいてもいいってこと?」
「いや、その。始めから、ボーダーを辞めきゃいけない理由は、ないんだ」
「理由はない?」
「うん」
そう言って迅は俯き、体育座りで丸まってしまった。言葉をかけづらい。私はそっと迅の横に行き、肩に触れた。びくり、と迅の身体が揺れる。私は思い切って尋ねることにした。
「私にボーダーを辞めて欲しいのは、迅の気持ちの問題?」
しばらく迅は動かなかったが、こくり、と確かに頷いた。私は、ある予感が当たっているような気がして高揚する。それと同時に、悲しみもする。
「迅は、私のことどう思ってるの?」
「…………言いたくない」
「じゃあ、私が言うね。迅、好きだよ」
バッと迅は顔を上げた。そうして辛そうに顔を歪めた。嫌だな、そんな顔しないでよ。私が悪者みたいじゃん。
「俺、は」
迅はぽつり、ぽつりと話し始めた。それを黙って聞く、待つ。
「あきに、傷ついて欲しくないんだ」
「うん」
「例えあきのなにかを踏みにじったとしても」
「……うん」
「幸せになって欲しい」
そう言ってまた、無理して笑う。その顔を見ていたら涙が出そうになった。でも泣いたら、また迅を困らせるから。ぐっと我慢をする。
「だから、俺の側にいるのは、もう辞めなよ」
そんなこと、私が出来ると思っているのだろうか。ボーダーを辞めたって、恋するのを諦めたって。私はきっと、迅の側にいたいと思うのに。
「あきの気持ちには応えられない。だから、」
「それでもいいよ」
私はずっと、迅の味方でいるよ。そう言ってもなお、迅は私が近くにいることを拒んだ。口では拒みながらも、私の手はしっかり握りこんだまま。そんなの、矛盾してる。矛盾してるよ。
「俺はあきの側にいるのが怖い……!」
そんな気持ち、私が踏み付けて粉々にしてあげるよ。
「あのさ、ボーダー辞めてくれる?」
あれは上司からの戦力外通告と受け取っていいのだろうか。言われてから、三日が経つ。私に非なんて一つもなくて、ただただ無慈悲に告げられた言葉。迅の言葉通りにボーダーを辞めるとしたら、私の今までの努力はなんだったのだろうか。迅にそう問い詰めても、ボーダーを辞めてくれの一点張りで。懇願するような瞳に、それ以上は何も言えなかった。なんでなのかは予想がつくけれども。
(自惚れだよなぁ…………)
迅には、超えさせてくれない一線がある。どんなに仲良くなってもそれは確かに存在して、私をいつも遠ざける。私の、迅への思いのせいなのか、迅の都合なのかは分からない。でも、迅は私を大切にしてくれて、私も迅を大切にしたいと思っている。それはきっと本当のことだ。自惚れではない。問題は、その先。私が、迅に恋愛感情を持っているということである。
(私の片想いがうっとうしくなったとか……?)
少し考えて、その説は否定した。迅はそんな個人的な理由で動くはずはない、と思う。嫌なのであれば、はっきりと先手を打って断るだろう。では、何故急にボーダーを辞めてくれなんて言ったのか。未来に関わることなのだろうか。それすらも教えてくれなかった。こうやって、疑問ばかりが増えていく。ため息が出て、部屋の空気に溶け込んでいく。しばらく部屋で横になってぼんやりしていると、ノックされるドア。
「あき、少しいい?」
「……いつでもどうぞ~」
三日ぶりの迅悠一。慣れているはずでも、二人きりで部屋にいるとドキドキとする。しばらく、向かい合って座り込んだまま、無言。やがて、迅は口を開いた。
「この間はゴメン。急に辞めろなんて言って」
迅の顔を見つめる。その目はどことなく虚ろで、疲れているのがよく分かる。それでも迅は、無理して笑った。こんな時、私の胸は苦しくなる。
「…………それは、私はボーダーにいてもいいってこと?」
「いや、その。始めから、ボーダーを辞めきゃいけない理由は、ないんだ」
「理由はない?」
「うん」
そう言って迅は俯き、体育座りで丸まってしまった。言葉をかけづらい。私はそっと迅の横に行き、肩に触れた。びくり、と迅の身体が揺れる。私は思い切って尋ねることにした。
「私にボーダーを辞めて欲しいのは、迅の気持ちの問題?」
しばらく迅は動かなかったが、こくり、と確かに頷いた。私は、ある予感が当たっているような気がして高揚する。それと同時に、悲しみもする。
「迅は、私のことどう思ってるの?」
「…………言いたくない」
「じゃあ、私が言うね。迅、好きだよ」
バッと迅は顔を上げた。そうして辛そうに顔を歪めた。嫌だな、そんな顔しないでよ。私が悪者みたいじゃん。
「俺、は」
迅はぽつり、ぽつりと話し始めた。それを黙って聞く、待つ。
「あきに、傷ついて欲しくないんだ」
「うん」
「例えあきのなにかを踏みにじったとしても」
「……うん」
「幸せになって欲しい」
そう言ってまた、無理して笑う。その顔を見ていたら涙が出そうになった。でも泣いたら、また迅を困らせるから。ぐっと我慢をする。
「だから、俺の側にいるのは、もう辞めなよ」
そんなこと、私が出来ると思っているのだろうか。ボーダーを辞めたって、恋するのを諦めたって。私はきっと、迅の側にいたいと思うのに。
「あきの気持ちには応えられない。だから、」
「それでもいいよ」
私はずっと、迅の味方でいるよ。そう言ってもなお、迅は私が近くにいることを拒んだ。口では拒みながらも、私の手はしっかり握りこんだまま。そんなの、矛盾してる。矛盾してるよ。
「俺はあきの側にいるのが怖い……!」
そんな気持ち、私が踏み付けて粉々にしてあげるよ。