本編/清書
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瑠璃さんがこれまで見たこともないくらい怒って、綺麗だなと思った。怒ったって綺麗なんだな。またひとつ瑠璃さんを知れて嬉しい。引っ叩かれた頬を撫でて、しばらくぼんやりしていた。
「ちょっと冴ちゃん!!瑠璃ちゃん泣きながらあっち行ったけど!?」
ジローさんが慌てた様子で俺の所まで駆け寄ってくる。そこで初めて、もしかして不味いことをしたのか?と思い至る。
「怒られた」
「ほら!僕の言った通りだったでしょ!もぉ〜」
ジローさんがハンカチで汗を拭いて、手帳を広げてあれこれ書き込んでいる。スペイン行きの飛行機は、キャンセルにした。別にあとはこれからのことを瑠璃さんと話せばいいだけのはず。
「なんで怒ったんだろう」
「……冴ちゃん。冴ちゃんには僕がいるから、急に方向転換してもやることを変えても、なんとかしてあげるけど。瑠璃ちゃんは、1人で全部準備してるんだよ」
「うん」
「お家も引き払っただろうし、3日間すごく大変な思いして冴ちゃんのこと待ってたんだよ」
「でも、瑠璃さん俺と一緒にいるって言ってくれた」
「それはそうかも知れないけど!反故にされても、仕方ないくらいのことだよ?」
「え」
また一緒にいられなくなるのか?それは、困る。困るというか、嫌だ。自分のしでかしたことの大きさはよく分からないが、取り返しのつかないことだったら大変だ。
「どうしよう、ジローさん」
「とりあえず、追いかけて謝ってきなさいよ。僕はいろいろ調整しながら待ってるから」
「うん、分かった。ありがとう」
ジローさんがあっち、と指し示した方へ走る。広い空港で瑠璃さんを探す。見つからなくて、だんだんと焦ってきて。不安に埋め尽くされていく。もう会えなかったらどうしよう。また一人になったらどうしよう。一人は怖くないけれど、貴方がいないことが怖い。ようやく見つけた瑠璃さんは、空港の忘れ去られたみたいな隅っこのベンチで、項垂れていた。そっと歩み寄って、隣に座る。瑠璃さんは俺の肩を押し退けた。そうして、そっぽを向いた。まだ怒ってる。
「ごめん瑠璃さん、そんなにスペイン楽しみだった?」
「違う。冴くんと一緒にいるのが楽しみだった」
ものすごく嬉しいことを言われた。けれど、喜んじゃダメだと気を引き締める。ダメなんだと思う、瑠璃さんはきっとそう言うだろう。俺だけが嬉しいんじゃ、ダメなんだ。
「ごめん、どこでもいいんだと思ってた。瑠璃さんといられるなら、俺どこでもいい」
「知らない。勝手な人は嫌い」
言葉が胸を裂いて、ジクジク痛む。反省をする、それからどう取り返すかを考える。瑠璃さんの手に触れた。なにも反応がないから勝手に繋いだ。
「瑠璃さん、俺もう少し日本にいなくちゃいけないから。一緒に暮らそう?」
「…………」
「場所は違うけど、予定通りだろ?」
「…………帰る場所、ないの」
「うん?」
「冴くんのせいで、帰る場所ない」
瑠璃さんは俺を睨む。可愛いだけだよ、全部受け止めて包んであげる。瑠璃さんを抱き寄せた。瑠璃さんは抵抗はしなかった。ほっと安心する。まだやり直せる。
「帰る場所ないなら、作ってあげる。俺のせいなんだろ?」
「うん」
「なんも心配しないでよ。俺なんとかするよ」
「なんとか出来ないでしょ」
「なんとかする。出来ないことは瑠璃さんが教えて」
「……本当に、子供なんだから」
「子供じゃない」
ムッとして瑠璃さんと顔を見合わせる。俺の表情を見て、瑠璃さんは吹き出して笑った。なんだよ、馬鹿にすんなよ。そんな苛立ちも、瑠璃さんが笑ったからどうだってよくなる。怒った顔は綺麗だし、泣いた顔は可愛い。でも、笑顔ならとびきり嬉しい。
「帰ろう?荷物なら持つから」
「当たり前だわ。ここまで来るの、どれだけ大変だったと思ってるのよ」
「ごめんなさい、これからはずっと持つから」
そういうことじゃないんだけどな、と貴方は呟く。瑠璃さんが俺に話してくれてることは、きっとまだとても少なくて。でも、一緒にいるうちに知っていけばいいと思うから。焦らないし、貴方がどんな人でも不安ではないよ。どんな表情も、安心して見せて欲しい。俺だって、瑠璃さんと一緒にいるのが楽しみだ。トランクケースを引きずって、空いた手は瑠璃さんと繋ぐ。夕陽が空港の窓にパノラマのように広がっていて、絵画みたいだった。
「ちょっと冴ちゃん!!瑠璃ちゃん泣きながらあっち行ったけど!?」
ジローさんが慌てた様子で俺の所まで駆け寄ってくる。そこで初めて、もしかして不味いことをしたのか?と思い至る。
「怒られた」
「ほら!僕の言った通りだったでしょ!もぉ〜」
ジローさんがハンカチで汗を拭いて、手帳を広げてあれこれ書き込んでいる。スペイン行きの飛行機は、キャンセルにした。別にあとはこれからのことを瑠璃さんと話せばいいだけのはず。
「なんで怒ったんだろう」
「……冴ちゃん。冴ちゃんには僕がいるから、急に方向転換してもやることを変えても、なんとかしてあげるけど。瑠璃ちゃんは、1人で全部準備してるんだよ」
「うん」
「お家も引き払っただろうし、3日間すごく大変な思いして冴ちゃんのこと待ってたんだよ」
「でも、瑠璃さん俺と一緒にいるって言ってくれた」
「それはそうかも知れないけど!反故にされても、仕方ないくらいのことだよ?」
「え」
また一緒にいられなくなるのか?それは、困る。困るというか、嫌だ。自分のしでかしたことの大きさはよく分からないが、取り返しのつかないことだったら大変だ。
「どうしよう、ジローさん」
「とりあえず、追いかけて謝ってきなさいよ。僕はいろいろ調整しながら待ってるから」
「うん、分かった。ありがとう」
ジローさんがあっち、と指し示した方へ走る。広い空港で瑠璃さんを探す。見つからなくて、だんだんと焦ってきて。不安に埋め尽くされていく。もう会えなかったらどうしよう。また一人になったらどうしよう。一人は怖くないけれど、貴方がいないことが怖い。ようやく見つけた瑠璃さんは、空港の忘れ去られたみたいな隅っこのベンチで、項垂れていた。そっと歩み寄って、隣に座る。瑠璃さんは俺の肩を押し退けた。そうして、そっぽを向いた。まだ怒ってる。
「ごめん瑠璃さん、そんなにスペイン楽しみだった?」
「違う。冴くんと一緒にいるのが楽しみだった」
ものすごく嬉しいことを言われた。けれど、喜んじゃダメだと気を引き締める。ダメなんだと思う、瑠璃さんはきっとそう言うだろう。俺だけが嬉しいんじゃ、ダメなんだ。
「ごめん、どこでもいいんだと思ってた。瑠璃さんといられるなら、俺どこでもいい」
「知らない。勝手な人は嫌い」
言葉が胸を裂いて、ジクジク痛む。反省をする、それからどう取り返すかを考える。瑠璃さんの手に触れた。なにも反応がないから勝手に繋いだ。
「瑠璃さん、俺もう少し日本にいなくちゃいけないから。一緒に暮らそう?」
「…………」
「場所は違うけど、予定通りだろ?」
「…………帰る場所、ないの」
「うん?」
「冴くんのせいで、帰る場所ない」
瑠璃さんは俺を睨む。可愛いだけだよ、全部受け止めて包んであげる。瑠璃さんを抱き寄せた。瑠璃さんは抵抗はしなかった。ほっと安心する。まだやり直せる。
「帰る場所ないなら、作ってあげる。俺のせいなんだろ?」
「うん」
「なんも心配しないでよ。俺なんとかするよ」
「なんとか出来ないでしょ」
「なんとかする。出来ないことは瑠璃さんが教えて」
「……本当に、子供なんだから」
「子供じゃない」
ムッとして瑠璃さんと顔を見合わせる。俺の表情を見て、瑠璃さんは吹き出して笑った。なんだよ、馬鹿にすんなよ。そんな苛立ちも、瑠璃さんが笑ったからどうだってよくなる。怒った顔は綺麗だし、泣いた顔は可愛い。でも、笑顔ならとびきり嬉しい。
「帰ろう?荷物なら持つから」
「当たり前だわ。ここまで来るの、どれだけ大変だったと思ってるのよ」
「ごめんなさい、これからはずっと持つから」
そういうことじゃないんだけどな、と貴方は呟く。瑠璃さんが俺に話してくれてることは、きっとまだとても少なくて。でも、一緒にいるうちに知っていけばいいと思うから。焦らないし、貴方がどんな人でも不安ではないよ。どんな表情も、安心して見せて欲しい。俺だって、瑠璃さんと一緒にいるのが楽しみだ。トランクケースを引きずって、空いた手は瑠璃さんと繋ぐ。夕陽が空港の窓にパノラマのように広がっていて、絵画みたいだった。