本編/清書
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糸師冴を空港で待ち続けること、3時間。時間になっても来てくれないことが不安で、悲しくて仕方がない。やっぱり、男なんて信じた私が馬鹿だったかしら。このままじゃ惨めな女だわ、私。そんな人生、一歩だって歩みたくなかったのに。廻からも連絡が来ない。見送りにも現れない。そのことが不安に拍車をかけた。廻が私のこと裏切るなんて、信じたくない。廻だけは、なにがあっても味方だと思っていたのに。
蜂楽廻と私は、歳は3つ違うが幼馴染だ。廻の母親と私の父親が仕事関係で知り合いで、廻が生まれて少しした頃、私は優先生に絵を習い始めた。初めの頃は不真面目でやる気のない生徒だった気がする。それでも、優先生は私と向き合い続け、見事に私を芸術の世界へ引き摺り込んだ。廻がサッカーボールで遊ぶのを眺めながら、私はずっと絵を描いていた。
廻がサッカーを好きだから、一緒になってよく試合を見るようになり。廻のめちゃくちゃな説明を聞きながら、サッカーに胸を躍らせた。その過程で、糸師冴を知った。彼のプレーは私を釘付けにした。私は、彼の試合を生で見たいと思うようになった。
絵画を学ぶために、スペインに留学を決めた。スペインにいる間、一枚だけ満足した絵が描けた。それがSNSでバズった。糸師冴を描いた絵だった。なんでなのか今でも分からないが、冴くんのマネージャーさんから連絡をいただき、会うことになった。私は、興味がないように振る舞った。面白くなかったのと、ちょっとした好奇心。恋の駆け引きを持ちかけてみたのだ。結果、信じられないほど食いつかれた。こんな強引な人、今まで見たことないくらい。一夏、夢を見れた。私は、糸師冴を置いて日本に帰ってきた。
それから、2ヶ月とちょっとして。糸師冴は日本に帰国した。会うつもりはなかったが、押しに負けてもう一度向かい合った。どうしても私をスペインに連れ帰ると言い、聞かなかった。発破もかけられて、私は売り言葉に買い言葉で一緒に行くと言ってしまった。それが3日前だ。
やっぱりなにかの間違いだったんじゃないかしら。遊んでいたつもりだけど、遊ばれていたのは私?ちょっと本気になったら、この有り様だもの。面白くないわ、男に人生を荒らされるのは。けど、困ったわね。帰る家も、ないのよね。実家に戻る?あまり苦労はかけたくない。家族の心配をすれば、この状況でも少しだけ冷静でいられた。このこと伝えたら、きっと母さんは悲しむ。また謝られてしまうだろう。そんなのは嫌。とりあえず誠士郎の家に行って、それから叔父さんを頼ろうかしら。自分の手にある手札を確認する。あぁ、早く一人だけで生きていきたい。
「瑠璃さん」
冴くんの声と、すぐ分かった。途端に胸が苦しくなり、安心で涙が出てきた。思わず冴くんの胸に飛び込むと、驚いた顔をしながらも抱き止めてくれた。
「遅い」
「ごめん、そんな待たせたか?」
「発着時刻、過ぎてる」
冴くんは電光掲示板を見上げ、あーとあっけらかんとした声を出す。ぼけーっとしてて、頼りない。コート上の彼とはだいぶ違う。
「もう少し、日本に残ることにしたんだ」
「は?」
「瑠璃さんも、その方が安心なんだよな?」
冴くんの顔を見れば、少しも悪びれた様子はなく。私の返事を待って、ゆるく首を傾げて微笑んでいる。ふざけるな、私がどんな想いで決断したと思っている。貴方を選ぶ選択が、私にとってどれほど重かったか、分かってるの?
バッチーン!!
思いっきり、頬を平手打ちにした。冴くんは目を丸くして、自分の頬を撫でている。私は溢れてくる涙に構わず、目的地も知らずにその場を去った。トランクケースは、酷く重たい。一度だけ振り向く。冴くんは立ち尽くしていた。もう知らない、知らないったら。
蜂楽廻と私は、歳は3つ違うが幼馴染だ。廻の母親と私の父親が仕事関係で知り合いで、廻が生まれて少しした頃、私は優先生に絵を習い始めた。初めの頃は不真面目でやる気のない生徒だった気がする。それでも、優先生は私と向き合い続け、見事に私を芸術の世界へ引き摺り込んだ。廻がサッカーボールで遊ぶのを眺めながら、私はずっと絵を描いていた。
廻がサッカーを好きだから、一緒になってよく試合を見るようになり。廻のめちゃくちゃな説明を聞きながら、サッカーに胸を躍らせた。その過程で、糸師冴を知った。彼のプレーは私を釘付けにした。私は、彼の試合を生で見たいと思うようになった。
絵画を学ぶために、スペインに留学を決めた。スペインにいる間、一枚だけ満足した絵が描けた。それがSNSでバズった。糸師冴を描いた絵だった。なんでなのか今でも分からないが、冴くんのマネージャーさんから連絡をいただき、会うことになった。私は、興味がないように振る舞った。面白くなかったのと、ちょっとした好奇心。恋の駆け引きを持ちかけてみたのだ。結果、信じられないほど食いつかれた。こんな強引な人、今まで見たことないくらい。一夏、夢を見れた。私は、糸師冴を置いて日本に帰ってきた。
それから、2ヶ月とちょっとして。糸師冴は日本に帰国した。会うつもりはなかったが、押しに負けてもう一度向かい合った。どうしても私をスペインに連れ帰ると言い、聞かなかった。発破もかけられて、私は売り言葉に買い言葉で一緒に行くと言ってしまった。それが3日前だ。
やっぱりなにかの間違いだったんじゃないかしら。遊んでいたつもりだけど、遊ばれていたのは私?ちょっと本気になったら、この有り様だもの。面白くないわ、男に人生を荒らされるのは。けど、困ったわね。帰る家も、ないのよね。実家に戻る?あまり苦労はかけたくない。家族の心配をすれば、この状況でも少しだけ冷静でいられた。このこと伝えたら、きっと母さんは悲しむ。また謝られてしまうだろう。そんなのは嫌。とりあえず誠士郎の家に行って、それから叔父さんを頼ろうかしら。自分の手にある手札を確認する。あぁ、早く一人だけで生きていきたい。
「瑠璃さん」
冴くんの声と、すぐ分かった。途端に胸が苦しくなり、安心で涙が出てきた。思わず冴くんの胸に飛び込むと、驚いた顔をしながらも抱き止めてくれた。
「遅い」
「ごめん、そんな待たせたか?」
「発着時刻、過ぎてる」
冴くんは電光掲示板を見上げ、あーとあっけらかんとした声を出す。ぼけーっとしてて、頼りない。コート上の彼とはだいぶ違う。
「もう少し、日本に残ることにしたんだ」
「は?」
「瑠璃さんも、その方が安心なんだよな?」
冴くんの顔を見れば、少しも悪びれた様子はなく。私の返事を待って、ゆるく首を傾げて微笑んでいる。ふざけるな、私がどんな想いで決断したと思っている。貴方を選ぶ選択が、私にとってどれほど重かったか、分かってるの?
バッチーン!!
思いっきり、頬を平手打ちにした。冴くんは目を丸くして、自分の頬を撫でている。私は溢れてくる涙に構わず、目的地も知らずにその場を去った。トランクケースは、酷く重たい。一度だけ振り向く。冴くんは立ち尽くしていた。もう知らない、知らないったら。