布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん
日曜日、久々にすることがないので国領の部屋に上がり込んだ。大体、国領は土日に暇している。国領のベッドの上に寝転び、キッチンに立つ背中を見る。
「お前俺が土日はいつも暇してると思ってるだろ」
「思ってんよ?」
「暇じゃねぇからな!出来た!」
国領が出来たと言うので、皿を受け取りに起きる。今日は親子丼。俺の方のどんぶりのがでかい。
「暇じゃねぇってなにする予定だったんだよ」
「いや、本読むとか動画見るとか……あとそうだな」
「決まってなかったんじゃねぇか」
「1人で過ごす予定でしたよ、それは決まってる」
「じゃあ俺がいてもいいだろ?」
国領はなにか言おうと口を開き、諦めたように息を吐いた。黙って親子丼を食べ出す。
「いただきます」
手を合わせて、俺も食べ始める。ダシが効いていて美味しい。鶏肉や卵の火の入れ方が絶妙。黙々と食べ進めてしまう。
「……本当に食べっぷりがいいな柴崎は」
「美味いもん」
「そうかよ」
どんぶりから目を離し、なんとなしに顔を見る。
「まつ毛長ぇなお前。なんでモテねぇの?」
「まつ毛長いとモテるってどこ情報なんだよ」
「栗平?」
「あぁ……」
大学の後輩の名前を出すと、国領は渋い顔して頷いた。いっつもなんか眉間に皺寄ってんだよな。もったいねぇの。
「モテたことねぇよな俺ら。なんで?」
「モテたことねぇから知らん」
国領は考える気はないようで、むすっとしながらどんぶりをかき込んだ。俺と国領は背はほぼ変わらないし、俺と違って国領はしっかり者でいい奴なんだけども。一度も彼女がいたことがない。俺ですらあんのに。なにがいけないんだろうか。
「…………やっぱ身長?」
「お前のモテるの指標が栗平と布田しかいねぇってことは分かった」
国領はちゃっちゃとどんぶりを下げて洗い始める。うーんあとそうだな……国領は服のセンスねぇな。オシャレ全然しねぇ。最悪めんどくさくなると、会社に着て行ってるスーツを日常でも着ている。部屋着のスウェットも無地のポロシャツも、同じものを何着も持っている。最低限しかないから、クローゼットは服よりも他の物の方が入っている。
「早く食え冷める」
「悪ぃ」
叱られて、親子丼を最後まで食べ切る。手を合わせて、ごちそうさまを言う。
「おそまつさん」
国領が俺のどんぶりを待ってましたとばかりに下げて、それも洗ってしまう。俺はまた、ベッドの上に寝転ぶ。部屋の中で、ベッドの頭側の壁にひとつ、反対側の壁にもうひとつ、でかめの本棚がある。漫画とかはないけど、本がひしめき合うように納まっている。昔っから勉強家だった。たまには俺もと思うが、前に一度本の位置をずらしてしまったらめちゃくちゃ怒られた。結構、物の配置にうるさい。わりには、煩雑とした部屋ではある。
「なにする?」
「いや俺は本読みたいんだって」
どっこいしょ、と言いながら座った。うん、たまにおっさん臭いとは思う。
「俺の読める本、ねぇ?」
「ない。というか、お前俺が勧めた本読めたことないだろ」
「そうでした」
国領がメガネをかけて本を開いたので、静かにすることにした。なんかベッドの脇に挟まってんな、と思い引き摺り出してみると、テニスのラケットだった。
「人ん家のもんを勝手に触んなよまったく」
国領が苦々しい顔で呆れたように言う。
「ごめん?」
「他所でやんなよ」
「国領のはいいよな?」
「ダメだよ馬鹿」
テニスラケットをしげしげ見つめる。学生時代はずっとやっていたけど、今はやってないっぽいんだよな。せっかくのラケットが可哀想だ。でも怒られたので、元の位置に戻す。ゲーム機とかもねぇしな。暇だ。あくびをする。
「寝ていい?」
「好きにしろよ」
国領はいよいよ本に没入したようで、こちらを気にしない。ページを捲る度になにかぼそぼそ言っている。考え事する時のクセだ。昔から変わらない。またあくびが出る。仰向けに寝転んで目を閉じる。寝つくまで時間はかからなかった。
「お前俺が土日はいつも暇してると思ってるだろ」
「思ってんよ?」
「暇じゃねぇからな!出来た!」
国領が出来たと言うので、皿を受け取りに起きる。今日は親子丼。俺の方のどんぶりのがでかい。
「暇じゃねぇってなにする予定だったんだよ」
「いや、本読むとか動画見るとか……あとそうだな」
「決まってなかったんじゃねぇか」
「1人で過ごす予定でしたよ、それは決まってる」
「じゃあ俺がいてもいいだろ?」
国領はなにか言おうと口を開き、諦めたように息を吐いた。黙って親子丼を食べ出す。
「いただきます」
手を合わせて、俺も食べ始める。ダシが効いていて美味しい。鶏肉や卵の火の入れ方が絶妙。黙々と食べ進めてしまう。
「……本当に食べっぷりがいいな柴崎は」
「美味いもん」
「そうかよ」
どんぶりから目を離し、なんとなしに顔を見る。
「まつ毛長ぇなお前。なんでモテねぇの?」
「まつ毛長いとモテるってどこ情報なんだよ」
「栗平?」
「あぁ……」
大学の後輩の名前を出すと、国領は渋い顔して頷いた。いっつもなんか眉間に皺寄ってんだよな。もったいねぇの。
「モテたことねぇよな俺ら。なんで?」
「モテたことねぇから知らん」
国領は考える気はないようで、むすっとしながらどんぶりをかき込んだ。俺と国領は背はほぼ変わらないし、俺と違って国領はしっかり者でいい奴なんだけども。一度も彼女がいたことがない。俺ですらあんのに。なにがいけないんだろうか。
「…………やっぱ身長?」
「お前のモテるの指標が栗平と布田しかいねぇってことは分かった」
国領はちゃっちゃとどんぶりを下げて洗い始める。うーんあとそうだな……国領は服のセンスねぇな。オシャレ全然しねぇ。最悪めんどくさくなると、会社に着て行ってるスーツを日常でも着ている。部屋着のスウェットも無地のポロシャツも、同じものを何着も持っている。最低限しかないから、クローゼットは服よりも他の物の方が入っている。
「早く食え冷める」
「悪ぃ」
叱られて、親子丼を最後まで食べ切る。手を合わせて、ごちそうさまを言う。
「おそまつさん」
国領が俺のどんぶりを待ってましたとばかりに下げて、それも洗ってしまう。俺はまた、ベッドの上に寝転ぶ。部屋の中で、ベッドの頭側の壁にひとつ、反対側の壁にもうひとつ、でかめの本棚がある。漫画とかはないけど、本がひしめき合うように納まっている。昔っから勉強家だった。たまには俺もと思うが、前に一度本の位置をずらしてしまったらめちゃくちゃ怒られた。結構、物の配置にうるさい。わりには、煩雑とした部屋ではある。
「なにする?」
「いや俺は本読みたいんだって」
どっこいしょ、と言いながら座った。うん、たまにおっさん臭いとは思う。
「俺の読める本、ねぇ?」
「ない。というか、お前俺が勧めた本読めたことないだろ」
「そうでした」
国領がメガネをかけて本を開いたので、静かにすることにした。なんかベッドの脇に挟まってんな、と思い引き摺り出してみると、テニスのラケットだった。
「人ん家のもんを勝手に触んなよまったく」
国領が苦々しい顔で呆れたように言う。
「ごめん?」
「他所でやんなよ」
「国領のはいいよな?」
「ダメだよ馬鹿」
テニスラケットをしげしげ見つめる。学生時代はずっとやっていたけど、今はやってないっぽいんだよな。せっかくのラケットが可哀想だ。でも怒られたので、元の位置に戻す。ゲーム機とかもねぇしな。暇だ。あくびをする。
「寝ていい?」
「好きにしろよ」
国領はいよいよ本に没入したようで、こちらを気にしない。ページを捲る度になにかぼそぼそ言っている。考え事する時のクセだ。昔から変わらない。またあくびが出る。仰向けに寝転んで目を閉じる。寝つくまで時間はかからなかった。