布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん
「それでは〜っ!!ここに柴崎翔悟の誕生日を祝しまして!!か」
「うるせえ黙れ座れ」
立ち上がり左手に高々とビールを掲げる柴崎の、空いている方の右腕を掴んで座らせる。国領はおしぼりで丁寧に顔を拭きながら、左隣の柴崎を睨んだ。柴崎はゲラゲラと笑いながら、向かいに座る布田と乾杯を済ませる。布田はカシスソーダに口をつけながら、静かにつまみをつついた。
「お前の誕生日なら当日に祝っただろうが」
「新年会と一緒くただったじゃねぇか!!ちゃんと祝え!!」
「いやちゃんと祝っただろケーキワンホール1人で食ったの誰だよ」
「よく食べるよねぇ俺たちもう若くないのに」
布田は軟骨の唐揚げをぽいぽい口に放り込みながら、感心したような声を出す。国領はため息を吐きながら、ビールを飲んだ。
「流石に落ち着いてほしい」
「え?なんか悩んでんの?」
「お前のことだよ柴崎!!」
国領が柴崎の右耳を引っ張るのを、柴崎はぎゃあぎゃあ言いながら、どこか嬉しそうにしている。布田はにこやかに横目で見ながら、軟骨の唐揚げのおかわりと、うめきゅうを追加した。
「お前、まだあのわけわかんねぇジジイのとこで働いてんのか?」
「オジキはわけわかんなくねぇよ?ちゃんとしてるよー。それに見た目よりは若けぇよあの人」
「いや若いかどうかはどうでもいいんだよこの際」
柴崎がオジキと呼ぶ人物は、新卒で就活にあぶれていた柴崎を、なぜか気に入って拾ってくれた男性のことである。職業も年齢も不詳。柴崎には、地域イベントの交通整備だとか、古着の買い付けだとか、鉄道会社の忘れ物の仕入れだとか、まぁとにかく多岐に渡る仕事を持ってきた。大手企業で経理をして生計を立てている国領には、おおよそ信じられないその日暮らしだ。
「大丈夫大丈夫、悪い人ではないから!」
「まぁ……そうじゃなかったら30にはなってねぇよお前は」
「今頃コンクリ詰で東京湾の底でも驚かないよね」
「いやそれは驚くし流石に引くが?」
「大丈夫だって!俺超幸せだし!」
ピース!とダブルピースしながらビールのおかわりを注文するのを、布田も国領も穏やかに見やった。高校生で出会った3人は、違う大学へ行っても毎週のように一緒に飲み食いをする。
「あ、こらそれ俺の分の長芋揚げだろ」
「とっとと食べない人が悪いよ」
布田が国領の分の長芋揚げを口に運んで、カルピスサワーで飲み込む。6本あった長芋揚げは、3本が布田の腹に、2本が柴崎の腹に。勝手に2本ずつと腹積りをしていた国領は、1本食いっぱぐれた。
「足りねぇなら頼めばいいだろ?」
不思議そうにする柴崎。その顔を見て、そういうことじゃないんだよなーと首を傾げる国領。満足そうな顔の布田。
「変わんねぇなー……恐ろしいくらい変わんねぇなお前ら」
「自分含んでないのおかしくない?国領」
「国領が1番変わんねぇよな!」
柴崎がビールを煽る。布田はくすくす笑いながら、うめきゅうを平らげた。恨めしそうに2人を見ながら、国領はビールジョッキを空にした。
「じゃ、俺そろそろ行かないと。怒られちゃうからね」
スッと布田は立ち上がると、少し多めにお札を置いて席を後にする。じゃあね〜という声色は、柔く耳触りが良い。布田に彼女がいるっぽい感じになったの、いつからだっけなぁ。国領は思い出そうとするが、なにぶん酒が入ってるので上手く思い出せない。そういうこと、話さないんだよなあいつ。
「結婚しちまうのかね〜布田は」
柴崎が何の気なしにそう呟くので、国領は目が冷める。
「どうだろうな」
「結婚式には呼んでくれっかな〜」
「…………お前はうるさいから無理だろ」
「なにおう!?」
柴崎がぎゃいぎゃい噛み付くのをいなしながら、国領はこのままでいいのだろうかと不安を膨らませた。このままでいたいような、先へ進みたいような。進むなら、どこへ?
「うるせえ黙れ座れ」
立ち上がり左手に高々とビールを掲げる柴崎の、空いている方の右腕を掴んで座らせる。国領はおしぼりで丁寧に顔を拭きながら、左隣の柴崎を睨んだ。柴崎はゲラゲラと笑いながら、向かいに座る布田と乾杯を済ませる。布田はカシスソーダに口をつけながら、静かにつまみをつついた。
「お前の誕生日なら当日に祝っただろうが」
「新年会と一緒くただったじゃねぇか!!ちゃんと祝え!!」
「いやちゃんと祝っただろケーキワンホール1人で食ったの誰だよ」
「よく食べるよねぇ俺たちもう若くないのに」
布田は軟骨の唐揚げをぽいぽい口に放り込みながら、感心したような声を出す。国領はため息を吐きながら、ビールを飲んだ。
「流石に落ち着いてほしい」
「え?なんか悩んでんの?」
「お前のことだよ柴崎!!」
国領が柴崎の右耳を引っ張るのを、柴崎はぎゃあぎゃあ言いながら、どこか嬉しそうにしている。布田はにこやかに横目で見ながら、軟骨の唐揚げのおかわりと、うめきゅうを追加した。
「お前、まだあのわけわかんねぇジジイのとこで働いてんのか?」
「オジキはわけわかんなくねぇよ?ちゃんとしてるよー。それに見た目よりは若けぇよあの人」
「いや若いかどうかはどうでもいいんだよこの際」
柴崎がオジキと呼ぶ人物は、新卒で就活にあぶれていた柴崎を、なぜか気に入って拾ってくれた男性のことである。職業も年齢も不詳。柴崎には、地域イベントの交通整備だとか、古着の買い付けだとか、鉄道会社の忘れ物の仕入れだとか、まぁとにかく多岐に渡る仕事を持ってきた。大手企業で経理をして生計を立てている国領には、おおよそ信じられないその日暮らしだ。
「大丈夫大丈夫、悪い人ではないから!」
「まぁ……そうじゃなかったら30にはなってねぇよお前は」
「今頃コンクリ詰で東京湾の底でも驚かないよね」
「いやそれは驚くし流石に引くが?」
「大丈夫だって!俺超幸せだし!」
ピース!とダブルピースしながらビールのおかわりを注文するのを、布田も国領も穏やかに見やった。高校生で出会った3人は、違う大学へ行っても毎週のように一緒に飲み食いをする。
「あ、こらそれ俺の分の長芋揚げだろ」
「とっとと食べない人が悪いよ」
布田が国領の分の長芋揚げを口に運んで、カルピスサワーで飲み込む。6本あった長芋揚げは、3本が布田の腹に、2本が柴崎の腹に。勝手に2本ずつと腹積りをしていた国領は、1本食いっぱぐれた。
「足りねぇなら頼めばいいだろ?」
不思議そうにする柴崎。その顔を見て、そういうことじゃないんだよなーと首を傾げる国領。満足そうな顔の布田。
「変わんねぇなー……恐ろしいくらい変わんねぇなお前ら」
「自分含んでないのおかしくない?国領」
「国領が1番変わんねぇよな!」
柴崎がビールを煽る。布田はくすくす笑いながら、うめきゅうを平らげた。恨めしそうに2人を見ながら、国領はビールジョッキを空にした。
「じゃ、俺そろそろ行かないと。怒られちゃうからね」
スッと布田は立ち上がると、少し多めにお札を置いて席を後にする。じゃあね〜という声色は、柔く耳触りが良い。布田に彼女がいるっぽい感じになったの、いつからだっけなぁ。国領は思い出そうとするが、なにぶん酒が入ってるので上手く思い出せない。そういうこと、話さないんだよなあいつ。
「結婚しちまうのかね〜布田は」
柴崎が何の気なしにそう呟くので、国領は目が冷める。
「どうだろうな」
「結婚式には呼んでくれっかな〜」
「…………お前はうるさいから無理だろ」
「なにおう!?」
柴崎がぎゃいぎゃい噛み付くのをいなしながら、国領はこのままでいいのだろうかと不安を膨らませた。このままでいたいような、先へ進みたいような。進むなら、どこへ?
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