いびつな欠片
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片付けを終えて着替えた後にハルたちを待つ。
旭が気になって更衣室の戸口を見やっていると、戸を強く閉めて郁弥が出てきた。
長い前髪で表情を隠すようにうつむきながら行ってしまい、旭のことは聞けなかった。
***
「旭のこと、原因は分かったか?」
「尚先輩はメンタルの問題かなって言ってたけど……。大丈夫かなあ……」
SCへ向かう途中の信号待ちのときに真琴に聞いてみると、そんな答えが返ってきた。
"メンタルの問題"という言葉に覚えがあり、思わず息をのむ。
「夏也先輩と郁弥くんて、仲悪いのかなあ」
真琴がふと言った言葉につられて考え込む。
確かにあの2人の間には、どこか気まずそうな雰囲気があった。
なんでだろう……。
***
「やっほー!ハルちゃん、マコちゃん、アオちゃん!おそかったねー」
私たちを見つけたとたんにぱっと顔を明るくし、渚がぱたぱたと駆け寄ってくる。
「ああ、俺たち水泳部に入ったんだ」
「私はマネージャーだけど」
「水泳部?」
「うちの学校、部活動が必須だからさ」
「そういえばさっきコーチから言われたんだけど、僕ね、次の大会でブレの50mと100mに出ることになったよ!」
渚の朗報に感心する。
ちゃんとブレの選手として出られるようになったのか。
「渚、よかったな」
「応援は行ってやる」
「渚の勇姿を見に行かなきゃね」
「ほんと!?よしっ、がんばるぞー!」
3人でそれぞれ言うと、渚がはじけるような笑顔になり、張り切ったように片腕を上げてプールの方へ駆け出す。
「こらあ!プールサイドを走るなって言ってんだろ!!」
「わあっ!ごめんなさい!」
案の定笹部コーチに怒られていて、私はついくすっと微笑んだ。
***
「ただいまー」
「お、蒼おかえり。凛から手紙来てたぞ」
「!ほんと!?」
今日はSCに顔を出してから、早めに帰ってきた。
リビングから顔を出してエアメールを見せる透兄に、スニーカーをもどかしく脱いで駆け寄る。
「そういえば透兄、今日も早いな」
「部活休みだったし、たまには『おかえり』って言いたいしさ。てか、あいつ筆まめだなー」
ローマ字で書かれた宛名を見ながら封筒を開く。
最近学校であった面白いことや、ちょっとした悩みごと。
でも基本明るい雰囲気でつづられていた。
凛はかっこつけずにいろいろ話してくれる。
前に凛が、"アオの前だと、不思議と素直になっちまうんだよな"と言っていた。
それがなんだか、対等に見てくれてる証みたいで嬉しかったし、ずっとそうありたいと思った。
「返事書かなきゃな」
「お前も筆まめだな」
うりゃうりゃと透兄に髪をぐしゃぐしゃにされ、ちょうどSCから帰ってきた紺が「僕もなでてー!」と乱入してきた。