受容と献身、あなたと生きるために必要なもの


蓮と暮らすようになって数日。すみっこにいる彼に話しかけたり、隣にぬいぐるみを置いたり、ミルクや香り玉をあげたりするうちに、分かってきたことがある。

音楽をかけると、聞き入るような反応を見せること。手持ちのCDを色々かけてみたところ、どれも飽きた様子を見せずに聞いていた。自分の好きな音楽に、耳を傾けてもらえるのは嬉しい。

緑色の鳥みたいな、丸い形のぬいぐるみを、たまにぽふぽふ触ること。すみっこ好きなキャラクターだから、隣に置いたら可愛いと思ったぬいぐるみ。蓮にとっては、触り心地が気に入ったらしい。

最近は、蓮がすみっこじゃない場所にいることも増えてきた。少し離れて私の後ろをついてきたり、部屋の中央に座って音楽を聴いてたり、私の服の袖をちょっとつまんで意思表示してきたりする。

その度に、ふわり、ふわりと微かな桃の香りが動いて、部屋の空気を優しく彩っていく。その香りをかぐと、胸の内がほんわり温かくなって、思わず口元が緩んだ。それは、蓮が我が家に慣れてきた証みたいだった。

***

「蓮、今日はお出かけしようか」

窓から外を眺めてたり、テレビに映る景色に見入ってたりする蓮。ずっと家の中にいるのは、もったいない気がするので、彼を連れ出してみることにした。

直射日光は色があせる原因になってしまうので、彼の持ち物であるパーカーを被せる。プランツドールが持つには珍しい、カジュアルな無地のパーカー。でも生地の手触りが良すぎるから、多分これも高級品だろうな。

いつものひらひらした服より、蓮はリラックスしてるみたいだった。こういう服の方が好きなのかもしれない。

思ってたより軽い彼を抱えて、外に出る。やわらかな陽光が私たちを照らし、軽やかなそよ風が頬を撫でていった。

「あれはシロツメクサだよ」
「あそこはブタナがたくさん咲いてるね」

道端に咲いている草花を指さして、蓮に話しかける。そうしてたどり着いたのは、大きめの遊具がある広場だった。今日は小さな野外フェスが開催されているようで、キッチンカーが何台も並んでいる。

ダンススクールの発表もあるらしく、髪を飾った女の子やかっこいい服の男の子が、広場の中央で踊っていた。スピーカーから、アップテンポの流行りの音楽が流れ、お客さんたちを盛り上げる。

蓮の様子を見ると、周りを興味深そうに、きょろきょろ見回していた。賑やかな場所にいるのは、嫌いじゃないみたい。蓮が好きなものや気になるもの、もっと見つけていきたいな。
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