拗らせブルーマーリン!
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おやつを食べてから公園に向かうと、ヒヨが久しぶりに山作りをしていた。1人にさせちゃって悪いことしたな。そう思いながら近づくと、知らない男の子が、猫ちゃんを抱えてヒヨに話しかけていた。
好奇心がむくむく湧いてくる。ヒヨが他の子と話してるとこなんて、初めて見た。
知らない男の子は、かえで、と名乗った。
***
いつもみたいに絵本を持って、いつもの公園に行く。ヒヨはもう引っ越しちゃったから、砂場にもベンチにも、ヒヨはいない。崩れかけた砂山と、置き去りにされたスコップが、何だか寂しく映った。
スコップを手に取り、手持ち無沙汰に山の形を整える。ぺちぺちとスコップで山を叩いていると、後ろから「あ」と声が聞こえた。
振り返ると、昨日のかえでくんがいた。
「……あいつ、どこいったの?」
「わかんない。おひっこしって、きいたよ」
「……もう、あえねーの?」
「わかんない。千花は、またあいたいな」
ベンチに並んで座って、話をする。かえでくんは、口を紐で縛るタイプのバッグを持っていた。不満そうに、彼は口をとがらせる。
「……つまんねーの。せっかく、いっしょにおよげるとおもったのに……」
「およぐの、すきなの?」
「あいつが、すいえいたのしいって、いったから」
「おそろいだー。千花もね、およぐのすき」
「……ふーん」
そう答えると、かえでくんは私の方を見た。それからうつむいて、何か考えるように黙ってから、ベンチから立ち上がる。それから、私の手をきゅっと掴んだ。
「じゃあ、いくぞ」
「? ぉわぁぁ〜〜」
かえでくんは、そのまま私の手を引いて走り出す。景色をびゅんびゅん追い越していくのが、何だか新鮮で面白い。ちょっと痛く引っ張られるのも初めてだった。
ハルやマコとも手を繋ぐけど、2人とも優しく繋いでくれるし、グイグイ引っ張ることもしなかったから。いつもお互いのペースに合わせて、一緒に隣を歩いていた。
2人で息を切らしながらたどり着いた場所は、知らない家だった。かえでくんは私の手を握ったまま、ずんずん進んでいく。いいのかな? と思いつつ、私は大人しくついて行った。
「ただいま! キヨ兄ちゃん、プール連れてって!」
引き戸を勢いよく開けて、かえでくんは靴を脱ぎながら大きな声で言う。奥から出てきたのは、青い目に柔らかそうな髪の、優しそうなお兄さんだった。
「おかえり。今日も出かけるのか?」
「うん!」
「そっちの子は友達か?」
「およぐのすきっていうから、つれてきた!」
私に気づいたお兄さんが、私と目を合わせるようにしゃがみ込む。ふわ、と浮かんだ微笑みに、心が落ち着いた。
「こんにちはー」
「こんにちは。挨拶できて偉いな。俺は蓜島 清文。君の名前は?」
「千花!」
「千花ちゃんか。よろしくな」
はいじま きよふみ。だから、キヨ兄ちゃんなのか。
それが、2人との出会い。まだ私が、ビート板無しでは泳げなかった頃の話だ。