エレジアの危機は回避したのに、別の戦争が起こりそうなんですが
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赤髪海賊団が拠点としているフーシャ村で、私はその子と出会った。
「キャロル! 歌聞かせてくれ! 歌!」
「いいよ、ルフィ。今日は何にする?」
「スーパーカリフラワーナントカ!」
「あ、アレか。楽器の準備するから待っててね」
ニッケルハルパを構えて、いくつか音を鳴らす。両手をぐーにしてぶんぶん動かしながら、目を星みたいに輝かせて待っているルフィの隣に、ウタが並んだ。マキノちゃんやシャンクスたちも、周りに集まっている。
「それでは聞いてください。『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス』!」
早口言葉や長い呪文みたいなその言葉は、望みを叶えてくれる言葉。そして、"素晴らしい"を意味する言葉。傘を差して舞い降りてきた、魔法が使えるスーパーナニーの物語に出てくる歌だ。
ウタが手拍子を始め、それにつられたように軽快な音が広がっていく。
ジャンッと小気味よく演奏を終える。歌い終わる頃には、村の人たちも集まっていて、大きな拍手をしてくれた。いやあ、ノーミスで歌えて、よかったよかった。
「すっげーーーー!」
「相変わらずすごいな。おれだったら舌噛んでるぞ!」
「確かに間奏のあれは危ないね」
ルフィとシャンクスが、尊敬するような眼差しを向けてくれる。微笑ましい気持ちで答えていると、ウタが抱きついてきた。
「ねえねえ、次は『いつか夢で』歌って!」
「えー、おれランプの魔人の歌がいい!」
「ルフィは今歌ってもらったでしょ。次は私の番!」
「こーら、2人ともケンカしないの。両方歌ってあげるから」
「ジャンケンで勝った方の歌を、先に歌ってもらう。それでいい?」
「おう!」
「「ジャンケン、ポンッ!」」
ルフィが出したのはパー。
ウタが出したのはチョキ。
「やったぁ! 私の勝ち!」
「あーー! もう1回勝負しろ!」
「出た、負け惜しみィ!」
「ウタ、ルフィのこと煽らない」
顔の横に持ってきた両手を開閉させて、からかうウタに対し、ルフィは頬をふくらませてむくれている。2人の頭を撫でながら、私は昔を思い出していた。2人とも可愛いなぁ。子どもの頃のシャンクスとバギーみたい。
ルフィが好きなのは、『王様になるのが待ちきれない』や、『フレンド・ライク・ミー』みたいな、とにかく明るくて陽気な歌。特に子ライオンの歌は、"海賊王"を目指すルフィに合ってるなと個人的に思う。
言葉の響きが面白いのか、『ビビディ・バビディ・ブー』や、さっき歌った『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス』もお気に入りだ。
ウタが好きなのは、プリンセスやヒロインが歌う曲。『夢はひそかに』とか、『いつか王子様が』とか。ゆったりしたメロディが退屈なのか、ルフィはよく船を漕いでしまうけど。好みが正反対で分かりやすい。
まずはウタのリクエストから。"夜明けの光"を意味する名前の王女が、森の中で動物たちと踊っていたとき、夢で何度も会った王子と出会う歌。赤ちゃんのときに1回会っている婚約者と、再会して恋に落ちるなんて、どれだけの確率なんだろう。
次に自分のリクエストが待っているからか、とりあえずルフィは大人しく座って聞いていた。うっとりした顔で聞いているウタとは対照的に、つまらなそうだ。そこまであからさまに反応されると、落ち込むのを通り越して面白くなってくる。ちゃんと待ってて偉いね。
次はルフィお待ちかねの曲。賑やかなメロディに変わったことで、ルフィの丸い目がまた輝き出す。
こんな友達、欲しいなと思わせてくれる、元気なランプの魔人の歌。労働許可も持っている、マジな魔法使いの歌。声や口調を大げさなくらい変えると、ルフィもウタも楽しそうに笑い声を上げていた。
「この魔人はね、願い事を3つまで叶えてくれるんだよ。もし会えたら、2人は何をお願いする?」
「すげぇ! 何でも叶えてくれんのか!?」
「人を死なせること。願いを増やすこと。願いを取り消すこと。誰かを好きにさせること。それから、死んじゃった人を生き返らせること以外なら、何でもね」
そう言うと、ルフィは首をひねってうんうん考え出す。ウタも少し悩んでいたようだけど、明るい顔で答えた。
「私、争いがなくて、平和な世界を作ってもらいたいな! それと、もっといろんな人に、私とお母さんの歌を届けたい。あとね、シャンクスやお母さんや、赤髪海賊団の皆と、ずっと一緒にいたい!」
平和を願うウタらしい、優しい願い事だ。可愛い子め。よしよしと頭を撫でると、ウタは「えへへ」と頬をピンク色に染めて、はにかむように笑っていた。
「おれ、毎日おなかいっぱい、うまい肉が食いてえ! あとランプの魔人と本当の友達になる! 3つめはまだ決まんねえ!」
「本当の友達?」
「おう! だってあいつ、"ゴシュジンサマ"とか"シモべ"って言ってくるだろ? 友達が友達に、そんなこと言うのは変だろ! だからちゃんと友達になりてえ!」
真っ直ぐな目で、元気よくルフィは答える。自由が好きなルフィらしい答えに、私は微笑みながらルフィの頭も撫でた。
「ルフィがそう言ってくれたこと、ランプの魔人が知ったら喜ぶだろうね」
「ししししっ」
「ランプの魔人はね、すごいパワーを持っているけど、本当はランプに閉じ込められてるんだ。だから、ランプの持ち主との関係は、あくまでご主人様とその召使い。持ち主には逆らえないし、大切な人を助けたくても、その人から命令されないと助けることも出来ないんだよ」
「えーっ! おもしれーのにつまんなさそう……。最後の願い、そいつが自由になるようにするのはダメなのか?」
「ダメじゃないよ。むしろ一番いい方法!」
それを聞いて、ルフィはぱあっとお日様のような表情になり、私に抱きついてきた。
「ランプの魔人、会ってみてえなー」
「物語の登場人物だけど、いるといいよね」
海も世界も広いから、探せばそういうお宝はありそうだけどな。ルフィの隣に青い肌の魔人が並んでいるのを想像して、私は頬を緩めた。とっても気が合いそうだ。
***
たくさん遊んで、おやつを食べた後。ルフィは電池が切れたようにこてんと倒れ、お昼寝を始めた。ウタもうとうとと頭が揺れている。
「ウタもお昼寝したら?」
「まだ、ねむく、ないぃ……」
「よしよし。歌を歌ってあげようね」
私の膝を枕に眠るルフィの頭を撫でながら、ウタの体を私の方へ、もたれかからせる。
「……ララルー、ララルー……」
低くささやくように、優しい声で歌う。
血統書付きの飼い犬であるヒロインと、雑種の野良犬であるヒーローの物語に出てくる曲。ヒロインの家の奥さんが、赤ちゃんを寝かせるときに歌った子守唄。
きらめく星をみんなあげる。夢の奥には、バラ色の雲がかかりますように。
おやすみ、可愛い天使たち。楽しい夢を見られますように。