エレジアの危機は回避したのに、別の戦争が起こりそうなんですが
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よく歌を聞かせていたからか、気づけばウタは私の真似をして歌うようになっていた。赤髪海賊団と他の海賊が戦うとき、2人で安全な船室で待機している間も。
「おかあさん、ふしぎの国のおはなしして」
ウタは物語を聞いたり、空想の世界に浸ったりすることが好きなようだ。黄色いぬいぐるみのクマさんのお話も好きだし、王子様とお姫様が出会う話もお気に入り。女の子が、ふしぎの国で冒険をする話も大好きだ。
馬鹿げたことが当たり前で、決まりなんて無い世界。全てがとんちんかんで、妙ちきりんで、あべこべな世界。どんな生き物も、人間みたいにおしゃべりができる世界。
話の途中で、自由な想像力を使って自分だけの夢の国を作り上げる、少女の歌を歌う。ウタも楽しそうに声をそろえた。
私の声と、妖精みたいなあどけない声が重なる。歌っているうちに、2人で眼鏡をかけた白ウサギを追いかけたり、チューリップやユリやスミレたちのコーラスを聞いたり、トランプ兵とバラを塗り替えたりしているような気分になった。
「……い、おーい。起きろー」
「……んん……? シャンクス?」
「ようやく起きたか。敵から取った積み荷の移動も、もう終わったぞ」
「そんなに時間が経ったんだ……」
体を起こすと、私の胸に寄りかかるようにして、ウタも眠っていた。楽しい夢でも見ているように、口角が上がっている。
何だか懐かしい感覚だった。頭の中がふわふわしてきて、心地いいまどろみに誘われていく感覚。父さんが聞かせてくれた歌みたい。
「もしかして……」
1つの可能性が頭に浮かぶ。今度、皆の前でウタの歌を聞かせてみるか。そう思いながら、私はウタの髪をそっと撫でた。
***
ポロロンと軽やかに跳ねるピアノの音に合わせて、無邪気で舌足らずな声が歌う。音楽家仲間のパンチに聞いてみたら、前に他の海賊船から奪ったグランドピアノがあるとのことなので、それを使っていた。薄ら白く積もっていた、ホコリを拭くところから始まったけど。
今日はウタに軽くレッスンをしていた。基本は音階。歌うときは声を胸に響かせて、鼻声は出さないように。初めは無駄に思えるかもしれないけど、基礎練習をちゃんとしているか否かで、その後が変わってくるものだ。
練習曲にしているのは、『スケールとアルペジオ』。ここで使わないでいつ使おうか。この歌が流れるシーンでは、ピアノと歌の練習をする子猫たちを、お母さん猫が優しく見守るのが可愛いんだよね。
パンチとモンスターも、ピアノの近くで微笑ましそうに見守っている。
「キャロルってピアノも弾けたんだな」
「母さんと暮らしてた頃に覚えたの」
感心したようなパンチに答える。小さな家で、アップライトピアノの前に2人で座り、母さんと連弾したことを思い出した。一緒に音を紡いで、声をそろえて歌うのが、とても楽しかったな。懐かしい。母さんが弾くと、まるでピアノが歌っているみたいだった。