トリップしたら海賊の世界にいたので、黄色い子分たちとバナナ代を稼ぎます。
「こいつらは最強最悪のボスに仕えたがってるんだろう!? だったらおれがこいつらを使ってやろう! こいつらを使いこなせるのは、おれだァ!」
ビール樽みたいな胴体に浅黒い肌。黒い顎ひげと口ひげをたくわえた大男が高らかに言い放つ。
他にも、フラミンゴの羽みたいなピンク色のファーコートを来た、金髪サングラスの男性。丸々とした体にワンピースをまとった、ピンク髪のマダム。どいつもこいつも背が大きい。
3人の下には、ミニオンたちが全員集まっていた。3人のことを「ボス」と呼び、抱きついて嬉しそうに甘えている。彼らを何よりも慕っているのが分かる表情で。
黒ひげことマーシャル・D・ティーチが。ドンキホーテ・ドフラミンゴが。ビッグマムことシャーロット・リンリンが、膝をつく私を見下ろして、大口を開けて嘲笑う。
「ゼハハハハハハ!!」
「フフフフフフフ!!」
「マンママンマ!!」
そんな。そんな……。
「いやコラ画像かってくらい絵面の食い違いが凄まじいんだが!?」
飛び起きて叫んだところで、さっきまで見ていた映像が夢だと気づく。何て悪夢だ。
お祭り野郎気質のミニオンたちも、寝静まる時間。さっきまで夢で聞いていたゲラゲラ笑う声が、まだ耳元で響きそうで頭を振ったとき。トントンと控えめなノックの後に、ドアを開ける音が聞こえた。
「……アー、ボス?」
「ボブ? うるさくしてごめんね。起こしちゃった?」
「ノー。ノリティボドド、パラドゥ? ミヨラナシグレィ、ケチャッパニーシ」
パジャマを着たボブは下を向いたり、上目遣いをしたり、おどおどした様子でティムをぎゅっと抱きしめている。騒音の苦情というより、怖い夢でも見ちゃったような反応だ。
「おいで、ボブ」
枕元の明かりをつけて手招きすると、ボブは明るい表情に戻って、ベッドにいそいそと潜り込んだ。
「トゥリマカシー」
「ボス? □〇◇╳ポポリオ?」
「あ、ケビンも来たの。どうぞ」
「タンキュー」
両脇を柔らかいものに挟まれる感覚に、さっきまで抱いていた漠然とした不安が溶けていく。何だか私も安心して眠れそうだ。
「「ブッナーイ」」
「うん、おやすみ。2人とも」
朝までまだ早い。もう一度目を閉じたとき。
「ブッナーイ!」
「うわあびっくりした」
ローブ姿のスチュアートが、背中からベッドにダイブしてきた。ぼすんとスプリングが揺れて、ぎゅっと全員で密着する。ベッドが大きくてよかった。
「おやすみなさい、いい夢を」
スチュアートにも毛布をかけ直す。窓の向こうでは、星々がちらちらと見守るように瞬いていた。