先輩、私の好きなものを選んで
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「「筋肉と!」」
「脂肪……」
「「「どっちが好きですか!?」」」
「…………へ?」
東京の大学に入ってから数ヶ月程。
全日本選抜に出場するハルたちの応援をするために、岩鳶水泳部の皆が来てくれた。
今日は私が住んでるマンションに、江と歩ちゃん、そして五十鈴ちゃんが泊まりに来ている。
大人しい性格の歩ちゃんと、御子柴部長の妹さんと言うだけあってハキハキした五十鈴ちゃん。正反対の2人だけど、どちらもいい子。
4人でお茶を飲みながら、のんびり話をして少しずつ仲を深めていた。
そんなとき、冒頭の台詞を3人に投げかけられたのだ。
「えっと……私が、しなやかさと硬さを兼ね備えた彫刻のような筋肉と、ふっくらとふくよかで柔らかい脂肪のどちらが好きかってことか……?」
「さすが作家志望の蒼ちゃん!比喩が綺麗!その通り!」
「筋肉の素晴らしさを感じさせる表現……!分かってますね蒼さん!」
「そうなんです……!脂肪の良さはそこなんです……!蒼先輩……!」
キラキラと夜空に瞬く星のような6つの目が、熱を込めてこちらを見つめている。
そんなに期待のこもった目を向けないでほしい……!
思えば、自分が人の体のどこが好きかなんて考えたことがなかった。
「筋肉は素敵ですよ!鍛え上げられたシックスパックとか、力を入れたときに浮き出る線とか!」
「まさに男性らしさの象徴!お兄ちゃんの筋肉なんてもう惚れ惚れしちゃうくらい!」
「低反発素材並の柔らかさを発揮する脂肪も魅力的なんです……!」
「え、えっと」
おかしい。
私が入れたのはマスカットティーで、アルコールは一切入ってない。
なのに3人ともお酒か何かが入ったようなテンションになってる気がする。
何が彼女たちをここまで駆り立てるんだろう……。
「どっち派ですか!?蒼さん!」
ぐいっとお茶を勢いよく飲み干し、五十鈴ちゃんが私との距離を一気に縮める。
思わず体を引くも、後ろは壁だった。
逃げられない。
でも片方を選んだら、もう片方が黙っていない雰囲気だ。
こういう場を丸く収めるには……。
「わ、私は……」
3人がごくりと、重大なお告げでも待つように唾を飲み込む。
私は少しの緊張感を持ちながら、口を開いた。
「……骨格派、かな」
「まさかの骨格派!?」
「新たな萌え要素ですか!?」
江と五十鈴ちゃんが同時に、驚きと残念さが混じった声を上げた。
「手首の骨とか、鎖骨とか、けっこう好きかもしれない……。あと、浮かび上がるあばら骨」
「そういう観点もあるんですね……。私は、それらをふんわり覆う脂肪が好きです」
「鎖骨かぁ……。私は胸骨と鎖骨を起始とする胸鎖乳突筋が好きだなぁ」
「蒼さんの着眼点、意外過ぎますよー!」
ガールズトークは、まだ終わらない。