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合宿先の宿で借りた、源泉かけ流しの温泉。
温まりながら疲れた筋肉をほぐし、男子たちで話が盛り上がっていた頃である。
「ねぇねぇハルちゃん、アオちゃんは何のイメージなの?」
遙はイルカ、真琴はシャチ、怜は蝶、渚はペンギンがイメージだという話の後。
湯船に浮かべた洗面器を回して遊んでいた渚が、ふと遙に聞いた。
「蒼はクリオネ」
あごがつきそうなほど湯船に浸かった遙は、みんなに言ったときと同様に迷いなく答える。
「どうしてですか?」
「蒼の泳ぎは、繊細だけど生命力を感じるから」
不思議そうな怜に、遙はのぼせた様子もなくさらりと言う。
「なるほど、確かに。それにクリオネは"海の妖精"や"流氷の天使"と言われていますし、蒼先輩にピッタリですね!」
知識がある怜は、納得したようにぽんと手を打った。
たまに一緒のプールで泳いでいるため、怜も蒼の泳ぎは把握している。
何より透明で幻想的なクリオネは、不思議な魅力を持つ蒼のようなのだ。
「アオが聞いたら喜ぶね。クリオネ大好きだから」
穏やかで澄んだ空気をまとっているような幼なじみを思い浮かべ、湯けむりのようにふわりと真琴は微笑んだ。
「でもクリオネってホントはこわいよ?エモノ食べるときにねー、頭のところが『バッカルコーン!』って開くの!」
「え、そうなの……?」
パシャッと水音を立てながら渚が大きく手を広げ、無邪気な様子で表現した。
真琴はクリオネの壮絶な捕食シーンをうっかり想像してしまい、青ざめる。
「……なんですかその得体の知れない擬音語は。意味が分からない……」
怜が不可解そうに眉を寄せ、渚はきょとんと首をかしげて答えた。
「え、よく言われてるんじゃないの?」
「初めて聞きましたよ!あと、バッカルコーンはクリオネが頭部から出す6本の触手です」
「アオは凶暴性があるわけじゃないけど……」
「蒼はなめてると痛い目見るぞ」
「そうなの?!」「そうなんですか?!」
八の字眉を下げて苦笑いした真琴。
その後に遙が真顔で言った、意外すぎる言葉に渚と怜が声を合わせた。
「ああ見えて力がある。女子1人なら普通に運べる」
「あ。そういえばこの前アオちゃんが、女の子をお姫様抱っこして登校してた!」
「?!!」
「あ~、琴葉ちゃんがねんざしちゃったときだね」
渚の言葉に、怜が驚いたように渚のほうをバッと向き、思い出すように真琴が話した。
1週間くらい前、友達3人で登校する日。
蒼と玲音がすでに待ち合わせ場所に来ていたので、急いだ琴葉が転んで足をひねってしまった。
「手当しないと」と蒼がなんのためらいもなく抱き上げ、そのまま保健室まで運んでいったのは言うまでもない。
涼しげな表情(本当はすごく心配していた)の蒼に対し、当の琴葉はリンゴのごとく真っ赤になって固まっていた。
「それにアオは儚げに見えて芯が強いし。見た目は可憐でも、海でちゃんと生き抜く力を持ってるって意味だよね。ハル」
「……何で分かった」
「どんだけ漢前なんですか!」
尊敬と複雑な心境で言う怜に、真琴は笑って言った。
「アオは女の子の前だとかっこいい系だからね」
(俺達の前だとかわいいんだけど。そのギャップも、アオの魅力だよね)
そんな真琴の心境を察したのは遙だけだった。