それは希望よりも熱く、絶望よりも深いモノ


麦わらの一味との宴という、夢のような時間があっという間に過ぎる。コットンはスザクたちのフォローのおかげで、チョッパーと握手をすることができた。

「おれのファン!? そ、そんな事言われても、嬉しくねーぞコノヤロー♡」
「可愛い」
「コットンさん、瞬き瞬き」

小さな手の温もりと、硬いヒヅメの冷たさ。その感触を忘れないように、コットンはしばらく余韻を噛み締めていた。

そしてトロイメライ号は、サニー号の隣に並んで、一緒にゾウを目指すことになった。ローが乗り込んできた影響だ。

「ナミ屋たちとの会話が聞こえてきたんだが」
「え゛」
「……そんなに信じられねェなら、分からせてやろうか」
「エッ!? いやあの大丈夫です結構です!」
「遠慮するな。骨の髄まで愛してやるよ。おいスザク屋こいつ借りるぞ」
「洒落にならないし顔が怖い!! 助けてスザクー!」
「"フレアが嫌がることは絶対しない"って、約束するならいいよ」
「分かった」
「私の同意は!?」
「自分がどれくらい好意を向けられてるか、この際しっかり自覚しておいで。行ってらっしゃーい」
「客室はこちらでございます」
「うわあああああ!」

無断で連れて行くのは許さないが、トロイメライ号で行動を起こすなら、まあいいかとスザクは考えた。ローの話を聞く限り、フレアがローにどれだけ良い影響を与えているか、本人がかなり自覚していないように思える。

ダイナが設計した客室に、2人を案内したその後。ローとフレアは丸1日部屋から出てこなかった。

***

「ファーストキス奪われた……」
「あれ、初キスはエースじゃなかったっけ?」
「あれはキスじゃなくて人命救助!」

マウストゥーマウスで炎を分け与え、エースを蘇生させた話を聞いていたスザクが、首を傾げる。顔を真っ赤にして否定しながら、フレアはその場に座り込んだ。

「もうやだ。頭の中パンクしそう。思考回路はショート寸前」
「ムーンライト伝説?」
「そんな気分を吹き飛ばすような、とっておきの映像がございます。見ますか?」
「何それぇ……。そんなのあるの?」
「ドレスローザのコロシアムで撮影した、盃兄弟の感動の再会シーン。更にメラメラの実をサボが口にした後、その場にいたエースと即興で披露した火拳×2のシーンです」
「いや〜、スタンピードでしか見られないと思ってたよ。兄ちゃんズのW火拳」
「スザクとダイナさん、愛してる」
「安いものです。映像の1本くらい」

フレアは両手を合わせて、スザクとダイナを拝む。スザクの部屋に皆で集まり、ドアには鍵をかけてから、映像電伝虫のスイッチを押した。傍らにはジュースと、セイラが焼いたクッキー。タオル片手に7人は、映像鑑賞を楽しんだ。

***

「ところで、成り行きでゾウに行くことになりましたが、これからどうしましょうか」
「ホールケーキアイランドは、ルフィたちで何とかできるからいいとして……。さすがにワノ国まで付き合うのは危ないわ。ね、スザク」
「……花形……登場だよい……」
「ダメだ行く気だ!!」
「落ち着け。さすがにカイドウと百獣海賊団と、ビッグ・マム海賊団は手に負えないぞ」
「止めないでくれ……。私は……私は! ワノ国編で活躍するマルコさんが見たいんじゃ〜〜〜〜!!」

ダイナとセイラに話しかけられ、スザクはマルコのセリフをぽつりと口にする。リーゼとコットンのツッコミが飛んでくるが、スザクは思いの丈を込めて叫んだ。

出会い、別れ、また出会って、物語は紡がれていく。糸を重ねて布を織り上げていくように。

この先にどんな未来が待っているかは分からない。ただ1つ確かなのは、これからも自分たちの意思で道を決めていくこと。思うままに自由に、ハッピーエンドを目指して進んでいく。

夢見る乙女たちの物語は、まだ終わらない。
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