番外編
そいつは、おれと似た色を持っていた。
灰色が混ざったような白い髪。その下からのぞく、大きな目の青さが、くっきりと目立っていた。
おれの髪と同じ色に興味が湧いた。ぼさぼさの髪や青白い頬、小枝みたいな手足に、ふれてみたいと思った。試しに握りしめた拳をぶつけてみると、そいつは簡単に転がって泣いた。
面白かった。楽しいと思った。
おれが何かするたびに、いちいち泣きわめいて、びくびく怯えて、小さく丸まる。叩いたらどうなる? 蹴ったらどうなる? 髪を引っぱれば、肌をつねれば、どんな反応を見せてくれる?
あの手この手で、おれはその女をいじめた。そいつは父上が連れてきたという実験体だから、おれが何をしたって許される。そいつの首にはめられた、重そうな首輪を見るたびに、口角が上がった。
そんな日々が、少しずつ変わり始めた。
そいつはいつの間にか、デキそこないのサンジと関わるようになっていた。弱くて、王族のくせにネズミのエサなんか作るやつ。そんなデキそこないと一緒にいるときのそいつは、おれには絶対に見せない顔をしていた。
青白い頬に赤みがさして、口の端が持ち上がって、青い目をキラキラ輝かせて、サンジだけを見つめていた。
きし、と胸が軋む音がする。腹の辺りがムカムカして、イライラして、思わず舌打ちをしたくなる。おれはあのデキそこないより優れてるのに、何であいつにだけは、あの顔を向ける?
イチジやヨンジと一緒に、サンジとそいつがいるところを邪魔する。弱っちくて柔らかい体を殴り、皿を割り、サンジが作ったエサを踏み潰してやる。そうしている間は気分が晴れたのに、終わったらすぐイライラが戻ってくる。
デキそこないがいなくなってから、その不快感は治まると思っていた。でもそいつだけは、サンジを探していた。
「……あ、あの……」
初めて、そいつの方から話しかけてきた。せっかく気分が良くなったのに、そいつはこう続けた。
「……サンジ、どこにいるか、知らない?」
どこにもいないヤツを求めている姿が、みじめで面白かった。あいつはここにはいないと、今頃どこかで死んでいると教えてやったのに、そいつはしつこく首を横に振る。吐き気がするほど苛立って、おれはそいつを思い切り殴った。
弱いお前は、ここから出られない。おれから一生離れられない。ずっと、叩けばよく鳴くオモチャでいればいい。おれの、おれだけのモノ。
ようやく足りない頭でも理解したのか、そいつは何も言わなくなった。イライラがようやく治まって、おれは部屋を出る。また好きなときに来て、好きなときに遊べばいい。この部屋を中心に探せば、いつでもいるんだからな。
そう、思っていた。
その後、そいつが部屋の窓から飛び降りるなんて、思ってもみなかった。脱走しようとしたことで、首輪についていた爆弾が作動して、死体は欠片も見つからなかったらしい。
きし、と、また胸が軋んだ気がした。得体の知れない不快感が、まとわりつくように離れなかった。