平和主義者でも戦わなきゃいけないときがある
『フォレスト冒険団』は、誰にも迷惑をかけずに旅をしている、海賊とはまた違う自由な存在。そして、弱きを助け強きをくじく存在だ。
これまで何度か、海軍の目と手が届かない島で、穏やかに暮らす善良な人々を守ってきた。奪い、殺し、傍若無人に振る舞う海賊や人攫いたちを倒してきた。その姿はまるで、人の活動領域を、風害から守る森林のようだった。
そんな彼らが敵に回ると、こんなにも厄介なのか。そう考えながら、海軍元帥であるセンゴクは、処刑台から戦況を見守る。その顔は、苦虫を噛み潰したようなものになっていた。
***
「〜〜〜〜!!」
複数の悲鳴がざわめきとなって、空から降ってくる。その中に特徴的な人影を見つけ、スザクはハッと目を見開いた。
大きな身体。大きな顔。ふわふわと膨らんだアフロヘア。そこにちょこんと乗る王冠。それが誰か分かった瞬間、スザクの身体中の血液がグワッと熱く巡り出した。胸が高鳴る。手足に力がみなぎる。高揚感が背中を駆け上がる。
――あの人こそ、今日まで待ち望んでいた人。人体を内部から改造する事ができる、人体のエンジニア! おれが……私が17年間目指し続けた目標を叶えてくれる、奇跡の人!
「見つけたァ!」
スザクの頬が紅潮し、目が光を当てた宝石よりも輝く。かかってくる海兵たちをなぎ倒しながら、スザクは割れた氷の方へと全速力で走る。そのテンションの上がり具合は、黄猿と戦うマルコを見ていたときとほぼ同じだった。
「エンポリオ・イワンコフ殿! あなたにお会いできる日を、ずっと待ちわびていました!」
男が大剣を振り回す。強い風圧と斬撃が海兵たちをなぎ払い、イワンコフは彼と1対1で向き合う体勢になった。
「アラいい男」と思いつつも、とっさに身構えるイワンコフ。そんな彼女に対し、男は宝石のような赤目を爛々と光らせて、イワンコフを見つめている。そして勢いよく、上体を90度に倒して頭を下げた。
「初めまして! フォレスト冒険団船長のスザクと申します! おれを女の子にしてくださいっ!」
「スザク……! ヴァナータが、あの!?」
「あの?」
インペルダウンから出てきたばかりで、初対面のはずのイワンコフが、自分のことを知っているらしい。そのことにスザクが首を傾げると、イワンコフはハッとしたように口をつぐんだ。そして真面目な顔つきになり、スザクの目を真っ直ぐに見つめ返す。
「……ヴァナタ、今ここがどういう状況か、わかってんの?」
「もちろん。自分も相手もいつ死ぬか分からない。だからこそ、おれは……私は、本来の性で戦いたい。そして大切な人たちの大切な人ごと、全部守って、生き残りたい」
奇跡は諦めない奴の頭上にしか降りて来ない。それがイワンコフの持論だ。スザクの決意は心からの優しさと強欲さに溢れており、それを叶えることが、力を持つものの責任と考えているようにも見えた。イワンコフの口角が、思わず持ち上がる。
「……その諦めない目。いいじゃない。わかったわ! "エンポリオ・女ホルモン"!」
鋭く伸びた爪が、ぶすりとスザクの脇腹に刺さる。その途端、2mあった背丈は20cm程縮み、彫刻のように引き締まった身体は柔らかく丸みを帯びた。しなやかに腰がくびれ、腕と足はすらりと細くなっていく。褐色の肌は透き通るような白に変わり、大きな目は長いまつ毛にふちどられた。
「……ッシャアアア!」
雄叫びを上げたその声は、女性にしか出せないソプラノ。ぶかぶかになったズボンのウエストを、ベルトで締め直し、"彼女"は満面の笑みを浮かべていた。
「ありがとうございます! この御恩、一生忘れません!」
深々と丁寧に頭を下げ、軽やかに敵の中へ飛び込んでいく。その後ろ姿を見送りながら、イワンコフはぽつりと呟いた。
「……驚いたわ。本当にこの海で、生き延びていたなんて」
思い浮かぶのは、短い黒髪と金色の目を持つ、とある仲間の姿。古参メンバーの1人であり、潜入等の隠密に長けた人物。
「あのキャンディーガールが、スザクなのね。革命軍のメンバー、『リベルテ』が育て上げた……王の器」
***
海賊も海兵も動けず、ただその戦いを眺めるしかなかった。
「何だ、あの2人……」
「次元が違う……!」
目にも止まらぬ速さで、剣と槍がぶつかり合う。ときおり火花が散るその光景は、自然の脅威にも似ていた。ただの人間が立ち入ることを許さないような、圧倒的な強さがそこにあった。
「……でもあの子……、泣いてないか?」
1人の海兵が、恐る恐る呟く。世界最強の剣豪であるジュラキュール・ミホークと、互角に渡り合う槍使いの少女。この場にいる誰よりも、小柄で愛らしい彼女の周りに、きらりきらりと透明な光の粒が舞う。
「〜〜〜〜〜〜!」
彼女の大きな藍色の目には、涙が溜まっていた。ときどき耐えきれないように、ポロポロと玉のような雫がこぼれ落ちる。懸命に歯を食いしばり、タタンはミホークだけを、潤む視界に映していた。
(この人怖いよ〜! スザクさん助けて〜〜!)
心の中で船長に助けを求めつつ、タタンの体は俊敏に動き回る。ちぐはぐな様子で戦い続けるタタンを、じっと見つめて、ミホークは一度攻撃を止めた。
「その強さ。積み上げたものではなく、天から授けられたものか」
自分に怯え、震えている。しかしその動きは異様に洗練され、反応速度も優れている。目がいいのか、それとも相手を強く恐れるからか。相手の一挙手一投足を注意深く見ており、そこから次の動きを予測する力もある。
「弱き心を持つ者よ。不相応な強さで、何を成す。何を望む」
再度、黒刀を構え直す。切っ先を向けられながら、タタンはうつむいて唇を噛んだ。次に彼女が顔を上げたとき、ミホークの目が少しだけ見開かれる。彼女の目は相変わらず潤んでいるが、その表情には、岩のように揺るがない覚悟が宿っているように見えた。
「……大切な人たちを、全員守ります!」
「……面妖な娘だ」
強者でありながら、戦いに怯えている。なのに逃げず、諦めることもしない。自身の強さを、自身のためではなく、仲間のために使おうとしている。弱さと強さが表裏一体となっているような少女だ。
――自分は弱いって、ずっと思ってた。
タタンの心の中に、重石のように沈んでいた自己評価。虚弱でひ弱で、何にもできない失敗作。誰の記憶にも残らないのは、仕方ないこと。そんな取るに足らない存在だ、と。
――でも、スザクさんたちが認めてくれた自分を、自分が台無しにしたくない!
可愛くて強い。かっこいい。大事な末っ子。仲間たちがかけてくれた言葉は、いつしかタタンを強くしてくれた。彼女たちのためなら、怖いことも辛いことも、頑張って乗り越える。そう強く思うようになった。
タタンが槍を構え直す。そのときミホークの目が、彼女の後方を捉えた。
「……麦わらか」
ぽつりと呟き、ミホークが走る。横を通り過ぎていった彼を視線で追うと、その先には処刑台へと走る少年がいた。彼の首で、あご紐がつけられた麦わら帽子が忙しなく跳ねる。
(ダメダメダメそっちに行かせちゃダメ!)
慌てながら、タタンもミホークたちを追いかける。ルフィの邪魔はさせられない。ミホークの前に割り込むように、体を滑り込ませて、タタンは槍を振った。ジジジッ、と黒い火花がほとばしる。
「"カムサリ(ちょっと強めバージョン)"!!」
さきほど海兵たちを吹き飛ばしたときよりも、強めの衝撃波。自分より17cmくらい低い彼女を見下ろして、ルフィはもともと丸い目を更に丸くした。
「誰だお前!?」
「味方です!」
「そうか! ありがとう!」
すたこら駆けていくルフィ。その背中を見送りながら、タタンの中にじわじわと感情がにじみ出る。驚きと少しのワクワク感。自分でも知ってる主人公と、ちょっぴり会話ができた感動。
すごい、本物のルフィだ。聞き慣れた声優さんの声だ。すごい。
体がうずうずして、ぴょんとその場で飛び跳ねる。そのとき遠くにある、山のような氷壁が、横一文字にスパッと切られた。首が取れそうな勢いで振り向くと、ミホークがこちらへと歩いてくる。
「わァ……」
大きな氷が、一瞬で切られて砕けた。怖い。半分泣きながら、タタンは槍を構える。黒刀が振り下ろされたその瞬間、2本の剣がそれを止めた。
「ここはおれに任せな。お嬢さん」
現れたのは、シルクハットと長い口ヒゲが特徴的な大男だ。このダンディなおじさまは誰だろう、と首を傾げたタタンに対し、ミホークが口を開く。
「白ひげ海賊団、5番隊隊長。"花剣のビスタ"」
「お初に、"鷹の目のミホーク"。おれを知ってんのかい」
「知らん方がおかしかろう……」
かけん。びすた。タカノメ。みほーく。どれが本当の名前だろうと思いながら、タタンはつい立ち止まって2人に見とれた。特に助太刀してくれたおじさまの、花吹雪のように飛ぶ斬撃が美しい。
このまま2人の戦いを眺めて勉強したいが、今はそんな余裕は無い。タタンは今すべきことを思い出し、とことこ走り出した。
***
「こちらコットン。10時の方向からパシフィスタ接近中」
「こちらフレア、対処します!」
1つ結びにした淡い茶色の髪をなびかせ、白いコックコートを着た女が走る。通信機代わりの小型電伝虫に返事をしたフレアは、ポケットに素早く電伝虫をしまった。もう片方の手には、包丁に似た形状の刀が握られている。
近づいてくるのは、鉄以上の硬度を持つ、6m以上の人間兵器。王下七武海の1人である、バーソロミュー・くまと瓜二つの存在。2階建てのマンションのような大きさを前に、フレアは地面を蹴って飛び上がった。
「"乱切り"!」
刀が黒く染まる。斜めに刃を入れるような、不規則な斬撃が、パシフィスタの左半身をバラバラにした。ギギギ、と軋むような音を立てて、パシフィスタがフレアに手のひらを向ける。光が集まる前に、フレアは再び刀を振りかぶった。
「"小口切り"!」
レーザー光線が撃たれる直前、パシフィスタの腕が切り落とされる。端から同じ幅で切られた部位が、がらがらと音を立てて転がった。機能停止したことを確認してから、フレアはため息をつく。
「……ごめんね」
パシフィスタが作られた経緯を思うと、複雑な思いが胸をかすめる。しかし、ここは戦場。敵に同情している暇は無い。それにフレアには、何より譲れないものがあった。
高く、遠い位置にある処刑台。目視で見ることはできないけれど、あそこにエースがいる。そう思うだけで、身体の芯が燃え上がるような、今すぐあの場所に駆けつけたくなるような衝動が込み上げる。つい手を伸ばすが、届くことは無い。
「……あんなに遠かったのにな」
紙の向こうに隔たれた世界。手を伸ばすことも、助けに行くことも叶わなかった世界。その世界に、今、自分は存在している。この地を踏んでいる。
白ひげ海賊団の援護をするために、フレアは刀をしっかりと握りしめて、駆け出した。
***
海軍大将・サカズキによる謀略。それに乗せられた大渦蜘蛛スクアードが、白ひげに刃を向ける。しかし『命の水』で体調が回復していた白ひげに、彼の刃が届くことは無かった。
「海賊なら! 信じるものはてめェで決めろォ!!」
「おれと共に来る者は、命を捨ててついてこい!」
世界最強の男が動き出す。しかし海賊たちの行く手を阻むように、厚い氷を押し上げて包囲壁が姿を現した。更にサカズキが引き起こした"流星火山"の影響で、足場となっていた氷が溶けていく。
「『ギリシャ神話』、"ミダス・タッチ"!」
セイラが叫び、両手のひらを氷に当てる。すると瞬く間に、氷や溶けた海水が輝く黄金に変わり、強固な足場を作り出した。
手でふれたもの全てを、黄金に変える力。更に金が溶ける温度は1064度。通常であれば、650〜1300度の範囲にあるマグマの温度にも、まだ耐えられる可能性がある。しかし、セイラは油断せずに、新たな効果を発動させる。
「『雪女』と『雪の女王』」
セイラの吐く息が白く染まり、身体中に霜が降りる。まとう服が、ふわりと裾が揺れる真っ白なドレスに変わり、その上に雪でできた純白の毛皮が現れた。ふさふさの毛皮にくるまれたセイラは、しなやかな腕を上に伸ばす。
「"氷雪魔法"」
凍てつくような吹雪が上空に巻き起こり、赤黒い拳のような火山弾を冷やしていく。やがて火山弾は、白砂糖をまぶしたように雪に包まれ、粉雪となって空を舞った。幻想的な光景に、海賊も海兵も一瞬だけ、現状を忘れる。
「あらら……。おれと能力被ってんな」
「……防いだか。邪魔な女じゃのう」
クザンとサカズキが呟く。その視線の先には、雪よりも白い女が金色の地面に立っていた。彼らの視線に気づいたように、彼女は微笑んでみせる。
(あとは、パドルシップが来る前に、"ミダス・タッチ"の効果を解除しないとね)
今後の展開を思い出しながら、セイラは海軍大将たちを見上げた。彼女にとって、海軍大将2人――特にサカズキには、色々と思うところがある。前世で1人の読者として、物語にふれていたとき。白ひげと白ひげ海賊団に、サカズキがした仕打ち。更に今世で、オハラに対して彼が行った非情な行動。
「オヤジ様たちの船は、壊させないわよ」
聖母のように柔和な笑みの下には、永久凍土のような敵意が隠されていた。
***
戦いのさなか、とうとう寄る年波に抗えず、白ひげが膝をつく。それを見逃さずに、サカズキはマグマの拳を、白ひげの胸にぶつけた。海賊たちの間に動揺が走り、その動揺は彼らの注意を鈍らせていく。
1番隊隊長のマルコが、ボルサリーノの攻撃で負傷。更に3番隊隊長のジョズが、クザンによって半身を氷漬けにされたそのとき。大将2人の前に、それぞれ人影が飛び込んだ。
「おやァ〜? お前、男じゃなかったかい?」
「男でも女でも関係ない。私は私だよ」
海楼石の手錠をかけられたマルコを庇うように、立ちはだかっていたのは、1人の女だ。腰に届きそうな黒髪が、天使の輪を描くように艷めいている。男物の服をまとっているが、その体格は明らかに女性。自分の身長くらいありそうな大剣を構え、ボルサリーノを睨みつけている。
「『フォレスト冒険団』船長のスザクだ!」
その容姿と服、そして武器から判断したのか、どこからともなく声が上がった。それに続くように海賊側から、歓声と声援が沸き起こる。
「まさか、白ひげ海賊団の味方をするとはねェ〜……。お前たちはこれまで、平和を守るために、海賊を倒してきたんじゃねェのかい?」
「さっきも言ったでしょ。誰に手を貸すかは、私たちが決めるよ」
「それで犯罪者に手を貸しちゃあ、世話が無いねェ〜〜」
彼の指が光り、レーザービームが飛ぶ。それをスザクは大剣でさばき、打ち返した。武装色の覇気をまとったその大剣は、スザクの愛刀でもある名刀「サザンクロス」だ。
「どこまで守れるか、知らねェけども。海賊には倒れてもらわないとねェ〜。正義が勝つための、犠牲になってもらわんとォ」
「それ、平和のための尊い犠牲ってこと?」
「そうとも言うねェ〜〜」
「そうはさせない。私は、私の大切なものを、1つもこぼさず守ってみせる」
「おォ〜……。随分と夢見がちで、強欲な考えだねェ」
「強欲上等! それが私の考える、『
スザクが前世で読んだ漫画で、怠惰の罪を受けた、妖精族の王も言っていた。「大切なものを全部守れたら、それが一番素敵じゃないか」と。
自分の欲しいものも、仲間の欲しいものも、まとめて手に入れる。大いなる理想を描け。それに手を伸ばせ。無法者のように望め!
「スザク……!」
後ろで守るべき人の――マルコの声が聞こえる。その声はスザクの全身に、戦う力を与えてくれた。後ろにマルコさんがいるなら、なおさらかっこ悪い姿は見せられない。それに、もうこれ以上、彼を傷つけさせない。
勢いよく踏み込み、大剣を振りかぶる。その気迫にボルサリーノが、自身の体を光に変える寸前、スザクは大剣で彼を殴り飛ばした。
「ところでさ……、1度ならず2度までも、よくも私の大切な人を傷つけてくれたね」
光の集合体になりながら、離れた場所に吹き飛ばされたボルサリーノ。彼を見据え、大剣を構え直しながら、スザクは口を開く。いつもは素直な明るさで輝いているその目は、赤いガラスのような鋭さと、炎のように揺れる怒りを映していた。
「あと2回、この攻撃受けてもらおうか」
スザクが、恋はいつでもハリケーンを体現するような戦い方をしていたのと、ほぼ同時。クザンの目の前で、白い毛皮とドレスが揺れた。
「『北風と太陽』、"太陽熱"」
セイラが唱えると、ジョズの頭上に陽光が現れ、ぽかぽかと彼を温めていく。その熱によって、彼の動きを止めていた氷が、少しずつ溶けていった。
「あららら……。間近で改めて見ると、かなりマブいねーちゃんじゃないの。今夜ヒマ?」
「あら、能力によらず熱烈なお誘いね」
パキパキと音を立てて、飄々と口説き出すクザンの体が氷に変わる。微笑んで言葉を返しながら、セイラは右手をそっと挙げた。氷の能力を持つ者同士が、ぶつかる。氷結による冷気が辺りを包んだ頃、セイラが唱えた。
「『銀河鉄道の夜』、"サソリの火"」
彼女の左手から、炎が勢いよく吹き出す。ルビーよりも赤くすきとおった、リチウムよりも美しい炎。冷やされた空気が膨張する気配を感じ、クザンのこめかみに冷や汗が流れる。
「"膨冷熱波"!」
技のイメージをより鮮明にするために、セイラは前世で読んでいた漫画から、技名を借りた。最高のヒーローを目指す少年の物語。それに登場する、氷と炎の2つの力を持つ少年の技だ。
全身氷に変化したクザンの体が、引き起こされた爆風によって砕け散る。やがて青く澄んだ破片が集まり、元の姿を形成した。
「……こりゃあ、思ってたより厄介だな」
大技で無理押しするだけじゃない。圧倒的な手数の多さと、それを組み合わせて使う柔軟な発想力。
物語を読んで知識を蓄えなければ、使いこなすことができないトショトショの実。荒くれ者が食べればハズレにしかならないその実を、こうも完璧に使いこなせる奴がいるとは。
感心と警戒を宿した目で、クザンはセイラを見つめる。彼女はにこやかな表情を崩さないまま、大将の足止めを再開した。