ハンバーグを作ろう
今日の夕飯はハンバーグにしよう。
気の向くままに、私は本棚から料理本を引っ張り出した。それは、手が汚れるからと、今まで遠ざけていたメニューだった。
用意するのは、しばらく冷凍庫で出番を待っていた合い挽き肉(確か170gくらい)。冷蔵庫に残していた玉ねぎ(2分の1)。一人暮らしを始めてから、1度も封を開けたことが無かったパン粉(大さじ3杯)。買ってきた牛乳(大さじ2杯)。卵(1個)。塩(小さじ2分の1)。コショウ(適量)。
まずは玉ねぎをみじん切りにする。やり方をスマホで調べてみたが、よく分からなかったので、ざっくりくし切りにしてからサイコロ状にする感覚で切った。あとは細かくなるように、特に大きい欠片に積極的に包丁を入れる。
何か細かいのと粗いのとまちまちになった。
しかも玉ねぎの成分が目にしみて痛い。
手を洗ってから目も洗う。それからフライパンに油をひいて、玉ねぎがしんなり透き通るまで炒める。
その間に、パン粉を牛乳に浸しておいて、冷蔵庫に移動させておいた挽肉をラップにくるんで、電子レンジに入れて解凍する。
玉ねぎがいい感じになったら火を止めて、解凍した挽肉の水気をキッチンペーパーである程度取って、ボウルに移す。そこに塩を入れ、コショウ(塩も入ってるやつ)も加える。コショウはまあこんなもんだろうと、全体的に満遍なくかけた。
手を洗って素手でこねる。手がちべたい。やわらかい肉に混じって、ひんやりと固い感触がある。解凍したと思ったら、肉の中心まで熱が届いてなかったらしい。仕方ないのでこのままこねる。パンをこねる感覚で、押し込むようにこねる。すると粘り気が出てまとまってきた。
次に牛乳に浸しておいたパン粉、さっき炒めた玉ねぎ、卵を追加。挽肉がついた手でやるので、時間が少しかかる。玉ねぎは大さじ用の計量スプーンでボウルに移した。
また素手でこねる。その時思った。
何かこれ、水分多くねーか。
何だかべちゃりとする。卵の白身のせいか。それとも牛乳大さじ2杯にしたのがいけなかったのか。それとも肉の水分を取り切れてなかったか。
首を傾げながらこね続ける。確かお母さんは、こういう時パン粉を追加すると言っていたような。とりあえずこのままこねてみよう。
意外とまとまった。ぺちゃ、ぽよ、とするけど、案外まとまった。パン粉は追加せずにこのままやってみようと思う。失敗したら次に活かせばいいのだ。
大体2等分にして、両手の間で受け渡しをするように空気を抜く。これでほんとに空気抜けてんのか、と疑いながら、強めに片方の手に叩きつけると、形がひしゃげる。楕円形に整えつつ、べちべちべちと作業を繰り返し、真ん中をくぼませて1つできあがり。
そうしてできたのは、大きめサイズが2つと小さいサイズが1つ。
フライパンに油をひいて、温まってからハンバーグのタネを乗せる。じゅわじゅわと音を聞いて、ほっ、とひっくり返し、両面に焼き色をつけてから蓋をする。
その間、ボウル等を流しに移してスペースを作ったり、適度にTwitterを眺めたりして待つ。
そろそろかな、と蓋を持ち上げてひっくり返してみると、いい感じに濃い焼き色がついていた。そのまま蓋を閉じて片面も焼き上げる。
フライ返しの端で中心を刺してみると、透明な肉汁でなく、どろりと白くにごったアクのようなものが流れた。え、これまだ火通ってないってこと? フライ返しでハンバーグを押してみると、固めの感触が伝わる。念のため、もう少し蓋をして火を通してみる。
後で知ったのだが、白いアクのようなものは、ドリップ(肉汁)のタンパク質が熱で固まったものらしい。白もしくは透明な肉汁が出てきたら焼き上がりのサインだとか何とか。
空気はちゃんと抜けていたようで、途中で割れることもなく、しっかり綺麗な形のハンバーグが焼けた。
この調子で残りのタネも焼く。お好み焼きしかり、ホットケーキしかり、混ぜて焼くタイプの料理は思ったより時間がかかる。その分美味しい料理が待っているんだけど。
大きめハンバーグとミニハンバーグをお皿に乗せ、ざくざくと切ったキャベツを付け合わせにする。
冷凍保存しておいたご飯を電子レンジで温めて、お茶碗に盛る。電気ポットで沸騰させておいたお湯で、インスタントのみそ汁を入れる。
残ったハンバーグは冷凍保存するために、しっかり冷ましておく。
今日の夕飯の完成だ。
料理を運び、「いただきます」と手を合わせ、ハンバーグを箸で半分に割る。赤いところは全くない。予想通り、しっかり焼けてるみたいだ。
キャベツを食べてから、ハンバーグを端から切って、口に運ぶ。ソースが無くても大丈夫なくらいの、塩加減とコショウの風味。これはご飯が進む。
「ハンバーグうめぇ〜」
思わず感想が口からこぼれた。生まれて初めて1人で作り上げたハンバーグ。ご飯と交互にぱくぱくと食べる。
親子丼を初めて作った時も、全部食べ切るのが惜しいくらいに美味しく感じた。自分で作ったという達成感が、より特別に美味しく感じさせるのかもしれない。
こうしてまた1つ、私の料理のレパートリーが増えた。
次は鶏つくねにチャレンジしてみるのもいいかもしれない。