『小公女』について未熟ながら論じてみた



物語には起承転結があるが、『小公女』には「転」の部分が2つあると考える。1つめはセーラの父親の訃報で、生活が一変するところ。2つめは、学院の隣に引っ越してきた紳士が、セーラの父親の友人であることと、セーラを探し続けていたことが発覚するところである。

まとめてみるとこんな感じだろう。


起:セーラが寄宿学校に入学するために、インドからイギリスのロンドンへやって来る。人形のエミリーとの出会い。父親との別れ。
承:ミンチン女子学院での、特別寄宿生としての生活。アーメンガード、ロッティ、ベッキーとの出会い。
転:11歳の誕生日に、父親の訃報とダイヤモンド鉱山事業破綻の知らせが届く。生活が一変する。
承:下働きとしての生活。パン屋でのアンヌとの出会い。屋根裏部屋の変化や届けられた衣類等、こき使われていた日々に魔法(という名の人の手)が入り込む。
転:隣の家から逃げ出してきた猿を返しに行く。家に住む紳士がセーラの父親の友人だと発覚する。
結:セーラはベッキーと共に、キャリスフォード氏のもとで新しい生活を始める。アンヌとの再会。


1つめの「転」は分かりやすい。11歳の誕生日という喜ばしい日に届いた、最愛で唯一の身内の不幸。対照的な2つを持ってくることで、まるで天国から地獄に叩き落とされたように明暗がはっきりし、印象深くなる。

作者のバーネットは、「転」の部分を2つ作ることで、セーラが送った人生の波乱万丈さを表現したかったのではないかと私は考える。

幸福と不幸。両方を味わったセーラは、心身共に成長していく。お金持ちだった頃は知らなかったことを、下働きになったことで知る。
そのことが影響したのか、以前自分にパンをおまけしてくれたパン屋のおかみさんに会いに行き、「自分がお金を払うので、お腹を空かせている子どもにパンを恵んでほしい」と頼みに行く。

自分が辛い思いをしたからこそ、もともと持っていた、誰かのために何かをしようという気持ちが強くなったのだと考えられる。
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