奴隷の少女と夜の王
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ジャラジャラと鎖を引きずる音が、暗い森の中で響いていた。
ぽっかりと浮かんだ満月が、音の主の姿を照らす。ボロボロの衣服。短い干し草のような髪。やせ細った傷だらけの手足には、外れることの無い枷と鎖が繋がれている。
(傷があるとね。あったかいんだよね)
小枝や葉で擦り傷を作りながら、少女はそんなことを思う。寒いよりも、暖かい方が幸せだ。悪くない。悪くない。
歩いていたとき、一陣の風が吹いた。何気なくその方向を見上げると、そこには小さな月が2つ浮かんでいた。空の丸天井にあるものと、全く同じ輝きのもの。そんな目が、じっとこちらを見つめている。
(きれい)
木の葉の闇に紛れて、どんな姿かたちをしているかは、よく分からない。それでも、背筋がぞくぞくするような美しさを感じた。
(男の人、違うかな。人間違うかな)
「ねーねー、きれいなおにぃさぁん。あたしのこと、食べてくれませんかぁ……!?」
お月様と同じように、届かないところにいる彼へと、手を伸ばす。出来るだけ大きな声で言うと、湖面に映る月のように、その双眸がゆらりと揺れた。
「失せろ。おれは人間が嫌いだ」
低くて、氷みたいな声。声が聞けて嬉しくて、少女はにこにこ笑う。それに、人間が嫌いなんて、気が合う。少女も、人の形をしたものが嫌いだった。
「だいじょうぶだよー。あたし人間ちがうし。あたし家畜だよぉー」
「だからー食べてよお願いだよー」
歌うように言いながら、両腕を開けるだけ開く。手首を繋ぐ鎖が、いやに響く音を立てる。闇がざわめく夜で、月がきらきら光っていた。