現・鳴柱の物語
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俺、今すごい手足が短いの。
薬をたくさん飲んで、お日様の光たくさん浴びて治療中。
そんな時、蝶屋敷にお見舞いに来てくれた2人がいた。
「善逸、五体満足で良かった」
「姉ちゃーーーーーん!」
俺の姉弟子で、じいちゃんの養子(というか養孫?)でもある、幸音姉ちゃん。女の子特有の柔らかい体に、遠慮なく抱きつくと、姉ちゃんは「よしよし」と俺の頭を撫でてくれた。
姉ちゃんの胸に耳を当てると、トクトクと心臓が動く音が聞こえてくる。あと、町の時計屋で見かけた
姉ちゃんの音は大好きだ。聞いてると、すごく落ち着くから。
「いつまで幸音に引っ付いてんだカス」
「痛い! 兄貴ちょっとは俺に優しくしてよ! 俺、怪我人なんだよぉ!?」
「知るか。先生と俺であんだけ稽古つけたのに何怪我してんだこの野郎。ちょっとは強くなれ。幸音を心配させんな」
獪岳が、俺と姉ちゃんをベリィッと引き剥がす。獪岳は俺の兄弟子で、俺に対して当たりが強い。でも、その言動はいつしか、背中を押してくれるような音を立てるようになった。
昔の兄貴は、いつも不満の音を立ててた。
心の中の幸せを入れる箱に、穴が空いてた。
その穴を気づかせて、兄貴自身で塞ぐように促してくれたのは、他でもない姉ちゃんだった。
あの時のことは今でも忘れない。
後にも先にも、姉ちゃんが兄貴に殴りかかったり、姉ちゃんと兄貴が感情と本音をむき出しにして、大乱闘したりしたことは無かったからだ。
あまりの剣幕に、俺が止めに入ったら死ぬ! と思って、泣きながらじいちゃんを呼びに行ったし。
その後、「特別だと認められたい」っていう兄貴の本音を聞いたじいちゃんが、雷一門会議を開いて、たくさん話し合った。
あれから兄貴は変わった。
目に光が宿ったし、俺の修行を何だかんだ言いつつ見てくれるようになったし、俺たちの中で1番強い姉ちゃんのことを素直に認められるようになった。
今は兄貴も、白い三角形の模様がある羽織を着ている。じいちゃんがくれた、じいちゃんが着てるのと同じ柄の着物。姉ちゃんのは藤色で、兄貴のは藍色。ちなみに俺のは黄色だ。
おそろいって良いよな。何かこう、家族みたいに、一体感がある気がする。
「そうだ。今日はキャラメルを持ってきたんだよ。善逸にもあげる」
「姉ちゃんありがとう! 大好き!」
「幸音、あんまり甘やかすなよ」
「獪岳も、もうひとつ食べる?」
「そういう事じゃねえ……、あーもう、食う」
姉ちゃんがふんわり笑って包み紙をむき、俺の口の中にキャラメルをころんと入れる。それから兄貴にも、俺にしたのと同じやり方でキャラメルをあげた。
姉ちゃんが手ずからアーンしてくれるなんて! 初めて手足が短くなって良かったと思ったよ!
炭治郎と伊之助が帰ってくるまで、久しぶりに弟子水入らずで話をする時間は、幸せの音が絶えず鳴り響いていた。