現・鳴柱の物語
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満月が美しい夜だった。
ぽーんと弾む
信じられないというように、目を見開く鬼。俺は、あまりにも静かで呆気ない最後を、口をあんぐり開けて見ることしか出来なかった。
唾を飲み込むことすら
「雷の呼吸 壱ノ型
光の亀裂の後に続く雷鳴のごとく、技名を言う声が空気を震わせた。歳若い少女の声だった。
すらりとした体を覆うのは、
今まで姿を直接見たことは無かったが、その特徴的な色と羽織から、すぐに分かった。
鬼殺隊の中で最も位の高い剣士。本来9人で構成される柱の中で、異例の10人目である女性隊士。
"鳴柱"────桑島 幸音様だ。
「立てる?」
威圧感の無い声が、優しく尋ねる。
突然助かった驚きで、先程まで忘れかけていた傷の痛みが蘇り、俺は何とか「いいえ」と答えた。鬼の攻撃のせいで、足を痛めている。折れてはいないだろうが、捻っているだろう。
「……そう」
それだけ言った幸音様は、俺に歩み寄り、俺の背中と膝の下に腕を回して持ち上げた。
身体が宙に浮く感覚に、ぱちりと瞬きをする。
次の瞬間、彼女は俺を抱き上げたまま、一直線に飛んでいく矢のように走り出した。
「!? ああああの、鳴柱様!?」
「喋らない方がいい。舌を噛むよ」
男1人を抱えているのに、それを微塵も感じさせない速さで、彼女はどんどん進んでいく。女性に助けられるなんて、男として情けない。というか、この体勢、普通は男が女性にするものでは……?
羞恥で涙目になる俺をちらりと見て、彼女はこう言った。
「大丈夫。絶対助ける」
神秘的な月明かりの下。真剣な顔で前を見据えて告げられた、とんでもなく男前なこの言葉に、俺はどうしても胸をときめかせずにはいられなかった。