執行者がもたらすもの
常にアガリと行動している、キャタナイン・テイルズ(通称キャシー)。普段は身長140cmで、10代前半の少女のように見えるが、実は男性である。身長203cmで筋肉隆々の姿になるのは、牛乳を飲むことで本来の姿に変身した時だ。
「無知なガキめ。20世紀生まれのヒヨッ子め。この教鞭、欲しければいくらでもくれてやる。――これは女装ではない。正装だ!」
そんな彼が身につけているのは、スカートではない。
「あれはスカートじゃなくてキルトだな」
「キルトって何すか三ツ谷くん」
「キルトっていうのは、スコットランドの伝統衣装だぞ。スカートみたいな形で、タータンチェックの柄が通常なんだ」
「男なのにスカートはくんすか!?」
「あはは。まあ今の時代(2005年)じゃ、タケミっちみたいな考えの奴が多いだろうな」
「三ツ谷くん。何か今のセリフ、メタっぽいっす」
「軍隊でもキルトは着られてたらしいから、キャタナインはそこをリスペクトしてるんだと思うぞ。ちなみにタケミっち、タータンは柄じゃなくて織物を意味するって知ってるか?」
「えっ!? そうなんすか!?」
「タータンは、色が違う糸を一定の配分で交互に編み込んだ、格子柄の一枚布のことなんだ。これが俺たちが呼んでるタータンチェックなんだぜ」
「さすが手芸部部長の三ツ谷くん。詳しいっすね!」
「タータンのチェック柄は氏族を表してて、それぞれの氏族によって使える色数が決まってたらしい。先祖代々受け継がれてきた柄を、自分も着るってのは、ロマンがあるよなー」
「なんか特服と似たものを感じるっすね。特服って、先輩から後輩に受け継がれることもあるんすよね」
「キルトも特服も、自分がどこに所属してるかが分かる一点物って言ってもいいよな。俺が仕立てた特服、大事にしてくれよ。タケミっち」
「うす!」
ちなみにキルトは、もともと下着をはかないで着るものだと言われていることを、三ツ谷は黙っておいた。世の中には知らなくていいこともあるのだ。