常闇くんとメデューサ少女
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彼女とは同じ円扉中学に通っていた。初めて会話をしたのは、2年生になったある日の昼休み。
学年が上がれば学校にも慣れる。
居心地のよい場所も探すようになる。
その日の俺は、裏庭の木の上にいた。心を落ち着かせられる静けさに身をゆだねていたとき、草を踏む微かな音がした。
下方を見やると、月光のような銀髪がさらりと揺れる。特徴的なその色に見覚えがあった。
クラスメートの、蛇ノ女 瞳。
彼女はきょろきょろと周りを見てから、木の根元に腰を下ろす。
再び訪れる静寂。しばらくして俺が木から降りたとき、蛇ノ女は小さく寝息を立てていた。膝上には、読みかけらしい文庫本が乗っている。
穏やかな寝顔に起こすことをためらうが、放っておく訳にもいかない。俺は彼女の薄い肩に手を添え、軽く揺すった。
「……起きてくれ」
「ん……」
長い前髪の隙間から見える、閉じた瞼がゆっくりと開く。寝ぼけているのかぱちぱちと瞬きをした後、金色の目が見開かれた。
「!!」
「……ど、どうかしたのか」
瞬時に両手で顔を覆い、うつむいてしまう蛇ノ女に問いかける。すると、消えてしまいそうに儚げな声が返ってきた。
「……め、目を見ないで……。私の個性は、目を見た人を石に変えちゃうから……」
怯えが混じった告白。それを聞いたとき、教室で常にうつむいて、気配を殺しているような彼女が脳裏に浮かぶ。
「……そうか。だから……」
腑に落ちてそうつぶやいたとき。俺の背中からひょっこり出てきた黒影が、彼女の顔をのぞき込むように擦り寄った。
「わ……」
「俺の個性の、黒影だ」
顔を上げて驚いた様子の彼女に説明すると、彼女の表情から不安が少しずつ解けていくように見えた。
「……なでていいですか?」
「ああ」
ほっそりした指先が、黒影の頭をなでる。嬉しそうに目を細める黒影につられたのか、蛇ノ女がふわりと顔を綻ばせた。
「……かわいい」
頬を染めてそうつぶやく彼女の方が愛らしく見えて、息を呑む。それと同時に気づいたことがあった。
「……大丈夫そうだな」
「?」
「オレモ踏陰モ、石二ナッテナイ!」
黒影の言葉に蛇ノ女は慌てた様子で目を覆うが、やがて恐る恐る手を離した。
「……本当だ」
「……また、こうして話さないか?」
彼女のことをもっと知りたくて。宝石のように美しい金色の目を見つめ、俺はそう提案した。