付喪神と一緒
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ついに梅雨の季節になってしまった。
私はあまり雨が好きではない。
というかあまり好きではない人の方が多いのではないだろうか。
でも私以上に雨に対して過敏になっている人がすぐそばに居て、最近はちょっと面倒くさい。
『だーーーっクソ!ピンピン跳ねやがる!』
「いつも跳ねてるじゃん」
『ぽん子ーーー!おまっ!ストパーかけても直らない天パになる呪いでも掛けてやろうか…』
こちらがバタバタと朝の支度をする横で、本気で何かのチカラが目覚めそうな眼力で私を見る銀ちゃんは鏡の前で不機嫌丸出しだ。
どうやらふわふわの髪が、湿気により余計にクルクルになっているらしい。
そう言われてみればちょっと増毛した?って思わなくもない。
とはいえ、もふもふしている姿は小動物のようで可愛いから、正直そのままでもいいんじゃないかと思う。
「いいじゃん天パ。可愛い」
『可愛いとか要らねーから。俺そんな歳じゃねぇから』
「えっ……あ、そうかぁ~人間じゃないから……」
相変わらず鏡の前で苛立っている銀ちゃんのことは、マスコット感覚で見ていたがたしかに銀ちゃんは人ではない。
では一体いくつなのか?と思ったが、人に年齢を聞いてもいいのか一瞬悩んでいるうちに、銀さんがポロリと年齢をこぼした。
『もう二十七だからな』
「いや若者!思ったより若者!!」
予想外の年齢に思わず盛大に突っ込んでしまったが、銀ちゃんはやれやれとわざとらしく両手を広げて顔を振っている。
そのコメディチックなジェスチャーにめちゃくちゃ腹が立つが、もうそろそろ家を出なければ遅刻してしまう。
リュックを背負うと、慌てて玄関を飛び出した。
『雨降ってんなー』
「ホントだねぇ。濡れちゃうのヤダなぁ」
酷い雨ではないが、もうすでに水たまりができている道を気をつけて歩くと、前を歩く神楽ちゃんと妙ちゃんが目に入って合流した。
どこで買ったんだろうかという不思議な柄の傘を持つ妙ちゃんと、赤一色にうさぎの絵が描いてある傘を持つ神楽ちゃんは、相変わらずのサラサラストレートヘアだ。
「おはよう~。雨なのに二人とも髪の毛どストレートだねぇ」
「おはよう。ぽん子ちゃんは雨で跳ねてるわねぇ」
「毛先だけ跳ねてて可愛いアル!」
『何このトリプルストレート娘の集まりィィ!爆ぜろ!アフロになれ!』
まだ苛立っていたのか、肩に乗っている銀ちゃんはふわふわの毛を逆立てながら鬼神のような顔になっている。
小さいし元を知っているから全然怖くはないが、ちょいちょい話に入り込んでくるのがややこしくて笑ってしまう。
「さっ、早く学校行こう」
「そうね」
ざわつく教室に着くと、やっと落ち着けると言わんばかりに銀ちゃんは机の端っこであぐらをかいて座った。
雨に当たっても濡れないようで、相変わらず銀ちゃんの頭はふわふわしていて触り心地が良さそうだけど、今はピリピリしているから触らない方がいいだろう。
大人しく教科書を机の中に仕舞うと、もうすぐ来るであろう銀八先生を待つことにした。
「おはよー土方くん」
「おー」
隣りの席の土方くんはギリギリになって着席すると、朝から何があったのか疲れたような顔をしていた。
そしてその髪は少ししっとりと濡れているようで、よく見たら制服も所々雨の跡らしきものが残っている。
「どうかしたの?ちょっと髪の毛濡れてない?」
「総悟のやつがちょっとな…」
「あぁ…沖田くんね……」
彼に絡まれるとろくな事がない、というのを嫌というほど分かっている私は、それ以上を聞くことは無かった。
代わりに濡れた時のためにと持ってきていたタオルを差し出すと、遠慮がちに土方くんがほんのちょっと笑って受け取ってくれた。
普段は男子といる時しか見たことがなかった土方くんの笑った顔に、レアなものが見れたかもと気分が上がった私は口元を隠しながらこっそりと笑った。
『けっ!青春かよ』
「まだいじけてる…」
そんな私たちの様子を見ていたらしい銀ちゃんは、何が気に入らないのか、いつにも増して不機嫌だ。
フンっと言いながら、土方くんの机に飛び乗った銀ちゃんは背もたれに寄りかかって座る土方くんに向かって、ずっと「天パになれ!天パになれ!」と叫んでいる。
「アホなことしてる…」
ぼそっと呟くと、ガラガラと音を立てて扉を開けた先生が教室に入ってきて、銀ちゃんはまた私の机に戻ってきた。
タイミングが良かったのか先程の呟きは聞こえていないようで、今度は筆記用具を椅子代わりに座る銀ちゃんはちょっと機嫌が治りつつあるのかその背中に先程の鬱々した感じはない。
「はーい、おはよーさん」
『あっ!!!』
教壇に立つ先生が手に持っていた日誌でトントンと机を鳴らすと、その音に反応して顔を上げた銀ちゃんが突然声を荒らげて立ち上がった。
かと思えば、先生を指さしてプルプルと震えている。
『あいつ…!めっちゃ頭、爆発してんじゃねーか!!』
「ぶふっ!」
『ちょっと行ってくる』
「あっ……行っちゃった…」
まさかの言葉に思わず吹き出してしまうが、そんな私を他所に銀ちゃんは軽快に駆け出すと銀ちゃんの頭に飛び乗ってしまった。
先程までの不機嫌はどこへ行ったのか、気だるげな先生のいつもよりフワフワになっている頭の上でご機嫌そうに胡座をかいている。
完全にコピーにしか見えない二人にふつふつと笑いが込み上げてくるが、私から声をかけられる訳もなく銀ちゃんにひたすら視線を送ってみた。
だが一瞬目があったのは先生の方で、生徒の顔を見回しただけのようなやる気のない視線はすぐに逸らされた。
まさか銀ちゃんは今日一日ああしているつもりなのだろうか?
今日一番の深いため息を着くと、土方くんが心配そうに…というよりも、不審な者を見るような目をしながら私に大丈夫かと声をかけてくれた。
梅雨が明けるまで、きっと銀ちゃんは先生の頭で過ごすのだろうな、と遠くに離れたような気持ちになってちょっと寂しい私であった。
私はあまり雨が好きではない。
というかあまり好きではない人の方が多いのではないだろうか。
でも私以上に雨に対して過敏になっている人がすぐそばに居て、最近はちょっと面倒くさい。
『だーーーっクソ!ピンピン跳ねやがる!』
「いつも跳ねてるじゃん」
『ぽん子ーーー!おまっ!ストパーかけても直らない天パになる呪いでも掛けてやろうか…』
こちらがバタバタと朝の支度をする横で、本気で何かのチカラが目覚めそうな眼力で私を見る銀ちゃんは鏡の前で不機嫌丸出しだ。
どうやらふわふわの髪が、湿気により余計にクルクルになっているらしい。
そう言われてみればちょっと増毛した?って思わなくもない。
とはいえ、もふもふしている姿は小動物のようで可愛いから、正直そのままでもいいんじゃないかと思う。
「いいじゃん天パ。可愛い」
『可愛いとか要らねーから。俺そんな歳じゃねぇから』
「えっ……あ、そうかぁ~人間じゃないから……」
相変わらず鏡の前で苛立っている銀ちゃんのことは、マスコット感覚で見ていたがたしかに銀ちゃんは人ではない。
では一体いくつなのか?と思ったが、人に年齢を聞いてもいいのか一瞬悩んでいるうちに、銀さんがポロリと年齢をこぼした。
『もう二十七だからな』
「いや若者!思ったより若者!!」
予想外の年齢に思わず盛大に突っ込んでしまったが、銀ちゃんはやれやれとわざとらしく両手を広げて顔を振っている。
そのコメディチックなジェスチャーにめちゃくちゃ腹が立つが、もうそろそろ家を出なければ遅刻してしまう。
リュックを背負うと、慌てて玄関を飛び出した。
『雨降ってんなー』
「ホントだねぇ。濡れちゃうのヤダなぁ」
酷い雨ではないが、もうすでに水たまりができている道を気をつけて歩くと、前を歩く神楽ちゃんと妙ちゃんが目に入って合流した。
どこで買ったんだろうかという不思議な柄の傘を持つ妙ちゃんと、赤一色にうさぎの絵が描いてある傘を持つ神楽ちゃんは、相変わらずのサラサラストレートヘアだ。
「おはよう~。雨なのに二人とも髪の毛どストレートだねぇ」
「おはよう。ぽん子ちゃんは雨で跳ねてるわねぇ」
「毛先だけ跳ねてて可愛いアル!」
『何このトリプルストレート娘の集まりィィ!爆ぜろ!アフロになれ!』
まだ苛立っていたのか、肩に乗っている銀ちゃんはふわふわの毛を逆立てながら鬼神のような顔になっている。
小さいし元を知っているから全然怖くはないが、ちょいちょい話に入り込んでくるのがややこしくて笑ってしまう。
「さっ、早く学校行こう」
「そうね」
ざわつく教室に着くと、やっと落ち着けると言わんばかりに銀ちゃんは机の端っこであぐらをかいて座った。
雨に当たっても濡れないようで、相変わらず銀ちゃんの頭はふわふわしていて触り心地が良さそうだけど、今はピリピリしているから触らない方がいいだろう。
大人しく教科書を机の中に仕舞うと、もうすぐ来るであろう銀八先生を待つことにした。
「おはよー土方くん」
「おー」
隣りの席の土方くんはギリギリになって着席すると、朝から何があったのか疲れたような顔をしていた。
そしてその髪は少ししっとりと濡れているようで、よく見たら制服も所々雨の跡らしきものが残っている。
「どうかしたの?ちょっと髪の毛濡れてない?」
「総悟のやつがちょっとな…」
「あぁ…沖田くんね……」
彼に絡まれるとろくな事がない、というのを嫌というほど分かっている私は、それ以上を聞くことは無かった。
代わりに濡れた時のためにと持ってきていたタオルを差し出すと、遠慮がちに土方くんがほんのちょっと笑って受け取ってくれた。
普段は男子といる時しか見たことがなかった土方くんの笑った顔に、レアなものが見れたかもと気分が上がった私は口元を隠しながらこっそりと笑った。
『けっ!青春かよ』
「まだいじけてる…」
そんな私たちの様子を見ていたらしい銀ちゃんは、何が気に入らないのか、いつにも増して不機嫌だ。
フンっと言いながら、土方くんの机に飛び乗った銀ちゃんは背もたれに寄りかかって座る土方くんに向かって、ずっと「天パになれ!天パになれ!」と叫んでいる。
「アホなことしてる…」
ぼそっと呟くと、ガラガラと音を立てて扉を開けた先生が教室に入ってきて、銀ちゃんはまた私の机に戻ってきた。
タイミングが良かったのか先程の呟きは聞こえていないようで、今度は筆記用具を椅子代わりに座る銀ちゃんはちょっと機嫌が治りつつあるのかその背中に先程の鬱々した感じはない。
「はーい、おはよーさん」
『あっ!!!』
教壇に立つ先生が手に持っていた日誌でトントンと机を鳴らすと、その音に反応して顔を上げた銀ちゃんが突然声を荒らげて立ち上がった。
かと思えば、先生を指さしてプルプルと震えている。
『あいつ…!めっちゃ頭、爆発してんじゃねーか!!』
「ぶふっ!」
『ちょっと行ってくる』
「あっ……行っちゃった…」
まさかの言葉に思わず吹き出してしまうが、そんな私を他所に銀ちゃんは軽快に駆け出すと銀ちゃんの頭に飛び乗ってしまった。
先程までの不機嫌はどこへ行ったのか、気だるげな先生のいつもよりフワフワになっている頭の上でご機嫌そうに胡座をかいている。
完全にコピーにしか見えない二人にふつふつと笑いが込み上げてくるが、私から声をかけられる訳もなく銀ちゃんにひたすら視線を送ってみた。
だが一瞬目があったのは先生の方で、生徒の顔を見回しただけのようなやる気のない視線はすぐに逸らされた。
まさか銀ちゃんは今日一日ああしているつもりなのだろうか?
今日一番の深いため息を着くと、土方くんが心配そうに…というよりも、不審な者を見るような目をしながら私に大丈夫かと声をかけてくれた。
梅雨が明けるまで、きっと銀ちゃんは先生の頭で過ごすのだろうな、と遠くに離れたような気持ちになってちょっと寂しい私であった。
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