土方くんとトッシーと私と(土方)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
バレンタインという一大イベントを不発に終えた私は、1日遅れてしまったけれど土方くんへクッキーを無事に届けることが出来た。
神楽ちゃんとお妙ちゃんに渡すついでに!と言い訳を用意して、土方くんときっと誰からも貰えなくて可哀想なトッシーにもとZ組へ届けたのだ。
その場に居合わせた沖田くんからは「オイオイ俺にはねーのかィ」と睨まれて、めちゃくちゃ怖かったけど「沖田くんは意地悪だからあげない」ときっぱり言い捨てて逃げた。
後ろでは土方くんの笑い声がしたが、沖田くんが怖くて振り向けず笑顔を見ることが出来なかったのだけがちょっとした心残りである。
そんなこんなで結局告白するどころではなくなってしまったが、結果、渡せたというだけで私は満足だ。
昨年は遠くから見ているだけだったのが、こうして普通に話せるだけでも大進歩だと思うとそう悪くは無い。
「でもこっちはもったいなくて食べれないんだよねぇ~」
手のひらの上で土方くんからもらった飴をころころと転がしながら大きな独り言をつぶやく。
もうすぐ2月が終わってしまうが、バレンタインに貰ったことで意味があったのかもしれないとか、初めて貰った飴だからなんて思うと何となく勿体なくて、未だに食べられず机の上に置いたままにしているのだ。
「でもそろそろ食べないとだよね」
意を決して包装をぴりっと破り、口の中に転がした。
ほんのり甘い味がするそれはしばらくすると溶けてなくなってしまったが、貰った時のように嬉しい気持ちでいっぱいになった。
「んっ?」
ベッドの上で転がりながら幸せの余韻に浸っていると、ぴろりんと軽快なメッセージを知らせる音がスマホから流れてきた。
のっそりと起き上がり、画面を見てみればトッシーから「ぽん子氏って欲しいものある?」とだけ届いていた。
トッシーからこんな質問が飛び出すとは…もしかしてクッキーのお礼かな?と思い至った私は正直に返信した。
「今はとくにないよ、っと」
打ち返すと即既読になり、すぐにまたメッセージが送られてきてその文面に私は思わず吹き出しそうになってしまった。
「とりあえず何でもいいから教えて」と、どストレートに明確な答えを求められてしまったのだ。
「とりあえずって…そんな言われてもなぁ…」
そもそもとりあえずって何だ。
そう思いながらも、女心というか空気を読まない文面にトッシーらしさを感じつつ私は首を傾げた。
本当にこれといって欲しいものはないのだ。
「あっ、じゃあこれでいこう」
いつも振り回されているから、これぐらいのイタズラは許されるだろうとニヤニヤしながら送信ボタンを押すと、既読はついたものの先程と違ってすぐに返事がくる様子はなかった。
―――
十四郎が珍しく僕の部屋に来たと思ったら、こたつで寝転がっていた僕をいきなり蹴り起して向かいに座り込んだ。
無言のままガン見され、めちゃくちゃ居心地が悪いんだけどと思っていたら十四郎がものすごーく言いにくそうに口を開いた。
「お前、ぽん田の欲しいもんとか知らねーの?」
その言葉に瞬時にバレンタインのお返しだ!と勘づいた僕は、ニヤニヤしながら十四郎の前でぽん子氏へメッセージを送った。
イライラしている様子を見ると、きっと僕に頼りたくなかったんだろうなぁという悲しい事実を突きつけられた。
それとは別に、ついでにある事に気づいてしまった。
「とくにないって」
「聞き出さねぇとお前の嫁がどうなるか分かってんな」
スマホから顔を上げると、トモエちゃんが十四郎の手によって今にもへし折られそうになっていて、僕は急いでぽん子氏へと慌ててメッセージを送り直した。
祈るような気持ちでぽん子氏からの返信を待っていると、十四郎はトモエちゃんをそっと元の位置に戻してくれ、僕はほっと胸をなで下ろす。
同時にぽん子氏からのメッセージが届き、目を通したあとウーンと首を傾げた。
その様子に十四郎が、何だって?と急かしてきたので正直に思ったことを伝えてみることにした。
「十四郎の好きなものを教えてってきたけど、ぽん子氏だよって送り返したらいいの?」
「はっ?!何言ってんのお前?何言ってんの?てか何言ってんの?」
「十四郎が何言ってんの?」
あからさまに慌てた様子の十四郎がおかしさを通り越して怖くなった僕は冷静に聞き返した。
「だから、十四郎の好きなものが知りたいから教えてくれたらいいって返事が来てるんだけど」
「つかお前しれっと俺の好きなものがぽん田みたいな言い方してんじゃねーよ」
「何で?」
「何で?!」
わざと惚けてみたらめちゃくちゃ怖い顔をされたので、瞬時に謝って目を逸らした。
どうやらぽん子氏と同じように、十四郎も僕が気付かないと思っていたらしい。
どうでもいい女子の相談なら僕なんかじゃなくて友達にするだろうから、僕に相談しに来た時点で分かりそうなものなのに…
十四郎はどこか抜けているから面白い。
「だって十四郎、ぽん子氏のこと好きでござるよね?
ぽん子氏も十四郎のこと好きだからちょうど良かったジャン」
「………」
ちらりと横目で見ながらそう言うと、十四郎は苦虫を噛み潰したような顔で僕を見ている。
十四郎が何を思っているかは分からないけど、ぽん子氏が勇気をだしてやっと行動を起こしたのだから、僕も少しぐらいは手助けしないといけないだろう。
「…いつから気付いてたんだ」
「ぽん子氏のほう?」
「いや、俺」
「さっきでござるけど」
「さっき?!」
驚いて固まる十四郎。
それより僕は、ぽん子氏になんて返信をしたらいいかをさっさと教えて欲しいのだけど。
「それで、どうするんだい?
返事…しなくていいならしないけど」
スマホを片手に問うと、十四郎はため息をついて立ち上がった。
もういつもの調子を取り戻したようで、すっきりとした顔をしている。
「マヨネーズとでも送っとけ
もう自分で何とかするわ」
じゃあな、と言い残して十四郎はさっさと部屋を出ていった。
あの様子だと十四郎はぽん子氏に告白して2人は無事に結ばれる展開になるだろうか。
僕がぽん子氏の気持ちを知っていることも知っていたようだから、両思いだという事はすでに分かっていたようだし。
「やっとぽん子氏に春が来るかな?」
もし十四郎が告白すれば、ぽん子氏は喜んで付き合うだろう。顔を真っ赤にして喜ぶ顔がありありと目に浮かぶ。
でもそうなるとヘルプ頼みにくくなるかも…なんて、僕はちょっぴり残念な気持ちになった。
春の訪れは
神楽ちゃんとお妙ちゃんに渡すついでに!と言い訳を用意して、土方くんときっと誰からも貰えなくて可哀想なトッシーにもとZ組へ届けたのだ。
その場に居合わせた沖田くんからは「オイオイ俺にはねーのかィ」と睨まれて、めちゃくちゃ怖かったけど「沖田くんは意地悪だからあげない」ときっぱり言い捨てて逃げた。
後ろでは土方くんの笑い声がしたが、沖田くんが怖くて振り向けず笑顔を見ることが出来なかったのだけがちょっとした心残りである。
そんなこんなで結局告白するどころではなくなってしまったが、結果、渡せたというだけで私は満足だ。
昨年は遠くから見ているだけだったのが、こうして普通に話せるだけでも大進歩だと思うとそう悪くは無い。
「でもこっちはもったいなくて食べれないんだよねぇ~」
手のひらの上で土方くんからもらった飴をころころと転がしながら大きな独り言をつぶやく。
もうすぐ2月が終わってしまうが、バレンタインに貰ったことで意味があったのかもしれないとか、初めて貰った飴だからなんて思うと何となく勿体なくて、未だに食べられず机の上に置いたままにしているのだ。
「でもそろそろ食べないとだよね」
意を決して包装をぴりっと破り、口の中に転がした。
ほんのり甘い味がするそれはしばらくすると溶けてなくなってしまったが、貰った時のように嬉しい気持ちでいっぱいになった。
「んっ?」
ベッドの上で転がりながら幸せの余韻に浸っていると、ぴろりんと軽快なメッセージを知らせる音がスマホから流れてきた。
のっそりと起き上がり、画面を見てみればトッシーから「ぽん子氏って欲しいものある?」とだけ届いていた。
トッシーからこんな質問が飛び出すとは…もしかしてクッキーのお礼かな?と思い至った私は正直に返信した。
「今はとくにないよ、っと」
打ち返すと即既読になり、すぐにまたメッセージが送られてきてその文面に私は思わず吹き出しそうになってしまった。
「とりあえず何でもいいから教えて」と、どストレートに明確な答えを求められてしまったのだ。
「とりあえずって…そんな言われてもなぁ…」
そもそもとりあえずって何だ。
そう思いながらも、女心というか空気を読まない文面にトッシーらしさを感じつつ私は首を傾げた。
本当にこれといって欲しいものはないのだ。
「あっ、じゃあこれでいこう」
いつも振り回されているから、これぐらいのイタズラは許されるだろうとニヤニヤしながら送信ボタンを押すと、既読はついたものの先程と違ってすぐに返事がくる様子はなかった。
―――
十四郎が珍しく僕の部屋に来たと思ったら、こたつで寝転がっていた僕をいきなり蹴り起して向かいに座り込んだ。
無言のままガン見され、めちゃくちゃ居心地が悪いんだけどと思っていたら十四郎がものすごーく言いにくそうに口を開いた。
「お前、ぽん田の欲しいもんとか知らねーの?」
その言葉に瞬時にバレンタインのお返しだ!と勘づいた僕は、ニヤニヤしながら十四郎の前でぽん子氏へメッセージを送った。
イライラしている様子を見ると、きっと僕に頼りたくなかったんだろうなぁという悲しい事実を突きつけられた。
それとは別に、ついでにある事に気づいてしまった。
「とくにないって」
「聞き出さねぇとお前の嫁がどうなるか分かってんな」
スマホから顔を上げると、トモエちゃんが十四郎の手によって今にもへし折られそうになっていて、僕は急いでぽん子氏へと慌ててメッセージを送り直した。
祈るような気持ちでぽん子氏からの返信を待っていると、十四郎はトモエちゃんをそっと元の位置に戻してくれ、僕はほっと胸をなで下ろす。
同時にぽん子氏からのメッセージが届き、目を通したあとウーンと首を傾げた。
その様子に十四郎が、何だって?と急かしてきたので正直に思ったことを伝えてみることにした。
「十四郎の好きなものを教えてってきたけど、ぽん子氏だよって送り返したらいいの?」
「はっ?!何言ってんのお前?何言ってんの?てか何言ってんの?」
「十四郎が何言ってんの?」
あからさまに慌てた様子の十四郎がおかしさを通り越して怖くなった僕は冷静に聞き返した。
「だから、十四郎の好きなものが知りたいから教えてくれたらいいって返事が来てるんだけど」
「つかお前しれっと俺の好きなものがぽん田みたいな言い方してんじゃねーよ」
「何で?」
「何で?!」
わざと惚けてみたらめちゃくちゃ怖い顔をされたので、瞬時に謝って目を逸らした。
どうやらぽん子氏と同じように、十四郎も僕が気付かないと思っていたらしい。
どうでもいい女子の相談なら僕なんかじゃなくて友達にするだろうから、僕に相談しに来た時点で分かりそうなものなのに…
十四郎はどこか抜けているから面白い。
「だって十四郎、ぽん子氏のこと好きでござるよね?
ぽん子氏も十四郎のこと好きだからちょうど良かったジャン」
「………」
ちらりと横目で見ながらそう言うと、十四郎は苦虫を噛み潰したような顔で僕を見ている。
十四郎が何を思っているかは分からないけど、ぽん子氏が勇気をだしてやっと行動を起こしたのだから、僕も少しぐらいは手助けしないといけないだろう。
「…いつから気付いてたんだ」
「ぽん子氏のほう?」
「いや、俺」
「さっきでござるけど」
「さっき?!」
驚いて固まる十四郎。
それより僕は、ぽん子氏になんて返信をしたらいいかをさっさと教えて欲しいのだけど。
「それで、どうするんだい?
返事…しなくていいならしないけど」
スマホを片手に問うと、十四郎はため息をついて立ち上がった。
もういつもの調子を取り戻したようで、すっきりとした顔をしている。
「マヨネーズとでも送っとけ
もう自分で何とかするわ」
じゃあな、と言い残して十四郎はさっさと部屋を出ていった。
あの様子だと十四郎はぽん子氏に告白して2人は無事に結ばれる展開になるだろうか。
僕がぽん子氏の気持ちを知っていることも知っていたようだから、両思いだという事はすでに分かっていたようだし。
「やっとぽん子氏に春が来るかな?」
もし十四郎が告白すれば、ぽん子氏は喜んで付き合うだろう。顔を真っ赤にして喜ぶ顔がありありと目に浮かぶ。
でもそうなるとヘルプ頼みにくくなるかも…なんて、僕はちょっぴり残念な気持ちになった。
春の訪れは