土方くんとトッシーと私と(土方)
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私は土方十四郎くんという同級生に一年の時から密かに恋をしている。
だがその思いは二年になった今も、来年もし同じクラスとなったとしても、卒業しても、なんなら死ぬまで伝えることは出来ないだろうなと思っている。
なぜ?それは土方くんと、土方くんを取り巻く環境に対し、私はあまりにも「普通」過ぎるのだ。
美人でもなければ、可愛いでもなく、スタイルがいいとも言えない。シンプルに普通だ。
「せめて運動ぐらいできたら良かったのにな…そしたら運動部で繋がりとかさ…まぁ無理か。何も出来ないしね」
はーあ、と呟きながら家を出た私はトボトボとゲームを取り扱っているお店へと足を運ぶ。
「今日は新品のコーナーも見てみようかな~」
店内に入ってすぐの新作コーナーに顔を向けると、キャップをかぶった男の人がコントローラーを握っていた。肩越しの画面を見てみればバンバン敵を倒している。
同じ学生っぽいのにすごく上手で、ゲームが得意なんだろうと思いながらもその後ろを通りすぎ、陳列物を眺めるもとくに目を惹くものはなかった。
ゲームにしても、得意という訳ではないのだ。
暇つぶしには丁度良いアイテムというだけなのでこだわりもない。
ぐるぐると見て回ったものの結局中古コーナーへと進み物色していると、すぐ隣にいた人に気づかず肩がぶつかってしまった。
「すみませ…」
お互い同時に謝り、私は慌てて顔を上げて目を見開いた。
そこには新作ゲームを簡単にやってのけていたあのキャップを被った男性がいたのだ。
だが、驚いたのはそこではない。
「ひ、土方くん…?」
「えっ」
視線の先にいたのは、私が密かに想いを抱いている土方くんだったのだ。
何か声をかけなければとあたふたしていると、何故か土方くんも急にあたふたし出した。
「あのぉ、キミ話したことないよね?なんで僕のこと知ってるの?怖いんだけど」
「えっ?」
「だって僕、キミのこと知らないでござるよ」
「えっござる?」
学校では一切見たことない様子に人違いかとも思ったが、背格好や声がドッペルゲンガーかと思うほど似ている顔を見ればやはり土方くんそのものだ。
間違いないはずなのに、雰囲気が全く違う「土方くんらしき人」は見るからに困った様子でこちらを見ている。
「えっと、二年のぽん田です。話したことは何回かしかないけど、学年が同じ…です」
「二年…」
じっとこちらを見つめて何かを考え込んだ土方くんらしき人の視線に耐えきれず、私は慌てて言葉をひねり出す。
「あのっ!私、地味だから覚えられてないの当たり前だよねぇ!は、ははは~」
言っていて悲しくなるが、きっと土方くんにとっては私は風景や背景と同じようなものだろう。いや、間違いない。
だって話したことなんて一度や二度程度しかなくて、それも一年の時で、それだけで勝手に好きになってこっそり想っているだけなのだから。
「えぇとォ、つまり十四郎の知人ということでござるな」
「そう!十四郎くん…って?!」
「知らないのも納得でござるよ。僕はトッシー。十四郎の双子の弟だけど他校だから」
ポンと手を打つトッシーと名乗る目の前の人に、私はぽかんとするほかなかった。
双子の弟?トッシー?
好きな人のことなのに、全然知らなかった……
落ち込む私に、トッシーくんはモジモジしながらも嬉しそうに話を続けた。
「久しぶりにリアル女子と話したから変な感じになってしまったよ
なんかごめんね。キミもゲーム好きなのかい?」
「えっあ、うん、たまにやるくらいだけど…えっと、トッシーくん?は好きなの?」
土方くんについて聞きたいのに、質問に思わず答えてしまった。
「トッシーくんだなんて、トッシーって呼んで欲しいでござるよ。ぽん田の下の名前は?」
「あっ、ごめんね。私はぽん子です」
「ぽん子氏ね!
僕はゲームもアニメも好きなんだよね。二次元はもはや世界に誇るサブカルチャーだよね~
今日はずっとやってたシリーズの新作が出たっていうからさぁ。来たら体験版があったから勿論やるしかないよね」
目の前のトッシーは嬉々として色々と語り始めたが内容についていけない私は「え」とか「うん」とか、かなり情けない相槌を打つ他ない。
そもそも目の前で話しているのは別人なのに、土方くんの顔と声で話されるとやはりどうしても動揺してしまう。
土方くんもこんな顔をするのかな、なんて思っていたら急にトッシーはハッとした顔で話すのをやめた。
「ごめん、一方的に話してしまって
あんまり人と話さないから、話し出すと止まらなくなっちゃうんだよね。僕もう体験版できたし新作買えたから、そろそろ行こうかな。
ぽん子氏は何も買わないの?」
「別に謝らなくて良いよ!私はあんまりゲーム分かんなくて…」
「ふーん。どんなのが好きなの?せっかくだからジャンル教えてくれたらおすすめするでござるよ!」
「あっありがとう~…でも今日はちょっといいかなぁ。また今度探しに来てみるね」
あまりにもキラキラな笑顔で見られて、思わず目をそらしてしまった。土方くんの本当の笑顔でなくても、向けられるはずのなかったものが向けられてドキドキしてしまって仕方がないのだ。
「そうでござるか…
あっ、せっかくだから友達になるでござるよ。連絡先交換してゲームとかアニメとかおすすめするよ!キミとは何か通じるものを感じる気がするんだよね」
「そ、そうなの…えっと、じゃあスマホ…」
半ば押しきられる形で、私とトッシーは連絡先を交換して別れた。
これが恐らく私だけが衝撃を受けた、トッシーと出会ってしまった春のことである。
だがその思いは二年になった今も、来年もし同じクラスとなったとしても、卒業しても、なんなら死ぬまで伝えることは出来ないだろうなと思っている。
なぜ?それは土方くんと、土方くんを取り巻く環境に対し、私はあまりにも「普通」過ぎるのだ。
美人でもなければ、可愛いでもなく、スタイルがいいとも言えない。シンプルに普通だ。
「せめて運動ぐらいできたら良かったのにな…そしたら運動部で繋がりとかさ…まぁ無理か。何も出来ないしね」
はーあ、と呟きながら家を出た私はトボトボとゲームを取り扱っているお店へと足を運ぶ。
「今日は新品のコーナーも見てみようかな~」
店内に入ってすぐの新作コーナーに顔を向けると、キャップをかぶった男の人がコントローラーを握っていた。肩越しの画面を見てみればバンバン敵を倒している。
同じ学生っぽいのにすごく上手で、ゲームが得意なんだろうと思いながらもその後ろを通りすぎ、陳列物を眺めるもとくに目を惹くものはなかった。
ゲームにしても、得意という訳ではないのだ。
暇つぶしには丁度良いアイテムというだけなのでこだわりもない。
ぐるぐると見て回ったものの結局中古コーナーへと進み物色していると、すぐ隣にいた人に気づかず肩がぶつかってしまった。
「すみませ…」
お互い同時に謝り、私は慌てて顔を上げて目を見開いた。
そこには新作ゲームを簡単にやってのけていたあのキャップを被った男性がいたのだ。
だが、驚いたのはそこではない。
「ひ、土方くん…?」
「えっ」
視線の先にいたのは、私が密かに想いを抱いている土方くんだったのだ。
何か声をかけなければとあたふたしていると、何故か土方くんも急にあたふたし出した。
「あのぉ、キミ話したことないよね?なんで僕のこと知ってるの?怖いんだけど」
「えっ?」
「だって僕、キミのこと知らないでござるよ」
「えっござる?」
学校では一切見たことない様子に人違いかとも思ったが、背格好や声がドッペルゲンガーかと思うほど似ている顔を見ればやはり土方くんそのものだ。
間違いないはずなのに、雰囲気が全く違う「土方くんらしき人」は見るからに困った様子でこちらを見ている。
「えっと、二年のぽん田です。話したことは何回かしかないけど、学年が同じ…です」
「二年…」
じっとこちらを見つめて何かを考え込んだ土方くんらしき人の視線に耐えきれず、私は慌てて言葉をひねり出す。
「あのっ!私、地味だから覚えられてないの当たり前だよねぇ!は、ははは~」
言っていて悲しくなるが、きっと土方くんにとっては私は風景や背景と同じようなものだろう。いや、間違いない。
だって話したことなんて一度や二度程度しかなくて、それも一年の時で、それだけで勝手に好きになってこっそり想っているだけなのだから。
「えぇとォ、つまり十四郎の知人ということでござるな」
「そう!十四郎くん…って?!」
「知らないのも納得でござるよ。僕はトッシー。十四郎の双子の弟だけど他校だから」
ポンと手を打つトッシーと名乗る目の前の人に、私はぽかんとするほかなかった。
双子の弟?トッシー?
好きな人のことなのに、全然知らなかった……
落ち込む私に、トッシーくんはモジモジしながらも嬉しそうに話を続けた。
「久しぶりにリアル女子と話したから変な感じになってしまったよ
なんかごめんね。キミもゲーム好きなのかい?」
「えっあ、うん、たまにやるくらいだけど…えっと、トッシーくん?は好きなの?」
土方くんについて聞きたいのに、質問に思わず答えてしまった。
「トッシーくんだなんて、トッシーって呼んで欲しいでござるよ。ぽん田の下の名前は?」
「あっ、ごめんね。私はぽん子です」
「ぽん子氏ね!
僕はゲームもアニメも好きなんだよね。二次元はもはや世界に誇るサブカルチャーだよね~
今日はずっとやってたシリーズの新作が出たっていうからさぁ。来たら体験版があったから勿論やるしかないよね」
目の前のトッシーは嬉々として色々と語り始めたが内容についていけない私は「え」とか「うん」とか、かなり情けない相槌を打つ他ない。
そもそも目の前で話しているのは別人なのに、土方くんの顔と声で話されるとやはりどうしても動揺してしまう。
土方くんもこんな顔をするのかな、なんて思っていたら急にトッシーはハッとした顔で話すのをやめた。
「ごめん、一方的に話してしまって
あんまり人と話さないから、話し出すと止まらなくなっちゃうんだよね。僕もう体験版できたし新作買えたから、そろそろ行こうかな。
ぽん子氏は何も買わないの?」
「別に謝らなくて良いよ!私はあんまりゲーム分かんなくて…」
「ふーん。どんなのが好きなの?せっかくだからジャンル教えてくれたらおすすめするでござるよ!」
「あっありがとう~…でも今日はちょっといいかなぁ。また今度探しに来てみるね」
あまりにもキラキラな笑顔で見られて、思わず目をそらしてしまった。土方くんの本当の笑顔でなくても、向けられるはずのなかったものが向けられてドキドキしてしまって仕方がないのだ。
「そうでござるか…
あっ、せっかくだから友達になるでござるよ。連絡先交換してゲームとかアニメとかおすすめするよ!キミとは何か通じるものを感じる気がするんだよね」
「そ、そうなの…えっと、じゃあスマホ…」
半ば押しきられる形で、私とトッシーは連絡先を交換して別れた。
これが恐らく私だけが衝撃を受けた、トッシーと出会ってしまった春のことである。
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