メガネっ子さんの5つの苦悩
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先生と生徒の恋なんてあるんだろうか。
少女漫画でも青年漫画でも、まぁありがちなネタだが、そんなことを考えながら教壇に立つ白髪頭の先生をぼんやり眺めていると、ぱちっと目が合った。
やばい、目が合ってしまったと思いながらも黒板を見ている振りをしてそのまま見続けていると、先生もこちらをじっと見ている。
目を逸らしていいものかどうしようかと悩んでいたら終業のチャイムがなり、そのまま授業を終えた先生は休み時間で騒々しくなったクラスメイトの声にかき消されない声で「国語係のぽん田」と私を呼びつけた。
放課後に課題ノートを集めて準備室に持って来いとだけ言われて、はーいと返事をして教室に戻る。
というフリをして、気だるそうに廊下を歩く先生の後ろ姿をこっそりと眺めてため息をついた。
残念なことに、3年生になっても私は銀八先生のクラスにはなれなかった。
ただ救いなのは、テストでは高得点を叩き出すべく真面目に授業を受け、分からなければ質問をしに向かっていたからか声をかけてもらえる回数が増えて、こうして準備室へとちょこちょこ立ち寄ることを許されたのだ。というよりも国語係なるものを勝手に作った先生に指名されただけ…かも知れないが。
先生と生徒の恋なんて、世の中でゼロでなくても、身近な現実には早々ないだろう。
でも私は銀八先生に秘かに思いを寄せている。
非常識だとか恋に恋しているだけだなどと言われてしまえばそれまでだろうが、好きになってしまったものは仕方ない。
そう入学したその日に一目惚れしてから思い続けること3年目の春、最後の担任は坂田先生でお願い!と願ったが先生が受け持ったのは隣りのクラスだった…。
「あーあ、恋は恋のまま終わるのね」
先生の姿が見えなくなった所で溜息をついた。
―――
「失礼しまーす」
ノックをして少し重いドアを開けると、もわっとタバコの匂いがこちらに向かって流れてきた。
いつもの光景に何も言わずそのまま部屋に入ると背後ではギィッとドアの閉まる音が聞こえた。
「おー、国語係。サンキュー」
窓際に立った銀八先生は珍しく眼鏡を掛けておらず、禁煙にも関わらず相変わらずすました顔でタバコを吸っている。
ノートの置き場に困っていると、タバコを消した先生がポケットから取り出した眼鏡をかけてソファの前に置いてある机の上を片付けてくれた。
ありがたくそこにノートを置き帰ろうとしたら、あっちょっと待って、と先生は私を引き留め床に置いてあったカバンをガサガサと漁りながら何かを探しているようだ。
「これこれ~、頑張ったご褒美に先生のおやつ1個分けてやんよ」
「え!良いんですか?ありがとうございます」
手のひらサイズの丸っこいチョコパンをホイと渡されありがたく頂戴すると、他の奴には内緒だからここで食って帰れよと言われた。
その言葉に戸惑いつつも、せっかく先生がくれた物だし…というのと、先生と居られることが勝ったわたしは首を縦に振った。
「頂きまーす」
「おぅ」
ソファの端っこを借りて座ると思ったより腰が沈みこんだ。
各クラスのノートを目の前に、ピリッと袋を破いて丸っこいパンに遠慮がちにかぶりつく。
そんな私の反対端に先生がよっこらせと座ると、ちょっとだけ先生側に体が傾いてしまったので体勢を整えるべく座り直した。
「ぽん田さぁ、真面目だよな」
「えっ!そ、そうですかね?」
パンを飲み込んで答えると、先生は広げられたノートに次々と丸を付けていく。
見慣れたそれは私のノートだった。
「ちゃんとテキストやってんなーって思って。分かんねぇトコあったら聞きに来るしよォ」
赤いペンを片手に、銀八先生が私のノートをはらりと捲った。ただの課題ノートなのに、まるで秘密の日記でも見られたかのように恥ずかしいのは気のせいだろうか。
半分ほど食べたところで袋の中にパンの残りをさっと戻し銀八先生を見ると、先生もこちらを見ていた。
「先生…?」
いつになく真面目な顔つきで、距離も近いしドキドキしてしまって上手く話せない。
赤いペンを机に置き、少しだけ距離を詰めた先生に思わず首をすくめて次の行動を待った。
「俺のクラスにぽん田みたいなのだけ居たらめちゃくちゃ楽だろうなぁ」
「…え」
「ぽん田は課題もちゃーんとやるし、授業も真面目に受けるし、それにしたって何で俺のクラスは問題児ばっかかねぇ」
拍子抜けした私と違い、銀八先生はやれやれと頭を抱えるように項垂れている。
たしかにZ組からはいつも賑やかな声が聞こえているが、まさか先生から問題児という言葉が出てくるとは思わなくて、竦めた首も力が抜けて笑ってしまった。
「先生からしたら、言うこと聞かない生徒はみんな問題児って言いそう」
「何だよぽん田、よく分かってんじゃねーか」
先生も笑いながら私にくれた別のチョコパンを取り出すと、さも当たり前のように慣れた手つきで頬張りだした。
そんな先生に、そういえば…とあまり大切にされているようには見えない眼鏡を指さした。
「ポケットに入れない方がいいですよ、壊れちゃいます」
あっという間に食べ終えた先生は手のひらをパンパンと乱暴に叩き、もぐもぐと口を動かしながら眼鏡を外すと、私の手のひらを差し出すようジェスチャーしてきた。
大人しく手のひらを差し出すと先生は私の手に眼鏡を置き、トントンと指さして、パンをごくんと飲み込んだ。
「それ、伊達メガネ」
「あっ…ホントだ」
その言葉にレンズを覗いて周りを見ても、度が入っているものとは違って視界が歪むことはなかった。
でも何で伊達メガネ?と思いながらも何も言わずそのまま返そうとしたら、先生の手によってそのまま私の顔にかけられてしまった。
驚いて先生を見れば、その口元はニヤリと歪んでいる。
「俺なぁ、眼鏡してる時はちゃんと先生するって決めてんだよね」
「えっ…それってどういう…」
一体いきなり何の話?と思いながらも、銀八先生の言葉に耳を傾けようと黙ると、先生はじっとこちらを見つめてきた。
そのまま吸い込まれそうな瞳に釘付けになっていると、先生はゆっくりゆっくりと私への距離を詰め、ついには鼻先がくっつきそうな程だ。
それでも目を逸らせずじわじわと頬を熱くさせていると、先生はゆっくりと口を開いた。
「ぽん子、毎日見つめすぎ
そんなに俺のこと好きかよ」
苗字ではなく名前を呼ばれ、先生への気持ちがバレていたと理解した瞬間、私の顔は火がついたようにボッと熱くなったが、離れようにもまだ先生の手は私の顔に触れたままで、意味もなくはくはくと口を動かすことしか出来ない。
そんな私にクックっと意地悪く笑う先生は本当に楽しそうだ。
「ぽん子、顔真っ赤だぞ」
「うぇ、え、え?せんせ?」
「お前ホンット可愛いやつな」
狼狽える私を他所に、ぐにぐにと乱暴に頬を両手で挟んで揉んだ銀八先生は満足そうな顔で私から眼鏡を奪い、そのまま先生はカチャリと眼鏡をかけた。
そして机に置いたままの私のパンを手に取ると、行き場を失って浮かせていた私の手に握らせるとにっこり笑った。
「じゃあな、寄り道せずに帰れよ…ぽん田さん」
数秒置いて私は無言で立ち上がると、急いで準備室を飛び出した。
脇目も振らず廊下を走り、もう誰も残っていない教室に戻ると自分の席に座って大きく息を吸い込んだ。
まだ暴れ狂う心臓を何とか落ち着かせようと呼吸を繰り返すが、頬の熱さも、激しい鼓動も、なかなか思うようには静まってはくれない。
「何あれ、何あれ、なに……」
初めてあんなに近く見た先生の顔が、閉じたまぶたの裏にまだしっかりと浮かぶ。
意地悪く歪んだ口元も吸い込まれそうな瞳も、先生の眼鏡越しに見た光景があまりにも刺激的すぎた。
「…カッコよすぎかっ……」
視界に枠(フレーム)がある
眼鏡を外した先生は、ただの1人の男性だったようです。
少女漫画でも青年漫画でも、まぁありがちなネタだが、そんなことを考えながら教壇に立つ白髪頭の先生をぼんやり眺めていると、ぱちっと目が合った。
やばい、目が合ってしまったと思いながらも黒板を見ている振りをしてそのまま見続けていると、先生もこちらをじっと見ている。
目を逸らしていいものかどうしようかと悩んでいたら終業のチャイムがなり、そのまま授業を終えた先生は休み時間で騒々しくなったクラスメイトの声にかき消されない声で「国語係のぽん田」と私を呼びつけた。
放課後に課題ノートを集めて準備室に持って来いとだけ言われて、はーいと返事をして教室に戻る。
というフリをして、気だるそうに廊下を歩く先生の後ろ姿をこっそりと眺めてため息をついた。
残念なことに、3年生になっても私は銀八先生のクラスにはなれなかった。
ただ救いなのは、テストでは高得点を叩き出すべく真面目に授業を受け、分からなければ質問をしに向かっていたからか声をかけてもらえる回数が増えて、こうして準備室へとちょこちょこ立ち寄ることを許されたのだ。というよりも国語係なるものを勝手に作った先生に指名されただけ…かも知れないが。
先生と生徒の恋なんて、世の中でゼロでなくても、身近な現実には早々ないだろう。
でも私は銀八先生に秘かに思いを寄せている。
非常識だとか恋に恋しているだけだなどと言われてしまえばそれまでだろうが、好きになってしまったものは仕方ない。
そう入学したその日に一目惚れしてから思い続けること3年目の春、最後の担任は坂田先生でお願い!と願ったが先生が受け持ったのは隣りのクラスだった…。
「あーあ、恋は恋のまま終わるのね」
先生の姿が見えなくなった所で溜息をついた。
―――
「失礼しまーす」
ノックをして少し重いドアを開けると、もわっとタバコの匂いがこちらに向かって流れてきた。
いつもの光景に何も言わずそのまま部屋に入ると背後ではギィッとドアの閉まる音が聞こえた。
「おー、国語係。サンキュー」
窓際に立った銀八先生は珍しく眼鏡を掛けておらず、禁煙にも関わらず相変わらずすました顔でタバコを吸っている。
ノートの置き場に困っていると、タバコを消した先生がポケットから取り出した眼鏡をかけてソファの前に置いてある机の上を片付けてくれた。
ありがたくそこにノートを置き帰ろうとしたら、あっちょっと待って、と先生は私を引き留め床に置いてあったカバンをガサガサと漁りながら何かを探しているようだ。
「これこれ~、頑張ったご褒美に先生のおやつ1個分けてやんよ」
「え!良いんですか?ありがとうございます」
手のひらサイズの丸っこいチョコパンをホイと渡されありがたく頂戴すると、他の奴には内緒だからここで食って帰れよと言われた。
その言葉に戸惑いつつも、せっかく先生がくれた物だし…というのと、先生と居られることが勝ったわたしは首を縦に振った。
「頂きまーす」
「おぅ」
ソファの端っこを借りて座ると思ったより腰が沈みこんだ。
各クラスのノートを目の前に、ピリッと袋を破いて丸っこいパンに遠慮がちにかぶりつく。
そんな私の反対端に先生がよっこらせと座ると、ちょっとだけ先生側に体が傾いてしまったので体勢を整えるべく座り直した。
「ぽん田さぁ、真面目だよな」
「えっ!そ、そうですかね?」
パンを飲み込んで答えると、先生は広げられたノートに次々と丸を付けていく。
見慣れたそれは私のノートだった。
「ちゃんとテキストやってんなーって思って。分かんねぇトコあったら聞きに来るしよォ」
赤いペンを片手に、銀八先生が私のノートをはらりと捲った。ただの課題ノートなのに、まるで秘密の日記でも見られたかのように恥ずかしいのは気のせいだろうか。
半分ほど食べたところで袋の中にパンの残りをさっと戻し銀八先生を見ると、先生もこちらを見ていた。
「先生…?」
いつになく真面目な顔つきで、距離も近いしドキドキしてしまって上手く話せない。
赤いペンを机に置き、少しだけ距離を詰めた先生に思わず首をすくめて次の行動を待った。
「俺のクラスにぽん田みたいなのだけ居たらめちゃくちゃ楽だろうなぁ」
「…え」
「ぽん田は課題もちゃーんとやるし、授業も真面目に受けるし、それにしたって何で俺のクラスは問題児ばっかかねぇ」
拍子抜けした私と違い、銀八先生はやれやれと頭を抱えるように項垂れている。
たしかにZ組からはいつも賑やかな声が聞こえているが、まさか先生から問題児という言葉が出てくるとは思わなくて、竦めた首も力が抜けて笑ってしまった。
「先生からしたら、言うこと聞かない生徒はみんな問題児って言いそう」
「何だよぽん田、よく分かってんじゃねーか」
先生も笑いながら私にくれた別のチョコパンを取り出すと、さも当たり前のように慣れた手つきで頬張りだした。
そんな先生に、そういえば…とあまり大切にされているようには見えない眼鏡を指さした。
「ポケットに入れない方がいいですよ、壊れちゃいます」
あっという間に食べ終えた先生は手のひらをパンパンと乱暴に叩き、もぐもぐと口を動かしながら眼鏡を外すと、私の手のひらを差し出すようジェスチャーしてきた。
大人しく手のひらを差し出すと先生は私の手に眼鏡を置き、トントンと指さして、パンをごくんと飲み込んだ。
「それ、伊達メガネ」
「あっ…ホントだ」
その言葉にレンズを覗いて周りを見ても、度が入っているものとは違って視界が歪むことはなかった。
でも何で伊達メガネ?と思いながらも何も言わずそのまま返そうとしたら、先生の手によってそのまま私の顔にかけられてしまった。
驚いて先生を見れば、その口元はニヤリと歪んでいる。
「俺なぁ、眼鏡してる時はちゃんと先生するって決めてんだよね」
「えっ…それってどういう…」
一体いきなり何の話?と思いながらも、銀八先生の言葉に耳を傾けようと黙ると、先生はじっとこちらを見つめてきた。
そのまま吸い込まれそうな瞳に釘付けになっていると、先生はゆっくりゆっくりと私への距離を詰め、ついには鼻先がくっつきそうな程だ。
それでも目を逸らせずじわじわと頬を熱くさせていると、先生はゆっくりと口を開いた。
「ぽん子、毎日見つめすぎ
そんなに俺のこと好きかよ」
苗字ではなく名前を呼ばれ、先生への気持ちがバレていたと理解した瞬間、私の顔は火がついたようにボッと熱くなったが、離れようにもまだ先生の手は私の顔に触れたままで、意味もなくはくはくと口を動かすことしか出来ない。
そんな私にクックっと意地悪く笑う先生は本当に楽しそうだ。
「ぽん子、顔真っ赤だぞ」
「うぇ、え、え?せんせ?」
「お前ホンット可愛いやつな」
狼狽える私を他所に、ぐにぐにと乱暴に頬を両手で挟んで揉んだ銀八先生は満足そうな顔で私から眼鏡を奪い、そのまま先生はカチャリと眼鏡をかけた。
そして机に置いたままの私のパンを手に取ると、行き場を失って浮かせていた私の手に握らせるとにっこり笑った。
「じゃあな、寄り道せずに帰れよ…ぽん田さん」
数秒置いて私は無言で立ち上がると、急いで準備室を飛び出した。
脇目も振らず廊下を走り、もう誰も残っていない教室に戻ると自分の席に座って大きく息を吸い込んだ。
まだ暴れ狂う心臓を何とか落ち着かせようと呼吸を繰り返すが、頬の熱さも、激しい鼓動も、なかなか思うようには静まってはくれない。
「何あれ、何あれ、なに……」
初めてあんなに近く見た先生の顔が、閉じたまぶたの裏にまだしっかりと浮かぶ。
意地悪く歪んだ口元も吸い込まれそうな瞳も、先生の眼鏡越しに見た光景があまりにも刺激的すぎた。
「…カッコよすぎかっ……」
視界に枠(フレーム)がある
眼鏡を外した先生は、ただの1人の男性だったようです。