メガネっ子さんの5つの苦悩
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最近気づいたのだが、携帯の弄りすぎかPCの見すぎか目が悪くなってきたようで、若干周りのものが見えにくい。
別にさほど不便でもないが、遠くにいる人の顔や文字がはっきり見えないのはやっぱり少しだけストレスに感じる。
ということで私はメガネデビューを果たしたのである。
「てことなんだけど似合うかな?」
「似合うんじゃね?」
「だー!冷たいっ!」
「いだァァ」
問いかける私を全く見ることなくそう言い放ち、ソファに寝転がってジャンプを読み耽る銀ちゃんに腹が立ったので背表紙の上に肘を立ててそのまま体重を乗せてやった。
「何すんだテメッ!顔が潰れんじゃねーか!」
「潰れるほどじゃなかったでしょ」
「そうだけど痛えっつの」
鼻を抑えながら体を起こす銀ちゃんを見下ろしながら、ふふんと右手を腰に当て、買ったばかりのメガネを左手でクイッと持ち上げた。
「おー、似合ってる。頭良さそうに見える」
「……言われると思ったわ」
典型的な感想に、はぁ~とため息を吐いて隣りに座ると、銀ちゃんは「メガネ1個で何も変わりゃしねーよ」とボヤいている。
確かにそうかもしれないが、メガネ萌えという言葉もあるぐらいだから何か言ってくれても良いじゃないかと頬を膨らませた。
「あっ、銀ちゃんも前にメガネしてたことあったよね?何だったかなー」
「んなことあったっけか?」
「仕事でどうのこうの言ってた。たしかスーツ着て…赤い縁のやつ」
どこかに仕舞ってあるんじゃないの?と言いながら、私は勝手知ったる坂田家の押し入れを漁り出すと、すぐにお目当てのものは見つかった。ぱたぱたと銀ちゃんの元へ戻り、広げてみればどうやら傷みもないようで、すぐにでも着られそうだ。
「あったよー!銀ちゃん着てみてよ~ちょっとデートしよう~」
「めんどくせぇ」
勿論そう言うだろうという予想はついていたので、私は提案をもちかけた。
「ちょっとだけお散歩デートをして、その帰りに銀ちゃんのお菓子を買いましょう。五千円分」
この言葉に反応した銀ちゃんは素早くスーツに袖を通し、さぁどこへ行きましょうかお嬢さん、と私の手を優しく握った。ちょろすぎる。
「しっかし冬にスーツは寒いな。散歩やめて喫茶店とかにしねぇ?まじ寒い」
「えー、もうちょっとだけスーツ男子とのデート楽しませてよ」
ぶらぶらと歩き出したはいいものの、銀ちゃんは早々に寒さに音を上げて繋いだ手をぐいぐいと引っ張りながら移動する。
その力強さと不機嫌そうな表情に、楽しむどころではないなぁと早々に折れることにした。
「洋装姿も見られたし、まぁいいかぁ」
「っしゃー!んじゃさっさと買いに行こうぜ」
「急に元気になったね」
先程まで早足だったのはデートじゃなくてお菓子を買いに向かっていたんじゃないのと言いたくなるほど、颯爽と歩く姿はデキる男のように見えて、少しだけかっこいいと思う。
考えていることはお菓子のことだろうけど、キリッとした表情は彼女補正が掛かっていたとしてもやっぱり男前だ。
「よし!大江戸スーパー着いた!」
すっかり体が冷えてしまいそうだったが、やっと見つけた店内に足早に入ると風も凌げてほんのり暖かくて、自分でデートに誘ったものの天国に辿り着いたような気分になった。
と、ほうっとしていると隣りでは銀ちゃんが何やら騒いでいる。
「ちょ、俺のメガネ曇りすぎだろ!何も見えねぇんだけど!やばくね?」
くるっとこちらを振り向いた銀ちゃんのメガネは真っ白に曇りきっており、私を見ているであろう瞳は完全に隠れてしまっている。
「ぶふっ!」
「どーなってんだよ…俺のメガネってばいつの間に呪いのメガネになってたの?使わなすぎて呪われた?」
「銀ちゃんっ…最早白いサングラスじゃん!ヤバすぎ」
くそーと言いながらも、銀ちゃんは私が差し出したメガネ拭きで荒々しくメガネを拭き、かけ直すと不満げな顔でこちらを見て、ハッとした顔で私を…正確には私のメガネを指さした。
「ぽん子のメガネ、曇ってねーじゃん。何?何で?おかしくね?伊達じゃねーから?」
「えっ?くもり止め加工してもらってるだけよ」
「んだよ!お前も曇らせろよ!俺だけ超恥ずかしいじゃねーか!」
もうメガネなんか知るか!と言いながら、銀ちゃんはスーツの胸ポケットの中へとメガネを入れてしまった。
赤縁メガネがチラリと覗き、ちょっとだけオシャレに見えるのはきっと普段見なれないスーツ姿だからだろう。
あとは彼女補正が…というのはさておき、恥ずかしさでお怒りの銀ちゃんはどんどん先に進んでいってしまった。
「銀ちゃん待ってよ~」
小走りで追いかけ、隣りに並んで銀ちゃんの手をそっと掴んだ。
手を繋ぐのは嫌がるかなと思ったけれど、銀ちゃんは私をチラリとだけ見て、ふいっと前を向いてしまった。
「さっさと買って帰ろうぜ」
「そだね、外は寒いもんね」
何だかんだで優しい銀ちゃんのことだ。こんな事があったけれど、忘れた頃にお願いすれば、ポケットの中に潜むメガネをまた掛けてくれるだろう。
私からゆるく握っただけの手は銀ちゃんの手によって繋ぎ直され、今は離れないよう指と指が絡み合っていた。
冬にお店に入った時に曇る
別にさほど不便でもないが、遠くにいる人の顔や文字がはっきり見えないのはやっぱり少しだけストレスに感じる。
ということで私はメガネデビューを果たしたのである。
「てことなんだけど似合うかな?」
「似合うんじゃね?」
「だー!冷たいっ!」
「いだァァ」
問いかける私を全く見ることなくそう言い放ち、ソファに寝転がってジャンプを読み耽る銀ちゃんに腹が立ったので背表紙の上に肘を立ててそのまま体重を乗せてやった。
「何すんだテメッ!顔が潰れんじゃねーか!」
「潰れるほどじゃなかったでしょ」
「そうだけど痛えっつの」
鼻を抑えながら体を起こす銀ちゃんを見下ろしながら、ふふんと右手を腰に当て、買ったばかりのメガネを左手でクイッと持ち上げた。
「おー、似合ってる。頭良さそうに見える」
「……言われると思ったわ」
典型的な感想に、はぁ~とため息を吐いて隣りに座ると、銀ちゃんは「メガネ1個で何も変わりゃしねーよ」とボヤいている。
確かにそうかもしれないが、メガネ萌えという言葉もあるぐらいだから何か言ってくれても良いじゃないかと頬を膨らませた。
「あっ、銀ちゃんも前にメガネしてたことあったよね?何だったかなー」
「んなことあったっけか?」
「仕事でどうのこうの言ってた。たしかスーツ着て…赤い縁のやつ」
どこかに仕舞ってあるんじゃないの?と言いながら、私は勝手知ったる坂田家の押し入れを漁り出すと、すぐにお目当てのものは見つかった。ぱたぱたと銀ちゃんの元へ戻り、広げてみればどうやら傷みもないようで、すぐにでも着られそうだ。
「あったよー!銀ちゃん着てみてよ~ちょっとデートしよう~」
「めんどくせぇ」
勿論そう言うだろうという予想はついていたので、私は提案をもちかけた。
「ちょっとだけお散歩デートをして、その帰りに銀ちゃんのお菓子を買いましょう。五千円分」
この言葉に反応した銀ちゃんは素早くスーツに袖を通し、さぁどこへ行きましょうかお嬢さん、と私の手を優しく握った。ちょろすぎる。
「しっかし冬にスーツは寒いな。散歩やめて喫茶店とかにしねぇ?まじ寒い」
「えー、もうちょっとだけスーツ男子とのデート楽しませてよ」
ぶらぶらと歩き出したはいいものの、銀ちゃんは早々に寒さに音を上げて繋いだ手をぐいぐいと引っ張りながら移動する。
その力強さと不機嫌そうな表情に、楽しむどころではないなぁと早々に折れることにした。
「洋装姿も見られたし、まぁいいかぁ」
「っしゃー!んじゃさっさと買いに行こうぜ」
「急に元気になったね」
先程まで早足だったのはデートじゃなくてお菓子を買いに向かっていたんじゃないのと言いたくなるほど、颯爽と歩く姿はデキる男のように見えて、少しだけかっこいいと思う。
考えていることはお菓子のことだろうけど、キリッとした表情は彼女補正が掛かっていたとしてもやっぱり男前だ。
「よし!大江戸スーパー着いた!」
すっかり体が冷えてしまいそうだったが、やっと見つけた店内に足早に入ると風も凌げてほんのり暖かくて、自分でデートに誘ったものの天国に辿り着いたような気分になった。
と、ほうっとしていると隣りでは銀ちゃんが何やら騒いでいる。
「ちょ、俺のメガネ曇りすぎだろ!何も見えねぇんだけど!やばくね?」
くるっとこちらを振り向いた銀ちゃんのメガネは真っ白に曇りきっており、私を見ているであろう瞳は完全に隠れてしまっている。
「ぶふっ!」
「どーなってんだよ…俺のメガネってばいつの間に呪いのメガネになってたの?使わなすぎて呪われた?」
「銀ちゃんっ…最早白いサングラスじゃん!ヤバすぎ」
くそーと言いながらも、銀ちゃんは私が差し出したメガネ拭きで荒々しくメガネを拭き、かけ直すと不満げな顔でこちらを見て、ハッとした顔で私を…正確には私のメガネを指さした。
「ぽん子のメガネ、曇ってねーじゃん。何?何で?おかしくね?伊達じゃねーから?」
「えっ?くもり止め加工してもらってるだけよ」
「んだよ!お前も曇らせろよ!俺だけ超恥ずかしいじゃねーか!」
もうメガネなんか知るか!と言いながら、銀ちゃんはスーツの胸ポケットの中へとメガネを入れてしまった。
赤縁メガネがチラリと覗き、ちょっとだけオシャレに見えるのはきっと普段見なれないスーツ姿だからだろう。
あとは彼女補正が…というのはさておき、恥ずかしさでお怒りの銀ちゃんはどんどん先に進んでいってしまった。
「銀ちゃん待ってよ~」
小走りで追いかけ、隣りに並んで銀ちゃんの手をそっと掴んだ。
手を繋ぐのは嫌がるかなと思ったけれど、銀ちゃんは私をチラリとだけ見て、ふいっと前を向いてしまった。
「さっさと買って帰ろうぜ」
「そだね、外は寒いもんね」
何だかんだで優しい銀ちゃんのことだ。こんな事があったけれど、忘れた頃にお願いすれば、ポケットの中に潜むメガネをまた掛けてくれるだろう。
私からゆるく握っただけの手は銀ちゃんの手によって繋ぎ直され、今は離れないよう指と指が絡み合っていた。
冬にお店に入った時に曇る