メガネっ子さんの5つの苦悩
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ジュースを買いに行った帰り、何やら志村宅からドタバタと騒音がしているなぁと思って足を止めたら、思い切り玄関のドアが開いて物凄い形相の新八くんが飛び出してきた。
その目には涙が滲んでいる。
「ど、どうした新八くん?涙が…」
「泣いてません、雨です、雨のせいです」
「いや晴天だから!一粒も雨降ってないから!」
「降ってます!降ってます!血の雨が!!」
「何?!怖いんだけど!何なのこの子!」
「ウワァァァァ!」
「ええーっ?!」
新八くんはそのまま走り出してしまい、残された私はただその背中を見送るしかなく呆然としていると、再び玄関のドアが開いた。
「妙ちゃんどうしたの?何があったの?」
「ぽん子さん…私…私…新ちゃんに謝らないと…」
どうやらただ事ではないようだ。
とりあえず青ざめた顔で震える妙ちゃんの背中を撫でて家に入ると、私は妙ちゃんに新八くんを探してくるから待っていて、と声をかけて外へ出た。
かなり取り乱しているようだったが、この辺りは車の通りも少ないから飛び出して事故に遭うことは無いだろうと、きょろきょろ辺りを見回しながらまずは近くを探す。
人が泣いていても怪しまれないところ、といってもそう無いだろうが、それらしき所は無いかと走り回っていると、案外すぐに彼を見つけることが出来た。
ベタに公園の遊具の中に座り込む新八くんに声をかけると、彼はビクッと肩を跳ね上げてこちらを振り向いたがその顔は生気を失っているかのようだ。
「どうしたの?妙ちゃんも真っ青になってたけど……」
「……放って置いてください……」
「そんな訳にはいかないよ」
「……もう、何もかも終わりなんです……もう……」
私も隣りに座り、丸くなった背中をポンポンと軽く叩いて話を聞こうとするが、新八くんはぐすぐすと鼻をすすり涙を零している。
我慢強い方だと思う彼がこんなになるまで泣くなんて、一体どうしたんだろうと考えるが何も思いつかず、彼が落ち着くのをひたすら待った。
そして日が暮れ始めた頃、だいぶ落ち着いたであろう新八くんが涙を流すのをやめて私に一言ぽつりと謝った。
「泣きたい時もあるよ。でもここじゃ冷えちゃうし、帰りたくないならウチに来なよ」
「…すみません、ありがとうございます……」
先程までの勢いは完全に無くなったようで、とりあえず狭い遊具の中から出てわが家へと向かう。
その道中も、新八くんはこの世の終わりでも見たかのような表情で私の後ろを黙って着いてきていた。
妙ちゃんには私からメッセージを送っておいたが、彼女からの返事も一言「迷惑かけてごめんなさい」とだけだった。
「さて、そろそろお話できるかな?」
「…はい、実は……」
私が差し出したグラスからそっとひと口、ふた口と水を飲んだ新八くんがテーブルにそれをそっと戻し、少し俯いたまま重い口を開いて何があったかとぽつりぽつりと話し始めた。
普段通り学校から帰ろうとした新八くんは、担任から小間使いとして雑用を言い渡され、学校に少し居残りになったそうだ。
そして妙ちゃんは先に帰ると言い、新八くんは雑用を終わらせるべく担任の準備室へと向かったそうだ。
そして何事もなく学校から家へ帰り、靴を脱いでいたところに慌てた様子の妙ちゃんが新八くんの元へと走ってきたそうだ。
あまりの慌てように驚いた新八くんは、妙ちゃんに何事かと問いかけたそうだ。
「あの、ね…新ちゃん。すごく言い難いんだけど…」
「どうしたんです?姉上」
妙ちゃんは、口元を引き攣らせながら新八くんの部屋を指差して、震える声で謝ってきたという。
「新ちゃんが大切にしていたあれ、あの…わざとじゃないんだけど、廊下で黒いのが出たから退治していたら、新ちゃんの部屋に入っちゃって…」
嫌な予感がして、震える手でドアを開けるとそこには何よりも大事にしていた女神のコレクションが散乱、破損しているものもいくつか転がっていた。
そして新八くんは声にならない声を上げて、妙ちゃんの制止を振り切り家を飛び出したそうだ。
つまりは新八くんの大好きなお通ちゃんグッズがほぼ半壊してしまって、この世の終わりのような顔で家を飛び出した所に私が通りかかったという事だった。
物凄く大切にしていたのは知っているけど、ここまでの傷を負わせるとはアイドルの力って凄い。
「お通ちゃんんんんんーーー」
「はいはい、もう今日はとことん泣きなさい」
「ぽん子さんんんーーーー!」
いやめっちゃくだらねぇぇと思わなくもなかったが、これだけ泣かれるとそんな事は口が裂けても言えないし、新八くんがお通ちゃんの追っかけを頑張っていることは知っているから大切なものを失うという点では悲しみを理解することは出来る。
私は苦笑しながら、そのうち血の涙でも流すんじゃないかというぐらい絶望している新八くんの背中を優しく撫で続けたのであった。
雨の日にレンズに着く水滴
その目には涙が滲んでいる。
「ど、どうした新八くん?涙が…」
「泣いてません、雨です、雨のせいです」
「いや晴天だから!一粒も雨降ってないから!」
「降ってます!降ってます!血の雨が!!」
「何?!怖いんだけど!何なのこの子!」
「ウワァァァァ!」
「ええーっ?!」
新八くんはそのまま走り出してしまい、残された私はただその背中を見送るしかなく呆然としていると、再び玄関のドアが開いた。
「妙ちゃんどうしたの?何があったの?」
「ぽん子さん…私…私…新ちゃんに謝らないと…」
どうやらただ事ではないようだ。
とりあえず青ざめた顔で震える妙ちゃんの背中を撫でて家に入ると、私は妙ちゃんに新八くんを探してくるから待っていて、と声をかけて外へ出た。
かなり取り乱しているようだったが、この辺りは車の通りも少ないから飛び出して事故に遭うことは無いだろうと、きょろきょろ辺りを見回しながらまずは近くを探す。
人が泣いていても怪しまれないところ、といってもそう無いだろうが、それらしき所は無いかと走り回っていると、案外すぐに彼を見つけることが出来た。
ベタに公園の遊具の中に座り込む新八くんに声をかけると、彼はビクッと肩を跳ね上げてこちらを振り向いたがその顔は生気を失っているかのようだ。
「どうしたの?妙ちゃんも真っ青になってたけど……」
「……放って置いてください……」
「そんな訳にはいかないよ」
「……もう、何もかも終わりなんです……もう……」
私も隣りに座り、丸くなった背中をポンポンと軽く叩いて話を聞こうとするが、新八くんはぐすぐすと鼻をすすり涙を零している。
我慢強い方だと思う彼がこんなになるまで泣くなんて、一体どうしたんだろうと考えるが何も思いつかず、彼が落ち着くのをひたすら待った。
そして日が暮れ始めた頃、だいぶ落ち着いたであろう新八くんが涙を流すのをやめて私に一言ぽつりと謝った。
「泣きたい時もあるよ。でもここじゃ冷えちゃうし、帰りたくないならウチに来なよ」
「…すみません、ありがとうございます……」
先程までの勢いは完全に無くなったようで、とりあえず狭い遊具の中から出てわが家へと向かう。
その道中も、新八くんはこの世の終わりでも見たかのような表情で私の後ろを黙って着いてきていた。
妙ちゃんには私からメッセージを送っておいたが、彼女からの返事も一言「迷惑かけてごめんなさい」とだけだった。
「さて、そろそろお話できるかな?」
「…はい、実は……」
私が差し出したグラスからそっとひと口、ふた口と水を飲んだ新八くんがテーブルにそれをそっと戻し、少し俯いたまま重い口を開いて何があったかとぽつりぽつりと話し始めた。
普段通り学校から帰ろうとした新八くんは、担任から小間使いとして雑用を言い渡され、学校に少し居残りになったそうだ。
そして妙ちゃんは先に帰ると言い、新八くんは雑用を終わらせるべく担任の準備室へと向かったそうだ。
そして何事もなく学校から家へ帰り、靴を脱いでいたところに慌てた様子の妙ちゃんが新八くんの元へと走ってきたそうだ。
あまりの慌てように驚いた新八くんは、妙ちゃんに何事かと問いかけたそうだ。
「あの、ね…新ちゃん。すごく言い難いんだけど…」
「どうしたんです?姉上」
妙ちゃんは、口元を引き攣らせながら新八くんの部屋を指差して、震える声で謝ってきたという。
「新ちゃんが大切にしていたあれ、あの…わざとじゃないんだけど、廊下で黒いのが出たから退治していたら、新ちゃんの部屋に入っちゃって…」
嫌な予感がして、震える手でドアを開けるとそこには何よりも大事にしていた女神のコレクションが散乱、破損しているものもいくつか転がっていた。
そして新八くんは声にならない声を上げて、妙ちゃんの制止を振り切り家を飛び出したそうだ。
つまりは新八くんの大好きなお通ちゃんグッズがほぼ半壊してしまって、この世の終わりのような顔で家を飛び出した所に私が通りかかったという事だった。
物凄く大切にしていたのは知っているけど、ここまでの傷を負わせるとはアイドルの力って凄い。
「お通ちゃんんんんんーーー」
「はいはい、もう今日はとことん泣きなさい」
「ぽん子さんんんーーーー!」
いやめっちゃくだらねぇぇと思わなくもなかったが、これだけ泣かれるとそんな事は口が裂けても言えないし、新八くんがお通ちゃんの追っかけを頑張っていることは知っているから大切なものを失うという点では悲しみを理解することは出来る。
私は苦笑しながら、そのうち血の涙でも流すんじゃないかというぐらい絶望している新八くんの背中を優しく撫で続けたのであった。
雨の日にレンズに着く水滴