近くて遠いあなたに恋をする話(山崎)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
坂田さんを交えて居酒屋に行ってから、山崎さんはよくお店に来てくれるようになった。
勿論土方さん、沖田さんや他の方と一緒の時もあるが、一人で来られる回数の方が多い。
それをきっかけに会話の回数が増えたことで、私は彼のことをもっと知ろうと思えるように変わってきた。
片思いであることは相変わらずだが、やはり遠目で見ているだけというのはどこかで心に嘘をついていたのだろう。
そういう訳で、最近の私は少しばかり浮かれている。
「ぽん子さん、唐揚げ定食を一つね」
「かしこまりました。お持ち帰りもですよね?」
「そうそう、すっかり覚えられちゃったね」
「土方さんのって分かりやすいですからね。毎度お疲れ様です」
「いやー、はは…ありがとう」
席に着いている山崎さんは、土方さんの持ち帰り用をあまり思い出したくは無いのか、顔を引き攣らせてため息をついた。
マヨネーズをお店でかけることは無いが、恐らく土方さんに届いたあとはたっぷりと掛けられているのだろう。
そしてそれを想像したであろう山崎さんの姿に哀愁を感じながらも、どうする事はできなくて会釈をした私はそそくさとその場を離れた。
「唐揚げ定食の持ち帰りも追加でお願いします」
「あいよ」
山崎さんの注文を伝えて、空いた席から皿を下げつつテーブルを拭きあげていれば、また注文が入り店内を慌ただしくくるくると動き回る。
個人のお店とはいえ、やはり昼時は忙しい。
「ぽん子ちゃん、揚がったよ~」
「はーい」
そうこうしているうちに揚げ上がった唐揚げをお弁当用と山崎さんに持っていく用とで手早く盛り付けて、揚げたてを急いで彼の所へと届ければ、人の良さそうな笑顔を向けられた。
「お弁当はこちらで預かっておきますね」
「ありがとう。頂きます」
パキッと箸を割った山崎さんに会釈をして離れ、店内を回りながらチラリと視線を寄越せば美味しそうに食べる彼の姿を捉えて、思わず口元が緩んでしまった。
「おや、ご機嫌かい?」
「えっ?!」
カウンターの中へと引っ込んで調理の手伝いをしていれば、おばさんからにこにこと話しかけられた私は、ビクッと体を揺らした。
「ぽん子ちゃん最近よくにこにこしてるわねぇ。何かいい事でもあったのかしら」
「えっ!あ、えっと……」
楽しそうに話してくるおばさんに、まさか「好きな人がよくお店に来て話しているから」などと言える訳もない。
興味津々のおばさんを前にあわあわと狼狽えることしかできず、救いの手を差し伸べるかのようなタイミングで会計を知らせるベルがチリンと鳴らされた。
「お、お会計に…」
「ぽん子さん、どうかした?」
だが、神は人選までは考えてはくれなかったらしい。振り向けばそこには、小首を傾げる山崎さんの姿があった。
そんな彼を見たおばさんは、いい話し相手を見つけたと言わんばかりに私より先にレジへ向かうと、私の肩を叩いて豪快に笑う。
「最近ぽん子ちゃんがご機嫌なのよ~!だからどうしたのかしらって思ってねぇ」
「そう言えばそうですね。何かいい事でもあったのかな」
「えっ!い、いや…別に…」
山崎さんからもにこやかな笑みを向けられ、真横はおばさんに固められ、ついに逃げ場を失ってしまった私は頬を熱くさせて俯いた。
「ありゃ、照れちゃったわ。ぽん子ちゃんたら、そういう顔も出来たんだねぇ」
「ぽん子さんは結構照れ屋さんだよね」
「最近急に可愛くなっちゃってね~!」
「も、もうその辺で…ね?」
まだ熱い頬のまま深呼吸をして、前のめりになっているおばさんの肩の辺りをグイグイと引っ張って制止すれば、おばさんは残念そうに眉を下げながら口を閉じた。
だがその時、タイミングよく入った注文に元気に返事をしたおばさんは、私に会計を任せてさっさとそちらへと向かい、取り残された私はやっと安心してレジへと取り掛かる。
そんな私たちの様子を黙って見ていた山崎さんに金額を告げ、お弁当の袋をカウンターに置くと、山崎さんはおばさんに視線をやりながら私に話しかけてきた。
「ぽん子さんも色々大変みたいだね」
「おばさんのことは気にしないで下さいね。娘のように思って下さっているみたいで…」
「そうみたいだね。お母さんって感じするよ」
「嬉しいんですが、からかわれるのはちょっと…」
先程のやり取りを思い出して、苦笑いをしながら受け取ったお金を仕舞う。
山崎さんは相変わらず和やかな雰囲気で楽しそうに笑うと、私にこっそりと耳打ちをしてきた。
「可愛いのは前からなのにね」
「えっ…」
パッと耳を押さえて、思わぬ言葉に目を見開く。
そんな私ににこにこしながら手を振って、お弁当を片手に山崎さんは颯爽とお店を出ていってしまった。
彼の言葉に、沸騰するように顔がじわじわと熱くなるのを感じた私は何度も深呼吸を繰り返し、やっとの思いでその熱を少しだけ抑えることが出来た。
そしてニヤけそうになる口をきゅっと結び、パタパタと忙しそうにしているおばさん達の所へ戻ると、おじさんから出来上がった料理を受け取りテーブルへと向かう。
「あらぽん子ちゃん、珍しいわね……」
「おや、ホントだ。あの子があんなことするたァねぇ」
鼻歌は照れ隠しの証拠
勿論土方さん、沖田さんや他の方と一緒の時もあるが、一人で来られる回数の方が多い。
それをきっかけに会話の回数が増えたことで、私は彼のことをもっと知ろうと思えるように変わってきた。
片思いであることは相変わらずだが、やはり遠目で見ているだけというのはどこかで心に嘘をついていたのだろう。
そういう訳で、最近の私は少しばかり浮かれている。
「ぽん子さん、唐揚げ定食を一つね」
「かしこまりました。お持ち帰りもですよね?」
「そうそう、すっかり覚えられちゃったね」
「土方さんのって分かりやすいですからね。毎度お疲れ様です」
「いやー、はは…ありがとう」
席に着いている山崎さんは、土方さんの持ち帰り用をあまり思い出したくは無いのか、顔を引き攣らせてため息をついた。
マヨネーズをお店でかけることは無いが、恐らく土方さんに届いたあとはたっぷりと掛けられているのだろう。
そしてそれを想像したであろう山崎さんの姿に哀愁を感じながらも、どうする事はできなくて会釈をした私はそそくさとその場を離れた。
「唐揚げ定食の持ち帰りも追加でお願いします」
「あいよ」
山崎さんの注文を伝えて、空いた席から皿を下げつつテーブルを拭きあげていれば、また注文が入り店内を慌ただしくくるくると動き回る。
個人のお店とはいえ、やはり昼時は忙しい。
「ぽん子ちゃん、揚がったよ~」
「はーい」
そうこうしているうちに揚げ上がった唐揚げをお弁当用と山崎さんに持っていく用とで手早く盛り付けて、揚げたてを急いで彼の所へと届ければ、人の良さそうな笑顔を向けられた。
「お弁当はこちらで預かっておきますね」
「ありがとう。頂きます」
パキッと箸を割った山崎さんに会釈をして離れ、店内を回りながらチラリと視線を寄越せば美味しそうに食べる彼の姿を捉えて、思わず口元が緩んでしまった。
「おや、ご機嫌かい?」
「えっ?!」
カウンターの中へと引っ込んで調理の手伝いをしていれば、おばさんからにこにこと話しかけられた私は、ビクッと体を揺らした。
「ぽん子ちゃん最近よくにこにこしてるわねぇ。何かいい事でもあったのかしら」
「えっ!あ、えっと……」
楽しそうに話してくるおばさんに、まさか「好きな人がよくお店に来て話しているから」などと言える訳もない。
興味津々のおばさんを前にあわあわと狼狽えることしかできず、救いの手を差し伸べるかのようなタイミングで会計を知らせるベルがチリンと鳴らされた。
「お、お会計に…」
「ぽん子さん、どうかした?」
だが、神は人選までは考えてはくれなかったらしい。振り向けばそこには、小首を傾げる山崎さんの姿があった。
そんな彼を見たおばさんは、いい話し相手を見つけたと言わんばかりに私より先にレジへ向かうと、私の肩を叩いて豪快に笑う。
「最近ぽん子ちゃんがご機嫌なのよ~!だからどうしたのかしらって思ってねぇ」
「そう言えばそうですね。何かいい事でもあったのかな」
「えっ!い、いや…別に…」
山崎さんからもにこやかな笑みを向けられ、真横はおばさんに固められ、ついに逃げ場を失ってしまった私は頬を熱くさせて俯いた。
「ありゃ、照れちゃったわ。ぽん子ちゃんたら、そういう顔も出来たんだねぇ」
「ぽん子さんは結構照れ屋さんだよね」
「最近急に可愛くなっちゃってね~!」
「も、もうその辺で…ね?」
まだ熱い頬のまま深呼吸をして、前のめりになっているおばさんの肩の辺りをグイグイと引っ張って制止すれば、おばさんは残念そうに眉を下げながら口を閉じた。
だがその時、タイミングよく入った注文に元気に返事をしたおばさんは、私に会計を任せてさっさとそちらへと向かい、取り残された私はやっと安心してレジへと取り掛かる。
そんな私たちの様子を黙って見ていた山崎さんに金額を告げ、お弁当の袋をカウンターに置くと、山崎さんはおばさんに視線をやりながら私に話しかけてきた。
「ぽん子さんも色々大変みたいだね」
「おばさんのことは気にしないで下さいね。娘のように思って下さっているみたいで…」
「そうみたいだね。お母さんって感じするよ」
「嬉しいんですが、からかわれるのはちょっと…」
先程のやり取りを思い出して、苦笑いをしながら受け取ったお金を仕舞う。
山崎さんは相変わらず和やかな雰囲気で楽しそうに笑うと、私にこっそりと耳打ちをしてきた。
「可愛いのは前からなのにね」
「えっ…」
パッと耳を押さえて、思わぬ言葉に目を見開く。
そんな私ににこにこしながら手を振って、お弁当を片手に山崎さんは颯爽とお店を出ていってしまった。
彼の言葉に、沸騰するように顔がじわじわと熱くなるのを感じた私は何度も深呼吸を繰り返し、やっとの思いでその熱を少しだけ抑えることが出来た。
そしてニヤけそうになる口をきゅっと結び、パタパタと忙しそうにしているおばさん達の所へ戻ると、おじさんから出来上がった料理を受け取りテーブルへと向かう。
「あらぽん子ちゃん、珍しいわね……」
「おや、ホントだ。あの子があんなことするたァねぇ」
鼻歌は照れ隠しの証拠