出会い編
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あれから私の書いた話は無事に雑誌へと掲載され、なかなかに好評だったらしいことを担当者から告げられてほっと胸を撫で下ろした私は、また少しだけ休み期間を貰うことが出来た。
仕事という肩の荷は降りたが、胸に重くのしかかる問題は未だ解決しておらず、ついには桜も花びらは落ち始めて葉桜へと移り変わっていた。
そして意を決して万事屋へと来た私は今、手土産を片手に抱きながら震える指で呼び鈴を鳴らしたが、中は静かなまま誰も出てくる気配がない。もう一度鳴らしてみても結果は同じだった。
「お仕事かな…」
そういえば初めて訪問した時にも同じように玄関前で狼狽えたんだっけ、あの時は神楽ちゃんと新八くんが引き戸を開けたから良かったのよね、と思わず笑みが零れた。
「いつでもって言ってたけど、今日は居ないのかな」
玄関の前でいつまでも立っていては不審に思われてしまうだろうかと不安に目を伏せると、呼び鈴とは反対側の引き戸が少し開いていることに気が付いた。
悪い気もしたがそっとその隙間を広げて中を伺ってみると、たたきには見慣れたブーツが乱暴に脱ぎ捨てられており、どうやら今この中に居るのは銀さんだけのようだ。
もう少し開けて声を掛けてみたが、相変わらずしんと静かな部屋からはなんの反応もない。
ただ奥の事務所に銀さんの腕がソファの背もたれらしき場所からチラリと見えていることに気付き、置き手紙だけしておこうと小さく挨拶をして万事屋の中へと入った。
「お邪魔します…」
あまり足音を立てないよう中へ入ると、やはり銀さんがソファの上で気持ちよさそうに眠っていた。
胸の上にはジャンプが開いたまま乗っていて、読みながら眠ったであろう彼が寝息を立てる度に少しだけ上下している。
その横をそろそろと通り過ぎ、銀さんの机で筆記具を拝借すると同時に、開けっ放しの障子窓から急な強い風に乗って桜の花びらが数枚ひらひらと吹き込んできた。
手土産を置いて窓を少しだけ閉めて振り返れば、花びらはあちらこちらへと床に落ちてしまっていた。
その内の一枚が銀さんの頬に着地し、一枚が髪にひっかかりふわふわと危うく揺れている。
「起きない…よね?」
そうっと近づき髪の花弁を取ろうとした時、きらりと光る銀髪がそよ風に揺れ、花弁はひらりとソファに落ちてしまった。
もう一枚はまだ頬に着いたままで、ゆらゆらと揺れている。
どこか誘っているようなその花弁に身をかがめて左手で静かに触れた時、銀さんから吐息が漏れてどうしようもなくその唇に触れてみたくなってしまった。
痛いほど早鐘を打つ心臓をどうにか押さえながらそこに軽く指で触れると、少しだけ冷たくて柔らかい感触がした。
きゅうっと胸を締め付けられるような痛みに、また目頭が熱くなって視界がぼやけそうになり慌てて手を引っ込めようとしたが、それは叶わなかった。
私の手首を握り締める手とは反対に紅い瞳が気だるそうに開き、銀さんの視線が私を捉えた瞬間、彼の胸にあったジャンプは床に音を立てて落ちてしまった。
「…ぽん子ちゃん、何してんの…」
寝起きの枯れた声で囁かれ、かぁっと頬が熱くなるのが自分でも嫌というほど分かったが、銀さんの手は私の手を離してはくれず言い逃れ仕様にも言葉が何一つ浮かんでこない。
そのままパクパクと口を開閉させていると、銀さんは私の手を掴んだまま反対の手で私を胸元へと引っ張りこんだ。
手首を掴んでいた手は離され、その代わり両手で背中に回されているようで、体を起こそうとしてもびくともしなかった。
耳元には銀さんの鼓動が響き、床に膝を着いたままこの状況を理解しようと視線を巡らすも、何も思い浮かばずひとまず謝ろうと口が動いた。
「あ、あの…」
「なに」
少しだけ冷たい声にビクッとするが、背中をトントン叩かれ怒ってねーよと言われ、少しだけ安堵する。
「勝手にお邪魔してすみません…あの、銀さんの顔に桜の花びらが……それで…」
「あー、取ってくれてたわけ?」
「…はい…」
へえ、と頭上から聞こえる声はどうやら本当に怒ってはいないようだ。
少しほっとしながらも離してくれない腕にはどうしたらいいのかと身じろぐと、ぐいっと頭を銀さんの胸に押し付けられた。
鼓動がより一層伝わってきて、ぎゅうっと目を閉じて神楽ちゃんの言葉を思い出す。
今ここで聞きたかったことを聞こう、と瞼をゆっくり開く。
「あの、銀さん」
「ぽん子、お前が何考えてんのか全然分かんねぇ」
「えっ…」
「あんなに笑ってくれてたのに急に仕事だから会えねぇとか言われて、どの位待てばいいかも分かんねーとか思ってたら…何だよ、アレ」
背中に回されていた腕が解け、解放された体を起こして座り直すと銀さんは床に落ちたジャンプの下に隠れていた雑誌を拾い、ソファにも置いていたらしい違う号の同じ雑誌をテーブルへと並べた。
見覚えのあるそれは、私が手をつけた話が載っている号のものだ。
どっかりと座り直した銀さんは、ぱらぱらと頁を捲りある所でその手を止めて広げ、また次の雑誌も同じように繰り返した。
「神楽にお前の名前で何か載ってるっつーから、読んだんだよ。
そしたら見つけた。多分間違ってねェよな?でも全然分かんねぇ」
「そ、それは…」
「それは?何?」
問い詰めるような口調に渡された雑誌から目を逸らすと、私の太ももに頁を開いたままの一冊の雑誌を置かれ、ある箇所を指されて息を飲む。
「なぁ、タイトルの頭文字取ったらそばにいてってなんだけど
これ、誰に宛ててんの?」
何も言えずに黙って下を向いたままの私に苛立ったのか、銀さんは私の顎を掴んで無理やりその瞳の中に私を映した。
気だるそうな瞳の中に冷たいものを感じて、必死に我慢していたのにとうとうぽろりと涙が溢れ始めた。
「俺に宛ててんだよな?だったら何でぽん子ちゃんが逃げるわけ?」
困ったように眉尻の下がった銀さんを見て、冷たいように見えたのは彼も悲しかったからなのかも知れないと思い、何とか言葉を紡いでいく。
上手く言えないかも知れないが、不思議ときっと彼なら分かってくれるはずだと思えた。
「銀さんがっ…女遊び…してるって……神楽ちゃんが…言ってたからっ……会いたいけど、会ってもっ……どんな顔…したらいいかって…分からなくって……でも……」
何とか言葉を紡ぐと、温かい銀さんの手が私の唇をそっと押さえた。
その表情は先程の困った顔に更に眉間に皺を寄せ、口元がひくついている。
「……………女遊び?ナニソレ?」
「えっと…神楽ちゃんが…」
やはり銀さんの女遊びというのは神楽ちゃんの勘違いだったようだと気づいた私は、彼に事のあらましを伝えると頭を抱えて神楽ちゃんへの恨みを呟き始めた。
その様子を見ていると急に私に向き直り、女遊びも毎日出歩いているのも嘘だと必死に弁解し始めた銀さんの姿に何だか段々おかしくなってきて、くすくすと笑うと彼は困ったように指先で頬をかいた。
「まぁ、あれだ。ぽん子ちゃんとこってバレたらアイツ着いてくるって聞かねぇだろうから黙ってたんだけどよ…多分そのせいで余計な誤解を…」
溜息をつきながら言う銀さんの姿はいつもの彼そのもので、私はすっかり引いた涙の残りを指先で拭ってその話を黙って横で聞いていた。
銀さんはそんな私を見つめたと思うと、「泣かして悪かったな」と小さく呟いた。
「銀さんが謝ることはありませんよ。それに私の気持ちは伝わっていたようですし、それで反対に銀さんを困らせてしまって…すみませんでした」
へらっと笑いながら答えると、銀さんは私の手をそっと握りしめてきた。その手は大きくて温かい。
そして言いにくそうに口を開いた。
「いや困ったのは確かだけど、あんな告白無しだろ。俺何もしてねーのに嫌われたと思ってかなり凹んでたからね。
そしたらあんな暗号を世に放ったと思ったら唇触るなんて急に積極的になるとかぽん子ちゃん読めなさすぎだろ
もうちょい分かりやすく頼むわ」
「あ、はい…すみません……」
言いにくそうだった割にズバズバと言う様は彼らしいというかなんというか。
さらりと唇のことまで言われ、もう何も言い返せずにいたら握り締められていた指は長い指に絡め取られ、くいっと引き寄せられてまた銀さんの胸の中に閉じ込められた。
頭上ではため息が聞こえたが、先程の重いものではなくどこか安心したような雰囲気が伝わってくる。
「いーよ、もう。ぽん子ちゃんが俺の事好きってわかったからもうそれで良いわ。今はとりあえず幸せ噛み締めるわ」
「えっ、えっと…」
「もうね、だいぶ前から俺もぽん子ちゃんと同じ気持ちなんですよ」
ぎゅうぎゅうと抱き締められながら、耳元で囁かれる擽ったさに身をよじるが抜け出させてはくれないらしい。
さらりと伝えられた言葉に耳を赤くする私を他所に、銀さんはそれはそれはとても楽しそうに笑っている。
「もうあれだ、ぽん子ちゃんが嫌って言うぐらいそばに居てやるよ」
「ぎ、銀さん……それって…」
ぎゅうぎゅう締められていた力が緩み、漸く少しだけ体を離した私は銀さんの顔を見て、またピタリと固まってしまった。
本当に嬉しそうに笑う銀さんがあまりにも格好よくて、思わず息を吸うのを忘れてしまうようだった。
「俺もお前が好きだっつってんの」
物書きさんの恋は、結ばれてもなお先が読めない構成になっているようです。
仕事という肩の荷は降りたが、胸に重くのしかかる問題は未だ解決しておらず、ついには桜も花びらは落ち始めて葉桜へと移り変わっていた。
そして意を決して万事屋へと来た私は今、手土産を片手に抱きながら震える指で呼び鈴を鳴らしたが、中は静かなまま誰も出てくる気配がない。もう一度鳴らしてみても結果は同じだった。
「お仕事かな…」
そういえば初めて訪問した時にも同じように玄関前で狼狽えたんだっけ、あの時は神楽ちゃんと新八くんが引き戸を開けたから良かったのよね、と思わず笑みが零れた。
「いつでもって言ってたけど、今日は居ないのかな」
玄関の前でいつまでも立っていては不審に思われてしまうだろうかと不安に目を伏せると、呼び鈴とは反対側の引き戸が少し開いていることに気が付いた。
悪い気もしたがそっとその隙間を広げて中を伺ってみると、たたきには見慣れたブーツが乱暴に脱ぎ捨てられており、どうやら今この中に居るのは銀さんだけのようだ。
もう少し開けて声を掛けてみたが、相変わらずしんと静かな部屋からはなんの反応もない。
ただ奥の事務所に銀さんの腕がソファの背もたれらしき場所からチラリと見えていることに気付き、置き手紙だけしておこうと小さく挨拶をして万事屋の中へと入った。
「お邪魔します…」
あまり足音を立てないよう中へ入ると、やはり銀さんがソファの上で気持ちよさそうに眠っていた。
胸の上にはジャンプが開いたまま乗っていて、読みながら眠ったであろう彼が寝息を立てる度に少しだけ上下している。
その横をそろそろと通り過ぎ、銀さんの机で筆記具を拝借すると同時に、開けっ放しの障子窓から急な強い風に乗って桜の花びらが数枚ひらひらと吹き込んできた。
手土産を置いて窓を少しだけ閉めて振り返れば、花びらはあちらこちらへと床に落ちてしまっていた。
その内の一枚が銀さんの頬に着地し、一枚が髪にひっかかりふわふわと危うく揺れている。
「起きない…よね?」
そうっと近づき髪の花弁を取ろうとした時、きらりと光る銀髪がそよ風に揺れ、花弁はひらりとソファに落ちてしまった。
もう一枚はまだ頬に着いたままで、ゆらゆらと揺れている。
どこか誘っているようなその花弁に身をかがめて左手で静かに触れた時、銀さんから吐息が漏れてどうしようもなくその唇に触れてみたくなってしまった。
痛いほど早鐘を打つ心臓をどうにか押さえながらそこに軽く指で触れると、少しだけ冷たくて柔らかい感触がした。
きゅうっと胸を締め付けられるような痛みに、また目頭が熱くなって視界がぼやけそうになり慌てて手を引っ込めようとしたが、それは叶わなかった。
私の手首を握り締める手とは反対に紅い瞳が気だるそうに開き、銀さんの視線が私を捉えた瞬間、彼の胸にあったジャンプは床に音を立てて落ちてしまった。
「…ぽん子ちゃん、何してんの…」
寝起きの枯れた声で囁かれ、かぁっと頬が熱くなるのが自分でも嫌というほど分かったが、銀さんの手は私の手を離してはくれず言い逃れ仕様にも言葉が何一つ浮かんでこない。
そのままパクパクと口を開閉させていると、銀さんは私の手を掴んだまま反対の手で私を胸元へと引っ張りこんだ。
手首を掴んでいた手は離され、その代わり両手で背中に回されているようで、体を起こそうとしてもびくともしなかった。
耳元には銀さんの鼓動が響き、床に膝を着いたままこの状況を理解しようと視線を巡らすも、何も思い浮かばずひとまず謝ろうと口が動いた。
「あ、あの…」
「なに」
少しだけ冷たい声にビクッとするが、背中をトントン叩かれ怒ってねーよと言われ、少しだけ安堵する。
「勝手にお邪魔してすみません…あの、銀さんの顔に桜の花びらが……それで…」
「あー、取ってくれてたわけ?」
「…はい…」
へえ、と頭上から聞こえる声はどうやら本当に怒ってはいないようだ。
少しほっとしながらも離してくれない腕にはどうしたらいいのかと身じろぐと、ぐいっと頭を銀さんの胸に押し付けられた。
鼓動がより一層伝わってきて、ぎゅうっと目を閉じて神楽ちゃんの言葉を思い出す。
今ここで聞きたかったことを聞こう、と瞼をゆっくり開く。
「あの、銀さん」
「ぽん子、お前が何考えてんのか全然分かんねぇ」
「えっ…」
「あんなに笑ってくれてたのに急に仕事だから会えねぇとか言われて、どの位待てばいいかも分かんねーとか思ってたら…何だよ、アレ」
背中に回されていた腕が解け、解放された体を起こして座り直すと銀さんは床に落ちたジャンプの下に隠れていた雑誌を拾い、ソファにも置いていたらしい違う号の同じ雑誌をテーブルへと並べた。
見覚えのあるそれは、私が手をつけた話が載っている号のものだ。
どっかりと座り直した銀さんは、ぱらぱらと頁を捲りある所でその手を止めて広げ、また次の雑誌も同じように繰り返した。
「神楽にお前の名前で何か載ってるっつーから、読んだんだよ。
そしたら見つけた。多分間違ってねェよな?でも全然分かんねぇ」
「そ、それは…」
「それは?何?」
問い詰めるような口調に渡された雑誌から目を逸らすと、私の太ももに頁を開いたままの一冊の雑誌を置かれ、ある箇所を指されて息を飲む。
「なぁ、タイトルの頭文字取ったらそばにいてってなんだけど
これ、誰に宛ててんの?」
何も言えずに黙って下を向いたままの私に苛立ったのか、銀さんは私の顎を掴んで無理やりその瞳の中に私を映した。
気だるそうな瞳の中に冷たいものを感じて、必死に我慢していたのにとうとうぽろりと涙が溢れ始めた。
「俺に宛ててんだよな?だったら何でぽん子ちゃんが逃げるわけ?」
困ったように眉尻の下がった銀さんを見て、冷たいように見えたのは彼も悲しかったからなのかも知れないと思い、何とか言葉を紡いでいく。
上手く言えないかも知れないが、不思議ときっと彼なら分かってくれるはずだと思えた。
「銀さんがっ…女遊び…してるって……神楽ちゃんが…言ってたからっ……会いたいけど、会ってもっ……どんな顔…したらいいかって…分からなくって……でも……」
何とか言葉を紡ぐと、温かい銀さんの手が私の唇をそっと押さえた。
その表情は先程の困った顔に更に眉間に皺を寄せ、口元がひくついている。
「……………女遊び?ナニソレ?」
「えっと…神楽ちゃんが…」
やはり銀さんの女遊びというのは神楽ちゃんの勘違いだったようだと気づいた私は、彼に事のあらましを伝えると頭を抱えて神楽ちゃんへの恨みを呟き始めた。
その様子を見ていると急に私に向き直り、女遊びも毎日出歩いているのも嘘だと必死に弁解し始めた銀さんの姿に何だか段々おかしくなってきて、くすくすと笑うと彼は困ったように指先で頬をかいた。
「まぁ、あれだ。ぽん子ちゃんとこってバレたらアイツ着いてくるって聞かねぇだろうから黙ってたんだけどよ…多分そのせいで余計な誤解を…」
溜息をつきながら言う銀さんの姿はいつもの彼そのもので、私はすっかり引いた涙の残りを指先で拭ってその話を黙って横で聞いていた。
銀さんはそんな私を見つめたと思うと、「泣かして悪かったな」と小さく呟いた。
「銀さんが謝ることはありませんよ。それに私の気持ちは伝わっていたようですし、それで反対に銀さんを困らせてしまって…すみませんでした」
へらっと笑いながら答えると、銀さんは私の手をそっと握りしめてきた。その手は大きくて温かい。
そして言いにくそうに口を開いた。
「いや困ったのは確かだけど、あんな告白無しだろ。俺何もしてねーのに嫌われたと思ってかなり凹んでたからね。
そしたらあんな暗号を世に放ったと思ったら唇触るなんて急に積極的になるとかぽん子ちゃん読めなさすぎだろ
もうちょい分かりやすく頼むわ」
「あ、はい…すみません……」
言いにくそうだった割にズバズバと言う様は彼らしいというかなんというか。
さらりと唇のことまで言われ、もう何も言い返せずにいたら握り締められていた指は長い指に絡め取られ、くいっと引き寄せられてまた銀さんの胸の中に閉じ込められた。
頭上ではため息が聞こえたが、先程の重いものではなくどこか安心したような雰囲気が伝わってくる。
「いーよ、もう。ぽん子ちゃんが俺の事好きってわかったからもうそれで良いわ。今はとりあえず幸せ噛み締めるわ」
「えっ、えっと…」
「もうね、だいぶ前から俺もぽん子ちゃんと同じ気持ちなんですよ」
ぎゅうぎゅうと抱き締められながら、耳元で囁かれる擽ったさに身をよじるが抜け出させてはくれないらしい。
さらりと伝えられた言葉に耳を赤くする私を他所に、銀さんはそれはそれはとても楽しそうに笑っている。
「もうあれだ、ぽん子ちゃんが嫌って言うぐらいそばに居てやるよ」
「ぎ、銀さん……それって…」
ぎゅうぎゅう締められていた力が緩み、漸く少しだけ体を離した私は銀さんの顔を見て、またピタリと固まってしまった。
本当に嬉しそうに笑う銀さんがあまりにも格好よくて、思わず息を吸うのを忘れてしまうようだった。
「俺もお前が好きだっつってんの」
物書きさんの恋は、結ばれてもなお先が読めない構成になっているようです。