出会い編
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「先生、そろそろデジタル化させましょう」
かちゃりと眼鏡をかけ直しながら放たれた担当者のその一言により、私はカラクリ…所謂パソコンを導入することになった。
だがこれまで殆ど触ったことも無いカラクリを今すぐ使えと言われても対応出来る訳もなく、一先ずは今まで書き溜めたものを入力していくという作業を課せられた。
その結果、私は食事すら店屋物を取り寄せるなどし、ここ数週間ほど完全なる引きこもり生活を送っていた。
元々凝り性であることもあり、この生活自体はさほど苦では無い。
だが慣れない作業に身体の方が時々悲鳴をあげており、窓の外を見ては背伸びをしながら銀色のあの人の姿はないかと探しては見つけられずため息をつく。
(あれから銀さん、お団子屋さんにすら来ていないような…)
三度目に会えたあの時、勇気をだして誘ってはみたけれど本当に少しの時間で彼は帰ってしまった。
顔見知り程度の関係ではそのようなものだろうが、さほど銀さんとの距離は悲しいことに縮まっては居ないだろう。
「会いに行ってみようかな…」
ぽつりと呟けば、目の前の機械からは小さく動作音がして、仕事は?と咎められた気がした。
(それなりに入力も出来るようになったし、少しだけ新しい話も書き始められたことだから、むしろ身体のために休憩と思って…)
そう心の中で言い訳をし、作業服のTシャツからいそいそと着物に着替えて髪型を整えていると、ピンポーンとチャイムが鳴った。
この家への訪問者など、配達の方を除けばただ一人しかいない。
もしその人であればどうしてまた出掛けようという時に…とため息をつきながら私は玄関へと向かった。
「先生いるんでしょー開けてくださーい」
案の定、そのたった一人の担当者からコンコンと何度も扉を叩かれる中、じわりと警戒しながらしっかりと力を入れて少しだけドアの隙間を開けると、想像通りその隙間から思い切り扉を掴まれた。
こちらも負けじとドアノブを握りしめて応戦すれば、招かれざる訪問客は「ちょっと!ぽん田先生!」と言いながらかなり焦っている。
「なんで閉めようとするんですか!」
「貴方が無理やり開けようとしたからです!入力なら進んでます!原稿ならまだ序盤も序盤もです!カラクリを使うならメールでのやり取りでいいって言ったじゃないですか!」
「アンタがメール寄越さないからこうして来たんですよ!」
「そうでしたっけ」
ぎゃあぎゃあと扉を挟んで揉めていると、突然あれほど引っ張りあっていた扉が勢いよく閉まった。
よろけながらも何とか体勢を整えると、外で揉めている声が聞こえていることに気づき、もしかして誰かに通報でもされてしまったかと慌てて扉を開けると銀色の彼が、彼よりも一回りほど小さい担当者の胸ぐらを掴んでいた。
「ぎっ銀さん!?」
「ちょお、ちょっと!何なんですか!お二人知り合いなんですか?!」
「あぁ?知り合いも何も関係ねーだろ。てめぇこそ誰だよぽん子のストーカーかコラ」
体格のいい銀さんに締めあげられ、担当者は苦しそうな顔で私に助けを求めてきたが、初めて見た銀さんの怒りの表情に思わず竦んでしまい、彼の名前をか細く呼ぶことしか出来ずにいた。
チラリと私を見た銀さんの瞳は鋭く、赤いその瞳に射抜かれたように背筋には冷たい何かが駆け巡り、喉の締まるような錯覚さえ感じる。
「旦那ァ、やり過ぎですぜ」
そのまま固まっていると、聞き覚えのある声が飛んできて、その人は宥めるように銀さんの腕をポンと軽く叩いた。
「沖田さん!」
「よぉ引きこもりの姉ちゃん。珍しく人間らしい格好ですねィ」
以前も勘違いから通報されてしまった時にお世話になったお巡りさんこと、真選組の沖田さんは、解放されて咳き込む担当者に向かって「アンタも大変ですねぇ。また今度にしな」と言いながら追い払うように手を振った。
その言葉と仕草に助かった、といった顔をした担当者もまた沖田さんと私に頭を下げて逃げるように帰ってしまった。
銀さんは困難した表情で私と沖田さんの顔を見比べ、今度は沖田さんの両肩をがしりと掴んだ。
「沖田くぅん?何、全部知ってたの?」
「何の話でさァ」
「キミさぁ、大人をからかうのも大概にしとけよ?」
「何言ってんでィ旦那。俺ァ団子食ってたら目の前の女の家に男が無理やり押し入ろうとしてっから、面倒なことが起こる前に助けに行った方が良いかも知れねぇと事実を述べた迄ですぜ」
「いや言い方ァァ!!明らかにお前ら三人、顔見知りだろ!誰だよアイツ!」
「何言ってんでさ旦那!もし通報されたら出動しなきゃなんねぇでしょうが!クソほど面倒くせェや」
「面倒ってお前が面倒って意味かよ!紛らわしい言い方してんじゃねぇよこの税金ドロボーが!焦って損したわ!!」
銀さんはぎゃあぎゃあと喚きながら、初めて私と会った時のように沖田さんの体を揺さぶりながら怒りを露わにしていた。
理由はどうあれ私の身を案じて慌てて駆けつけてくれた様で、嬉しいような申し訳ないような気持ちで胸がいっぱいになる。
「いやぁ、ところでまさか旦那がこのモッサリ女にねぇ…」
揺さぶりが止まった瞬間、沖田さんがいつもの意地の悪そうな顔でニンマリと私と銀さんを見比べた後に楽しそうに言った。
「は?いきなり何言ってんの沖田くん?ねぇ何言ってんの?」
「ぽん田さんにもようやく春が」
「沖田さん、さっきから何を…」
「まっ、お二人共頑張ってくだせェ」
沖田さんは銀さんの手を払い除けると、乱れた隊服を正した。
そうしていつものひょうひょうとした態度でヒラリと手を振り去っていった。
銀さんはというと、気まずそうに頬をポリポリと掻きながらその後ろ姿を眺めていたが、私に視線を寄越したその目は今はいつもの穏やかなものだ。
「その…早とちりしたみてーで悪かったな」
「いえ!騒いでいたことに違いありませんから…それに、また会えて嬉しかったので」
ふふ、と笑いながら言うと銀さんは目を丸くした。かと思えば今度はぷっと吹き出して、口を手元で隠しながら、クックッと横を向いて笑っている。
「はーっ、そーかそーか」
「銀さん?」
ひとしきり笑った後、こちらを向いた銀さんはうっすら滲んだ涙を拭ってウンウンと頷いた。
「俺も」
「えっ?」
「俺もぽん子ちゃんに会えて嬉しかったぜ」
真正面でニカッと笑うその姿に、やっぱり眩しい人だなと一瞬くらりと目眩を起こしそうになった。
いつだってこの人はキラキラしていて格好いい。
ぽうっと見とれていると、銀さんは私の肩をトントンと指で叩いてきた。
「んで、着替えてるっつー事はどこかにお出かけ前なんだろ?」
「えっと…万事屋さんへ向かう予定でした!でもお会いできたので…」
「うちに?依頼か?」
貴方に会いたくてと面と向かって言える訳もなく、もごもごと口篭りながら視線を逸らして、どう伝えようかと思考を巡らせた。
文字を仕事にしているのに、彼の前ではその技術も全くもって発揮できず無意味なものとなってしまう。
「…いつでもいらしていいと言われたので、息抜きにと…」
何とか捻り出した言葉を呟けば、銀さんは大きな右手をこちらへ差し出したかと思うと、私の手をそっと握って少し引き寄せた。
「んじゃあ、ちょっくら外へお連れしましょうかね。引きこもりのお嬢さん?」
「ひ、引きこもりって…お嬢さんって…」
あれよあれよという間に私は外へと連れ出され、あっという間に銀ちゃんのペースに飲まれていく。
私の好きな人は本当に不思議な人、そう思いながら、楽しそうな背中を眺めて私も足が弾むのだった。
「そういや誰だったんだよアイツ…」
「そうでした、あの方は…」
(無事に誤解も解けました)
かちゃりと眼鏡をかけ直しながら放たれた担当者のその一言により、私はカラクリ…所謂パソコンを導入することになった。
だがこれまで殆ど触ったことも無いカラクリを今すぐ使えと言われても対応出来る訳もなく、一先ずは今まで書き溜めたものを入力していくという作業を課せられた。
その結果、私は食事すら店屋物を取り寄せるなどし、ここ数週間ほど完全なる引きこもり生活を送っていた。
元々凝り性であることもあり、この生活自体はさほど苦では無い。
だが慣れない作業に身体の方が時々悲鳴をあげており、窓の外を見ては背伸びをしながら銀色のあの人の姿はないかと探しては見つけられずため息をつく。
(あれから銀さん、お団子屋さんにすら来ていないような…)
三度目に会えたあの時、勇気をだして誘ってはみたけれど本当に少しの時間で彼は帰ってしまった。
顔見知り程度の関係ではそのようなものだろうが、さほど銀さんとの距離は悲しいことに縮まっては居ないだろう。
「会いに行ってみようかな…」
ぽつりと呟けば、目の前の機械からは小さく動作音がして、仕事は?と咎められた気がした。
(それなりに入力も出来るようになったし、少しだけ新しい話も書き始められたことだから、むしろ身体のために休憩と思って…)
そう心の中で言い訳をし、作業服のTシャツからいそいそと着物に着替えて髪型を整えていると、ピンポーンとチャイムが鳴った。
この家への訪問者など、配達の方を除けばただ一人しかいない。
もしその人であればどうしてまた出掛けようという時に…とため息をつきながら私は玄関へと向かった。
「先生いるんでしょー開けてくださーい」
案の定、そのたった一人の担当者からコンコンと何度も扉を叩かれる中、じわりと警戒しながらしっかりと力を入れて少しだけドアの隙間を開けると、想像通りその隙間から思い切り扉を掴まれた。
こちらも負けじとドアノブを握りしめて応戦すれば、招かれざる訪問客は「ちょっと!ぽん田先生!」と言いながらかなり焦っている。
「なんで閉めようとするんですか!」
「貴方が無理やり開けようとしたからです!入力なら進んでます!原稿ならまだ序盤も序盤もです!カラクリを使うならメールでのやり取りでいいって言ったじゃないですか!」
「アンタがメール寄越さないからこうして来たんですよ!」
「そうでしたっけ」
ぎゃあぎゃあと扉を挟んで揉めていると、突然あれほど引っ張りあっていた扉が勢いよく閉まった。
よろけながらも何とか体勢を整えると、外で揉めている声が聞こえていることに気づき、もしかして誰かに通報でもされてしまったかと慌てて扉を開けると銀色の彼が、彼よりも一回りほど小さい担当者の胸ぐらを掴んでいた。
「ぎっ銀さん!?」
「ちょお、ちょっと!何なんですか!お二人知り合いなんですか?!」
「あぁ?知り合いも何も関係ねーだろ。てめぇこそ誰だよぽん子のストーカーかコラ」
体格のいい銀さんに締めあげられ、担当者は苦しそうな顔で私に助けを求めてきたが、初めて見た銀さんの怒りの表情に思わず竦んでしまい、彼の名前をか細く呼ぶことしか出来ずにいた。
チラリと私を見た銀さんの瞳は鋭く、赤いその瞳に射抜かれたように背筋には冷たい何かが駆け巡り、喉の締まるような錯覚さえ感じる。
「旦那ァ、やり過ぎですぜ」
そのまま固まっていると、聞き覚えのある声が飛んできて、その人は宥めるように銀さんの腕をポンと軽く叩いた。
「沖田さん!」
「よぉ引きこもりの姉ちゃん。珍しく人間らしい格好ですねィ」
以前も勘違いから通報されてしまった時にお世話になったお巡りさんこと、真選組の沖田さんは、解放されて咳き込む担当者に向かって「アンタも大変ですねぇ。また今度にしな」と言いながら追い払うように手を振った。
その言葉と仕草に助かった、といった顔をした担当者もまた沖田さんと私に頭を下げて逃げるように帰ってしまった。
銀さんは困難した表情で私と沖田さんの顔を見比べ、今度は沖田さんの両肩をがしりと掴んだ。
「沖田くぅん?何、全部知ってたの?」
「何の話でさァ」
「キミさぁ、大人をからかうのも大概にしとけよ?」
「何言ってんでィ旦那。俺ァ団子食ってたら目の前の女の家に男が無理やり押し入ろうとしてっから、面倒なことが起こる前に助けに行った方が良いかも知れねぇと事実を述べた迄ですぜ」
「いや言い方ァァ!!明らかにお前ら三人、顔見知りだろ!誰だよアイツ!」
「何言ってんでさ旦那!もし通報されたら出動しなきゃなんねぇでしょうが!クソほど面倒くせェや」
「面倒ってお前が面倒って意味かよ!紛らわしい言い方してんじゃねぇよこの税金ドロボーが!焦って損したわ!!」
銀さんはぎゃあぎゃあと喚きながら、初めて私と会った時のように沖田さんの体を揺さぶりながら怒りを露わにしていた。
理由はどうあれ私の身を案じて慌てて駆けつけてくれた様で、嬉しいような申し訳ないような気持ちで胸がいっぱいになる。
「いやぁ、ところでまさか旦那がこのモッサリ女にねぇ…」
揺さぶりが止まった瞬間、沖田さんがいつもの意地の悪そうな顔でニンマリと私と銀さんを見比べた後に楽しそうに言った。
「は?いきなり何言ってんの沖田くん?ねぇ何言ってんの?」
「ぽん田さんにもようやく春が」
「沖田さん、さっきから何を…」
「まっ、お二人共頑張ってくだせェ」
沖田さんは銀さんの手を払い除けると、乱れた隊服を正した。
そうしていつものひょうひょうとした態度でヒラリと手を振り去っていった。
銀さんはというと、気まずそうに頬をポリポリと掻きながらその後ろ姿を眺めていたが、私に視線を寄越したその目は今はいつもの穏やかなものだ。
「その…早とちりしたみてーで悪かったな」
「いえ!騒いでいたことに違いありませんから…それに、また会えて嬉しかったので」
ふふ、と笑いながら言うと銀さんは目を丸くした。かと思えば今度はぷっと吹き出して、口を手元で隠しながら、クックッと横を向いて笑っている。
「はーっ、そーかそーか」
「銀さん?」
ひとしきり笑った後、こちらを向いた銀さんはうっすら滲んだ涙を拭ってウンウンと頷いた。
「俺も」
「えっ?」
「俺もぽん子ちゃんに会えて嬉しかったぜ」
真正面でニカッと笑うその姿に、やっぱり眩しい人だなと一瞬くらりと目眩を起こしそうになった。
いつだってこの人はキラキラしていて格好いい。
ぽうっと見とれていると、銀さんは私の肩をトントンと指で叩いてきた。
「んで、着替えてるっつー事はどこかにお出かけ前なんだろ?」
「えっと…万事屋さんへ向かう予定でした!でもお会いできたので…」
「うちに?依頼か?」
貴方に会いたくてと面と向かって言える訳もなく、もごもごと口篭りながら視線を逸らして、どう伝えようかと思考を巡らせた。
文字を仕事にしているのに、彼の前ではその技術も全くもって発揮できず無意味なものとなってしまう。
「…いつでもいらしていいと言われたので、息抜きにと…」
何とか捻り出した言葉を呟けば、銀さんは大きな右手をこちらへ差し出したかと思うと、私の手をそっと握って少し引き寄せた。
「んじゃあ、ちょっくら外へお連れしましょうかね。引きこもりのお嬢さん?」
「ひ、引きこもりって…お嬢さんって…」
あれよあれよという間に私は外へと連れ出され、あっという間に銀ちゃんのペースに飲まれていく。
私の好きな人は本当に不思議な人、そう思いながら、楽しそうな背中を眺めて私も足が弾むのだった。
「そういや誰だったんだよアイツ…」
「そうでした、あの方は…」
(無事に誤解も解けました)