お題
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今日は担当さんとの待ち合わせで外出の予定があった。
面倒だと思いながらも着物に袖を通し、外に出てみればあいにくの空模様で、只でさえ億劫な気持ちに拍車が掛かる。
だが仕事は仕事なのだから仕方ないと紺色の傘を広げ、勢いこそ強くはないがポツポツと弾かれる雨音を聞きながら歩き出した。
待ち合わせは喫茶店だったのだが、出たついでに筆記具を買おうとコンビニを選んだのだが、それは間違いだったようだ。
「えっ…えっ?!わ、私の傘が…」
傘立てに立てかけていたはずの私の傘は姿を消しており、盗まれてしまったことは一目瞭然であった。
先程よりも大きな雨粒がぼたぼたと打ち付ける様に、慌てて店内に戻るが惜しくも最後の一本が売れてしまったところだった。
たしかに突然の雨といえばそうだったかも知れないが、傘が売り切れてしまった今、私は濡れ歩くしかないのだろうかと頭を抱えるしかない。
「ど、どうしよう……濡れたくない……」
ショックに心が折れそうになりながら空を見上げるも、曇った天気はすぐには変わりそうもない。
もう濡れて向かうしかないか…と諦めかけた時、私の肩がポンと叩かれた。
「こんな所で何してるアルか?」
「えっ!?か、神楽ちゃん!」
驚いて振り向けば、いつものように酢昆布を噛りながら傘を差した神楽ちゃんが不思議そうに私を見上げて首を傾げている。
何というタイミングで現れてくれたのだろうと喜びながら、私は神楽ちゃんの手をそっと握った。
「神楽ちゃん!お願いがあるの!」
「ど、どしたネ?ぽん子からお願いなんて珍しいアルな」
握る手に力を入れたら神楽ちゃんが引き気味に仰け反ったが、私は神楽ちゃんに事情を話した。
「そんな訳で、付き添いがいますがお気になさらず…」
「いやいやいや、気にしたくなくても視界に入りますから。どんだけ食べるんですか?この子…」
担当さんが顔を引きつらせながら、私の隣りでひたすらパフェやらパンケーキやらを食べ続ける神楽ちゃんを横目で見た。
「何だよオメー、さっきからこっちのことチラチラ見てんじゃねーぞコラァ」
「めちゃくちゃ口悪いし、ホント何なんですか」
「このパフェは一口たりとも渡さないネ!」
「いや誰も狙ってないから!」
お腹を壊しやしないだろうかと言う程食べ進める神楽ちゃんに、担当さんは信じられないといった顔をしていたが、それを振り払うように私から受け取った原稿データに目を通し始めた。
「ぽん子はちゃんと仕事してたアルな。銀ちゃんがいっつも遊びに行ってるみたいだから、お仕事なんて出来ないと思ってたネ」
「神楽ちゃんが思ってるよりは来てないと思うけどなぁ」
「でも安心したヨ。今日はいっぱい食べられて幸せアル!」
「本当にたくさん食べてるけど大丈夫?お腹壊さないようにね?」
まん丸に膨らんだお腹を擦りながら神楽ちゃんは満足そうに笑うが、本当に大丈夫なのだろうかと少し心配になる。
そうこうしているうちに、確認が終わったのか担当さんが顔を上げて、私の方に画面を見せながら今後の予定について話をし始めた。
神楽ちゃんも、分からないながらに同じようにじっと画面を見ながら聞く姿が可愛らしい。
「そういう訳なので、よろしくお願いします」
「分かりました。こちらこそお願いします」
双方頭を下げで、無事に打ち合わせは終了した。
ホッとして外を見てみれば、すっかり雨は止んだようで、地面が太陽の光にキラキラと反射している。
「神楽ちゃん、終わったから帰ろうか」
「ごちそうさまアル!帰ったら銀ちゃんに自慢しちゃろ」
「こらこら、怒られちゃうよ?」
まだ少し口の端についていた汚れを拭い、何枚かに重なった伝票を手に席を立つと、担当さんも腰を上げた。
「お付き合い、続いているようで何よりです」
「えっと…はい、ありがとうございます」
神楽ちゃんの言う「銀ちゃん」で、銀さんから胸ぐらを掴まれたことを思い出したのか、担当さんは苦笑いしている。
傍で見ていた私も怖かったのだから、初対面で苦しい思いをした担当さんはもっと恐ろしく感じただろう。
その節は…と、代わりに頭を下げたところで神楽ちゃんから急かされ、簡単に挨拶を済ませてお会計に向かった。
「すっかり晴れたアルな!」
「晴れたねぇ。神楽ちゃんのおかげで雨に濡れずに済んだし、帰りは心配なくて良かったよ~。ありがとうね」
くりくりとした大きな瞳を輝かせた神楽ちゃんの頭を撫でると、照れ臭そうにおすまし顔をして、ふふんと言った。
お店で別れた私と神楽ちゃんだったが、様子がおかしいと気付いた銀さんが神楽ちゃんに尋問し、わが家に駆け込んでくるのは数時間後のことだった。
面倒だと思いながらも着物に袖を通し、外に出てみればあいにくの空模様で、只でさえ億劫な気持ちに拍車が掛かる。
だが仕事は仕事なのだから仕方ないと紺色の傘を広げ、勢いこそ強くはないがポツポツと弾かれる雨音を聞きながら歩き出した。
待ち合わせは喫茶店だったのだが、出たついでに筆記具を買おうとコンビニを選んだのだが、それは間違いだったようだ。
「えっ…えっ?!わ、私の傘が…」
傘立てに立てかけていたはずの私の傘は姿を消しており、盗まれてしまったことは一目瞭然であった。
先程よりも大きな雨粒がぼたぼたと打ち付ける様に、慌てて店内に戻るが惜しくも最後の一本が売れてしまったところだった。
たしかに突然の雨といえばそうだったかも知れないが、傘が売り切れてしまった今、私は濡れ歩くしかないのだろうかと頭を抱えるしかない。
「ど、どうしよう……濡れたくない……」
ショックに心が折れそうになりながら空を見上げるも、曇った天気はすぐには変わりそうもない。
もう濡れて向かうしかないか…と諦めかけた時、私の肩がポンと叩かれた。
「こんな所で何してるアルか?」
「えっ!?か、神楽ちゃん!」
驚いて振り向けば、いつものように酢昆布を噛りながら傘を差した神楽ちゃんが不思議そうに私を見上げて首を傾げている。
何というタイミングで現れてくれたのだろうと喜びながら、私は神楽ちゃんの手をそっと握った。
「神楽ちゃん!お願いがあるの!」
「ど、どしたネ?ぽん子からお願いなんて珍しいアルな」
握る手に力を入れたら神楽ちゃんが引き気味に仰け反ったが、私は神楽ちゃんに事情を話した。
「そんな訳で、付き添いがいますがお気になさらず…」
「いやいやいや、気にしたくなくても視界に入りますから。どんだけ食べるんですか?この子…」
担当さんが顔を引きつらせながら、私の隣りでひたすらパフェやらパンケーキやらを食べ続ける神楽ちゃんを横目で見た。
「何だよオメー、さっきからこっちのことチラチラ見てんじゃねーぞコラァ」
「めちゃくちゃ口悪いし、ホント何なんですか」
「このパフェは一口たりとも渡さないネ!」
「いや誰も狙ってないから!」
お腹を壊しやしないだろうかと言う程食べ進める神楽ちゃんに、担当さんは信じられないといった顔をしていたが、それを振り払うように私から受け取った原稿データに目を通し始めた。
「ぽん子はちゃんと仕事してたアルな。銀ちゃんがいっつも遊びに行ってるみたいだから、お仕事なんて出来ないと思ってたネ」
「神楽ちゃんが思ってるよりは来てないと思うけどなぁ」
「でも安心したヨ。今日はいっぱい食べられて幸せアル!」
「本当にたくさん食べてるけど大丈夫?お腹壊さないようにね?」
まん丸に膨らんだお腹を擦りながら神楽ちゃんは満足そうに笑うが、本当に大丈夫なのだろうかと少し心配になる。
そうこうしているうちに、確認が終わったのか担当さんが顔を上げて、私の方に画面を見せながら今後の予定について話をし始めた。
神楽ちゃんも、分からないながらに同じようにじっと画面を見ながら聞く姿が可愛らしい。
「そういう訳なので、よろしくお願いします」
「分かりました。こちらこそお願いします」
双方頭を下げで、無事に打ち合わせは終了した。
ホッとして外を見てみれば、すっかり雨は止んだようで、地面が太陽の光にキラキラと反射している。
「神楽ちゃん、終わったから帰ろうか」
「ごちそうさまアル!帰ったら銀ちゃんに自慢しちゃろ」
「こらこら、怒られちゃうよ?」
まだ少し口の端についていた汚れを拭い、何枚かに重なった伝票を手に席を立つと、担当さんも腰を上げた。
「お付き合い、続いているようで何よりです」
「えっと…はい、ありがとうございます」
神楽ちゃんの言う「銀ちゃん」で、銀さんから胸ぐらを掴まれたことを思い出したのか、担当さんは苦笑いしている。
傍で見ていた私も怖かったのだから、初対面で苦しい思いをした担当さんはもっと恐ろしく感じただろう。
その節は…と、代わりに頭を下げたところで神楽ちゃんから急かされ、簡単に挨拶を済ませてお会計に向かった。
「すっかり晴れたアルな!」
「晴れたねぇ。神楽ちゃんのおかげで雨に濡れずに済んだし、帰りは心配なくて良かったよ~。ありがとうね」
くりくりとした大きな瞳を輝かせた神楽ちゃんの頭を撫でると、照れ臭そうにおすまし顔をして、ふふんと言った。
お店で別れた私と神楽ちゃんだったが、様子がおかしいと気付いた銀さんが神楽ちゃんに尋問し、わが家に駆け込んでくるのは数時間後のことだった。