お付き合い編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
トンテンカンテン、くそっトンテンカンテンくそがっ。
リズミカルに鳴らされる音に混じって、仕事中の男の声が時々合いの手のように入り込む。
坂田銀時は今、屋根の修理を行っていた。
「銀さーん、こっち終わりました~」
「そーかそーか、じゃあもう新八くんに任せて俺は降りてもいいよね?」
「ダメに決まってんでしょ!まだあと五軒は残ってますよ!」
「何だよ意味わかんねーよ、何で終わらねーんだよ、もう何日屋根に登ってると思ってんだよ、俺らは大工じゃねぇんだよ」
大工でもないこの男がなぜ屋根の修理をしているかというと、答えは単純明快で、何でも屋さんだからだ。
季節外れの突風に竜巻がかぶき町を襲い、梅雨の前に修繕をしなければならないが大工の人手が足りないということで駆り出された銀時と新八は、こうして連日屋根の上で作業をしている。
「しっかりお給料も貰えてるんですから、文句言わないで下さい!」
しっかり者の新八が発破をかけるが、その心は銀時には伝わらないようだ。
銀時は作業こそしっかりすれど、休憩中にはぼんやりと空を見上げたり、時折深いため息を吐くようになっていた。
「ダメネ新八ィ。ここんとこぽん子と会ってないから、銀ちゃん恋する乙女みたいになっちまってるヨ」
「気持ち悪いこと言わないでよ神楽ちゃん…いい大人が恋する乙女って…」
大方の修繕を終えて、二人はやっと地面に足をつけることが出来たが、銀時はずっと浮かない顔をしていた。
作業の邪魔になるからと待機を命じられていた神楽も、さすがに心配そうに銀時の顔を覗き込むと、銀ちゃん元気出せヨ、と呟いた。
「ねー銀ちゃん、ぽん子といつから会ってないアルか?」
「あー、今月入る前からだからな…ひと月ぐれぇ?」
「マジでか!私が銀ちゃんの代わりに会ってやってもいいヨ?」
「何でだよ!俺が会わなきゃ意味ねえだろうが」
「ここの所立て込んでるとは思っていたけど、そんなに会ってなかったんですね…」
三人並んで配られた弁当をつつきながら思い出すのは、それぞれに思い浮かべるぽん子だ。
神楽は、いつも美味しいものを持ってきてくれる優しい友人の顔。
新八は、頼りない社長を支える稀有な存在で、仕事をこなすお姉さんの顔。
銀時はというと、ジャージ姿でもんどりうったり寝不足で酷い顔をしていたり、世話のやける大切な彼女の顔。
そして何より、あの豊満な体を思い出しては触れられないことに苛立ちを通り越して、二度と触れることが出来ないのではという絶望感に苛まれていた。
「銀ちゃん一瞬でちょっと老けたアル」
「明日お休みを頂いたらどうです?働き詰めも悪いですよ」
「そうだな…」
こうして多少の希望を取り戻した銀時は、何とか午後を乗り越え、明日に備えて沈むように寝た。
ついには無言で仕事に取り組み、帰宅後は直ぐに虚ろな目で布団へ潜り込んだ銀時を見て、神楽は明日のぽん子の身を案じるしかなかった。
「アレ大丈夫かヨ…銀ちゃんもしかして、ぽん子のことヤリ尽くすんじゃネ?」
「ちょ!ちょっと!女の子がそういう事を口にしちゃいけません!!」
「考えてみろヨ。普段ちょいちょいエロい事してたはずなのに、一ヶ月もチョメチョメできず、それがついに解放されるってヤバくね?」
「た、たしかに……」
「今度ぽん子には湿布と痛み止めでも差し入れるネ」
翌日、心配して万事屋に来た新八と、マイペースに寝坊していた神楽が顔を合わせた時には、銀時の姿はどこにも見当たらない。
いつもなら腹を掻きながら起きてくる時間に既に居ないとは…と、たった一つであろう行先にいるぽん子の顔を思い浮かべると、心の中でそっと手を合わせた。
一方、銀時はというと、子供らの予想通りにぽん子の家の前に立っていた。
だが玄関前で鍵を持ったまま、銀時は事もあろうに、その持ち慣れていた筈の鍵を握り替えては挙動不審にソワソワしている。
「あー…クソッ…まさか夜明け前に完全に目ェ冴えて、七時まで待って限界でぽん子ん家来るとか遠足のガキか俺は……」
ぼそぼそと呟きながらも、静かに鍵を開ける。
もしかするとぽん子が寝ているかもしれないという配慮だが、もはや不審者のそれにしか見えないが、偶然にも周りには人っ子一人見当たらない。
そうして、そっと玄関を開けてぽん子が寝ているであろう仕事部屋へと向かう途中、勝手に万事屋から持ち込んだ私物部屋に何やら気配を感じて銀時は足を止めた。
「ま、ま、まさか……」
浮気、という文字が頭をよぎった。
サァッと青ざめた銀時は、暴れる心臓を抑えながら頭を振った。
(いや、まさか、ぽん子に限ってそんなこと無いだろ。担当のヤローが泊まっているのかもしれねーし。
それはそれで勝手に布団を使われて物凄く不快だけどまだ承諾できる範囲内…。
もしここに寝ているのが男だったらソイツをタコ殴りにしちまうかもしれねぇが、その時はもうその時だ。できれば勘違いであってくれ。って、どういう勘違いだ)
深く深く息を吐き、大きく吸い込んでもう一度吐き出すと、銀時は細心の注意をはらって目の前の襖に手をかけた。
そして玄関を開ける時よりも、より静かに慎重に力を入れていく。
「…………えっ」
中が十分に目視出来るほどの隙間を開けた銀時は、間抜けな声を零すと、中で寝ている人を起こさぬように気をつけながらも、先程よりは乱暴に押し開けた。
そこには、銀時の布団にくるまって眠るぽん子の姿があった。
「何だよ……まじ焦ったわ……」
すやすやと眠るぽん子の側まで行くと、緊張の糸が切れた銀時はその場にへたりこんで、ぽん子の頬にかかっている髪を耳に流して露わになった頬を優しく撫でる。
その手に反応したのか、ぽん子がうっすらと目を開けて、小さく銀時の名前を呼べば、銀時はすっかり安心して目元を弛めた。
「銀さん、おはよ……」
「おー、おはよ」
「へへ…まだ、夢…かな…」
寝ぼけ眼でぼそぼそと話すぽん子に笑って、銀時は掛け布団をそっと持ち上げると、そのままぽん子の体を包むように布団に潜り込んだ。
細くて温かい体を抱きしめながら、銀時はぽん子の存在を確かめるように柔らかい髪に鼻を擦り寄せた。
「あー、やべ…俺も眠い……」
一足先に夢の中に戻ってしまったぽん子の匂いをかぎながら、銀時も追いかけるように眠りに落ちていった。
彼らがしっかり目を覚まして、久しぶりの逢瀬を楽しむのは、まだもう少し先の話のようだ。
リズミカルに鳴らされる音に混じって、仕事中の男の声が時々合いの手のように入り込む。
坂田銀時は今、屋根の修理を行っていた。
「銀さーん、こっち終わりました~」
「そーかそーか、じゃあもう新八くんに任せて俺は降りてもいいよね?」
「ダメに決まってんでしょ!まだあと五軒は残ってますよ!」
「何だよ意味わかんねーよ、何で終わらねーんだよ、もう何日屋根に登ってると思ってんだよ、俺らは大工じゃねぇんだよ」
大工でもないこの男がなぜ屋根の修理をしているかというと、答えは単純明快で、何でも屋さんだからだ。
季節外れの突風に竜巻がかぶき町を襲い、梅雨の前に修繕をしなければならないが大工の人手が足りないということで駆り出された銀時と新八は、こうして連日屋根の上で作業をしている。
「しっかりお給料も貰えてるんですから、文句言わないで下さい!」
しっかり者の新八が発破をかけるが、その心は銀時には伝わらないようだ。
銀時は作業こそしっかりすれど、休憩中にはぼんやりと空を見上げたり、時折深いため息を吐くようになっていた。
「ダメネ新八ィ。ここんとこぽん子と会ってないから、銀ちゃん恋する乙女みたいになっちまってるヨ」
「気持ち悪いこと言わないでよ神楽ちゃん…いい大人が恋する乙女って…」
大方の修繕を終えて、二人はやっと地面に足をつけることが出来たが、銀時はずっと浮かない顔をしていた。
作業の邪魔になるからと待機を命じられていた神楽も、さすがに心配そうに銀時の顔を覗き込むと、銀ちゃん元気出せヨ、と呟いた。
「ねー銀ちゃん、ぽん子といつから会ってないアルか?」
「あー、今月入る前からだからな…ひと月ぐれぇ?」
「マジでか!私が銀ちゃんの代わりに会ってやってもいいヨ?」
「何でだよ!俺が会わなきゃ意味ねえだろうが」
「ここの所立て込んでるとは思っていたけど、そんなに会ってなかったんですね…」
三人並んで配られた弁当をつつきながら思い出すのは、それぞれに思い浮かべるぽん子だ。
神楽は、いつも美味しいものを持ってきてくれる優しい友人の顔。
新八は、頼りない社長を支える稀有な存在で、仕事をこなすお姉さんの顔。
銀時はというと、ジャージ姿でもんどりうったり寝不足で酷い顔をしていたり、世話のやける大切な彼女の顔。
そして何より、あの豊満な体を思い出しては触れられないことに苛立ちを通り越して、二度と触れることが出来ないのではという絶望感に苛まれていた。
「銀ちゃん一瞬でちょっと老けたアル」
「明日お休みを頂いたらどうです?働き詰めも悪いですよ」
「そうだな…」
こうして多少の希望を取り戻した銀時は、何とか午後を乗り越え、明日に備えて沈むように寝た。
ついには無言で仕事に取り組み、帰宅後は直ぐに虚ろな目で布団へ潜り込んだ銀時を見て、神楽は明日のぽん子の身を案じるしかなかった。
「アレ大丈夫かヨ…銀ちゃんもしかして、ぽん子のことヤリ尽くすんじゃネ?」
「ちょ!ちょっと!女の子がそういう事を口にしちゃいけません!!」
「考えてみろヨ。普段ちょいちょいエロい事してたはずなのに、一ヶ月もチョメチョメできず、それがついに解放されるってヤバくね?」
「た、たしかに……」
「今度ぽん子には湿布と痛み止めでも差し入れるネ」
翌日、心配して万事屋に来た新八と、マイペースに寝坊していた神楽が顔を合わせた時には、銀時の姿はどこにも見当たらない。
いつもなら腹を掻きながら起きてくる時間に既に居ないとは…と、たった一つであろう行先にいるぽん子の顔を思い浮かべると、心の中でそっと手を合わせた。
一方、銀時はというと、子供らの予想通りにぽん子の家の前に立っていた。
だが玄関前で鍵を持ったまま、銀時は事もあろうに、その持ち慣れていた筈の鍵を握り替えては挙動不審にソワソワしている。
「あー…クソッ…まさか夜明け前に完全に目ェ冴えて、七時まで待って限界でぽん子ん家来るとか遠足のガキか俺は……」
ぼそぼそと呟きながらも、静かに鍵を開ける。
もしかするとぽん子が寝ているかもしれないという配慮だが、もはや不審者のそれにしか見えないが、偶然にも周りには人っ子一人見当たらない。
そうして、そっと玄関を開けてぽん子が寝ているであろう仕事部屋へと向かう途中、勝手に万事屋から持ち込んだ私物部屋に何やら気配を感じて銀時は足を止めた。
「ま、ま、まさか……」
浮気、という文字が頭をよぎった。
サァッと青ざめた銀時は、暴れる心臓を抑えながら頭を振った。
(いや、まさか、ぽん子に限ってそんなこと無いだろ。担当のヤローが泊まっているのかもしれねーし。
それはそれで勝手に布団を使われて物凄く不快だけどまだ承諾できる範囲内…。
もしここに寝ているのが男だったらソイツをタコ殴りにしちまうかもしれねぇが、その時はもうその時だ。できれば勘違いであってくれ。って、どういう勘違いだ)
深く深く息を吐き、大きく吸い込んでもう一度吐き出すと、銀時は細心の注意をはらって目の前の襖に手をかけた。
そして玄関を開ける時よりも、より静かに慎重に力を入れていく。
「…………えっ」
中が十分に目視出来るほどの隙間を開けた銀時は、間抜けな声を零すと、中で寝ている人を起こさぬように気をつけながらも、先程よりは乱暴に押し開けた。
そこには、銀時の布団にくるまって眠るぽん子の姿があった。
「何だよ……まじ焦ったわ……」
すやすやと眠るぽん子の側まで行くと、緊張の糸が切れた銀時はその場にへたりこんで、ぽん子の頬にかかっている髪を耳に流して露わになった頬を優しく撫でる。
その手に反応したのか、ぽん子がうっすらと目を開けて、小さく銀時の名前を呼べば、銀時はすっかり安心して目元を弛めた。
「銀さん、おはよ……」
「おー、おはよ」
「へへ…まだ、夢…かな…」
寝ぼけ眼でぼそぼそと話すぽん子に笑って、銀時は掛け布団をそっと持ち上げると、そのままぽん子の体を包むように布団に潜り込んだ。
細くて温かい体を抱きしめながら、銀時はぽん子の存在を確かめるように柔らかい髪に鼻を擦り寄せた。
「あー、やべ…俺も眠い……」
一足先に夢の中に戻ってしまったぽん子の匂いをかぎながら、銀時も追いかけるように眠りに落ちていった。
彼らがしっかり目を覚まして、久しぶりの逢瀬を楽しむのは、まだもう少し先の話のようだ。