お付き合い編
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「うっお腹痛いっ………」
「まじか!大丈夫か?」
最近、ぽん子がよく腹痛を起こす。
更にトイレの前で青白い顔で倒れていることも多々あり、何事かと不安になった俺は過保護と言えばそうかもしれないが、ぽん子の家に来る回数が増えていた。
「またか…大丈夫か?」
「うん…ごめんね、銀さん…お休みとはいえ、神楽ちゃんと新八くんの保護者でもあるのに……」
「アイツらは強く逞しく生きてっから気にすんな」
戻ってきたぽん子をベッドに潜らせ、ペットボトルの水を飲ませれば少し顔色が良くなったが、ここの所の繰り返しを見ている俺は心配でたまらない。
ここの所、仕事が立て込んでいるからと病院にも行けずにいるのも気になるが、一人にさせておくのが何より不安でたまらないのだ。
「暫くしたら治るし、大丈夫ですよ。ありがとうございます
私が気にしちゃうから、銀さんはもう帰っちゃって下さい」
そう言って布団の中へすっぽりと肩まで入り込み、申し訳なさそうに顔だけひょっこり覗かせるぽん子は子どものようで、全く大丈夫そうには見えないが俺がいる事で仕事が進まないということもあるんだろう。
分かるが、分かりたくない気持ちもある。
複雑な状況にため息をつき、ぽん子の机に何枚も重なる紙の中からまっさらなものを一枚拝借した俺は、でかでかと万事屋とお登勢のババアの電話番号を書いてカラクリの上にぺたりと貼り付けた。
画面の邪魔にはならないが、これならいざと言う時に目につきやすいだろう。
「何かあったら絶対に電話しろよ?」
「承知しました!」
「ったく…じゃあな」
「はい、おやすみなさい」
そして俺は最近の「いつも」のように、鍵をかけてから万事屋へと帰るのだ。
「ぽん子さん、具合はどうなんでしょう?」
ぽん子のことを心配しているのだろうが、俺の方を見もせずに新八は床を掃除しながらポツリと呟いた。
少し前にぽん子が倒れてから、かなり動揺した俺は新八にもつい話してしまい、ついに俺がぽん子の家に寝泊まりしていることやぽん子が近所に住んでいることまでもがバレてしまった。
まぁとくに不都合はないが、神楽には黙っている。
あいつに話せば俺そっちのけで遊びにも泊まりにも行くのが目に見えているから…というのはさておき、そんな新八に安心させるように、俺は「大したことねえよ」とだけ答えた。
「何だよ銀ちゃん!おまえ彼氏のくせにぽん子のこと心配じゃないアルか?最低ネ!」
「かっ神楽ちゃん!銀さんはぽん子さんのこと心配してるから、時々顔出しに行ってるじゃないか」
「私には家がどこか教えてくれないけどな!」
「お前が行っても騒がしいだけだろうが」
今までソファでゴロゴロ寝転がっていただけの神楽もぽん子に反応し、起きた途端の口撃ときたもんだ。
まだ何か言いたげな神楽だったが、ハッと何かを思い出したように一瞬固まると、今度は顔を真っ青にし始めた。
「銀ちゃん、銀ちゃん」
「んだようっせーな」
「銀ちゃん、ぽん子に大変なことしたかもしれないアルよ。今度は本物かもしれないネ」
神楽は頭を抱えながらあからさまに何かに震えているが、俺と新八は訳が分からず二人で顔を見合せ、神楽に視線を戻した。
新八は神楽のとなりに座り、神楽の肩に手を置いて声をかけているが神楽はうんうん唸ったままだ。
「銀ちゃん!女はンコ出なくなったりお腹緩くなったりするって雑誌に書いてあったネ。きっとぽん子も……あぁ、せめてこの天パが移らなきゃいいけど……」
「はぁ?んなもん性別関係ねぇだろ?しかも天パが移るって何の話だよ」
「だーかーらー!」
パッと顔を上げた神楽が、俺の方をビシッと指さした。
「ぽん子、赤ちゃん出来たに決まってるヨ!!」
ドヤ顔の神楽が声高々にそう告げた瞬間、万事屋の空気は一瞬にしてガラリと冷えきった。
そして俺と新八は全く同じタイミングで、はぁぁ?!と同じセリフを同じように叫んでしまった。
「いやいや待て、は?!妊娠?!」
「銀ちゃんが父親ダロ!しっかりしろヨ!」
「えっ、てかそんな、えっ?!銀さん?!」
「何だよ新八ィ。ぽん子が銀ちゃんと夜もハッスルしてんのがショックだったアルか?お前まだまだガキんちょアルな」
ガキんちょ言うなー!と叫ぶ新八と、それをからかう神楽を前に俺はただ呆然としていた。
ぽん子が妊娠?俺にガキができた?そのパワーワードに意識を持っていかれていた俺は、神楽から頬を引っぱたかれてやっと現実に帰ってきた。
「しっかりするネ!銀ちゃん!まずは検査薬で調べてから、陽性が出たら産婦人科に連れて行くヨロシ!」
「お、おぅ、お前やけに詳しいな…」
「ドラマでは大体そんな感じネ」
「神楽ちゃん、ドラマも程々にした方がいいよ。てか何時そんなの見たの」
「黙ってろチェリー!」
「うううっさいわ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ神楽と新八に背中を押され、俺は薬局へと検査薬を買いに急げとしまいにゃ玄関から放り出される形で外に追い出されてしまった。
そうして手に取った検査薬には、陽性が出た時には病院へとの注意書きがしてある。
まさか俺がこんなものを手に取る時が来るとは、そう思うと何とも言えない気持ちで口元を引き締めたくても上手く力を入れることが出来ない。
「あれぇ?旦那ァ、こんなとこで何してんですかい」
「んわあっ!?」
急な掛け声に慌てて棚へと商品を戻し、声の主に嫌な予感がしながらも振り返ればそこにはいつものチンピラ警察が居た。
一人はあの沖田くんに、もう一人はジミーだ。
「い、いやぁ、別に?」
「何でェ、怪しさ満点じゃねぇですか」
「ちょっと沖田隊長!棚見たら分かるでしょう。旦那はアレ買いに来てるんですよ」
沖田くんを止めながらも、ジミーが指さしたのは避妊具の箱だ。
俺はその箱の一つをパッと手に取ると、沖田くんを指さして決して自然とは言えない笑顔を何とか作り上げた。
「そ、そうだよ沖田くゥん。避妊は交際におけるマナーだからさぁ?そろそろ無くなるから買っておこうと思ってさぁ?
もしナマでやってデキちゃったら、女が苦労するじゃん?まぁ俺はぽん子がデキても?別に?責任取るつもりではあるけど?
一応っつーか、ぽん子の都合もあるからっつーか、ぽん子の体に負担がかかるんだから、男としてのマナーだよねぇジミー!」
「旦那、目が泳いでまさァ」
もはや途中から何を話していたか自分でも分からないが、あまりに焦ってぽん子の名前を出しまくってしまったのだけは覚えている。
そして急に名指しにされたジミーは「お、俺ぇ?!」と慌てていたが、検査薬を買うより何より、沖田くんに色々追求される前に俺は店内を出たいとしか頭に無かった。
「へぇー、意外でしたねェ」
「えっ何が?」
「旦那は結構遊んでんのかと思ってやしたから、ゴムひとつ買うのにそんな挙動不審になるなんて……」
にやり、と沖田くんの口元が意地悪く歪む。
「まさか旦那ァ、山崎のことチェリーだなんだ言っといてアンタこそぽん子が初めての女だったんじゃないでしょうねぇ」
「はぁぁ?!!んなわけあるか!」
「沖田隊長ォォ!俺まで巻き込まないでェェェ!」
絶叫、嘆き。
もはやカオスな雰囲気に、痺れを切らした店主がブチ切れて「うるせーよアンタら!買わないなら出ていきな!!」と俺たちに怒鳴ったことでやっと俺は沖田くんから解放された。
「結局、買ってねーし」
とぼとぼと思い足取りでぽん子の家に向かうも、色々なことが頭を巡ってこのまま彼女の家に行ってもいいのかと少しだけ躊躇したが、意を決して向かうことにした。
ぽん子の家に着き、チャイムを鳴らして声をかければ珍しくバタバタと足音がして、直ぐにぽん子が顔を見せた。
「こんにちは!やっとお仕事が一段落して、私から万事屋さんに行こうかと思っていたところでした!」
にこにこしながら俺を招き入れたぽん子は、体調も良さそうで上機嫌だ。
そんなぽん子を前に、いつになく緊張した俺は出されたお茶を一気に飲み干すと、あぐらを正座に座り直してぽん子としっかり向き合った。
「あのよ、ぽん子…こないだからの体調不良のことだが…」
「あ!そうでした!その事で話さなきゃでした」
パン!と手を打ったぽん子は、俺と同じように正座をしたかと思うと急に顔を曇らせて俺をじっと見つめた。
もしや、既に知っているのだろうか?俺は本当に、子を持つ親になってしまったのだろうか?
じわりと手に汗を握りながらぽん子の言葉を静かに待つと、ぽん子は手をモジモジとさせながら口を開いた。
「あの、病院へ行ったんですよね」
「お、おぅ」
「それで…その、言いにくいんですけど……」
「………お、おぅ…」
ゴクリと唾を飲み込み、次の言葉を待つ俺の心臓は未だかつてない程に早鐘を打っている。
責任を取る、とか言えばいいだろうか?万事屋で一緒に暮らそう、とか?その前に入籍……入籍!
「あの……運動不足と食生活を改善して、治らなかったらまた来てくださいって言われちゃって……」
「わかった!て、は?」
ぽん子の言葉に一瞬頭が混乱したが「治らなかったら」のフレーズを思い出して目の前のぽん子を見れば、気まずそうな恥ずかしそうな顔をしている。
「カラクリでも症状を調べてから病院に行ったんです。そしたら、迷走反射神経ってやつみたいで…
えっと、私はとくに運動しないし食事も生活も不規則だから、血流も悪くなってて血圧の変動にも体が対応しきれなくて……ていう…」
「あ………そ、そうなの…」
「お恥ずかしいです…」
「あぁいや、大病じゃなくて良かったさ」
色々と思い悩んでいた事が見当違いだった事と、ぽん子の口から大したことではないと聞けて安心したのか、俺はどっと疲れが押し寄せて肩の荷が一気に降りたような気になった。
ぽん子はというと、そんな俺を見て目を丸くしながらどうしたんです?と声をかけてきたが、俺はひらひらと手を振って何でもねぇよとだけ呟いた。
「とりあえず、運動不足としっかり野菜も肉も食うことからだな?」
「あっはい!」
ぽん子は目をきらきらさせながら両手をぐっと握りしめると、その片手をどんと胸に押し当てた。
「なので私、新八くんの道場に通おうと思います!」
ぽん子の言葉に、俺は本日何度目かの「はぁぁ!?」を繰り出した。
体調不良にご注意を!
「それなら俺が教えてやるから」
「いやいや、銀さんは万事屋のお仕事があるじゃないですか」
「じゃあ依頼として受ければウィンウィンだろ」
「うぅっ……」
「まじか!大丈夫か?」
最近、ぽん子がよく腹痛を起こす。
更にトイレの前で青白い顔で倒れていることも多々あり、何事かと不安になった俺は過保護と言えばそうかもしれないが、ぽん子の家に来る回数が増えていた。
「またか…大丈夫か?」
「うん…ごめんね、銀さん…お休みとはいえ、神楽ちゃんと新八くんの保護者でもあるのに……」
「アイツらは強く逞しく生きてっから気にすんな」
戻ってきたぽん子をベッドに潜らせ、ペットボトルの水を飲ませれば少し顔色が良くなったが、ここの所の繰り返しを見ている俺は心配でたまらない。
ここの所、仕事が立て込んでいるからと病院にも行けずにいるのも気になるが、一人にさせておくのが何より不安でたまらないのだ。
「暫くしたら治るし、大丈夫ですよ。ありがとうございます
私が気にしちゃうから、銀さんはもう帰っちゃって下さい」
そう言って布団の中へすっぽりと肩まで入り込み、申し訳なさそうに顔だけひょっこり覗かせるぽん子は子どものようで、全く大丈夫そうには見えないが俺がいる事で仕事が進まないということもあるんだろう。
分かるが、分かりたくない気持ちもある。
複雑な状況にため息をつき、ぽん子の机に何枚も重なる紙の中からまっさらなものを一枚拝借した俺は、でかでかと万事屋とお登勢のババアの電話番号を書いてカラクリの上にぺたりと貼り付けた。
画面の邪魔にはならないが、これならいざと言う時に目につきやすいだろう。
「何かあったら絶対に電話しろよ?」
「承知しました!」
「ったく…じゃあな」
「はい、おやすみなさい」
そして俺は最近の「いつも」のように、鍵をかけてから万事屋へと帰るのだ。
「ぽん子さん、具合はどうなんでしょう?」
ぽん子のことを心配しているのだろうが、俺の方を見もせずに新八は床を掃除しながらポツリと呟いた。
少し前にぽん子が倒れてから、かなり動揺した俺は新八にもつい話してしまい、ついに俺がぽん子の家に寝泊まりしていることやぽん子が近所に住んでいることまでもがバレてしまった。
まぁとくに不都合はないが、神楽には黙っている。
あいつに話せば俺そっちのけで遊びにも泊まりにも行くのが目に見えているから…というのはさておき、そんな新八に安心させるように、俺は「大したことねえよ」とだけ答えた。
「何だよ銀ちゃん!おまえ彼氏のくせにぽん子のこと心配じゃないアルか?最低ネ!」
「かっ神楽ちゃん!銀さんはぽん子さんのこと心配してるから、時々顔出しに行ってるじゃないか」
「私には家がどこか教えてくれないけどな!」
「お前が行っても騒がしいだけだろうが」
今までソファでゴロゴロ寝転がっていただけの神楽もぽん子に反応し、起きた途端の口撃ときたもんだ。
まだ何か言いたげな神楽だったが、ハッと何かを思い出したように一瞬固まると、今度は顔を真っ青にし始めた。
「銀ちゃん、銀ちゃん」
「んだようっせーな」
「銀ちゃん、ぽん子に大変なことしたかもしれないアルよ。今度は本物かもしれないネ」
神楽は頭を抱えながらあからさまに何かに震えているが、俺と新八は訳が分からず二人で顔を見合せ、神楽に視線を戻した。
新八は神楽のとなりに座り、神楽の肩に手を置いて声をかけているが神楽はうんうん唸ったままだ。
「銀ちゃん!女はンコ出なくなったりお腹緩くなったりするって雑誌に書いてあったネ。きっとぽん子も……あぁ、せめてこの天パが移らなきゃいいけど……」
「はぁ?んなもん性別関係ねぇだろ?しかも天パが移るって何の話だよ」
「だーかーらー!」
パッと顔を上げた神楽が、俺の方をビシッと指さした。
「ぽん子、赤ちゃん出来たに決まってるヨ!!」
ドヤ顔の神楽が声高々にそう告げた瞬間、万事屋の空気は一瞬にしてガラリと冷えきった。
そして俺と新八は全く同じタイミングで、はぁぁ?!と同じセリフを同じように叫んでしまった。
「いやいや待て、は?!妊娠?!」
「銀ちゃんが父親ダロ!しっかりしろヨ!」
「えっ、てかそんな、えっ?!銀さん?!」
「何だよ新八ィ。ぽん子が銀ちゃんと夜もハッスルしてんのがショックだったアルか?お前まだまだガキんちょアルな」
ガキんちょ言うなー!と叫ぶ新八と、それをからかう神楽を前に俺はただ呆然としていた。
ぽん子が妊娠?俺にガキができた?そのパワーワードに意識を持っていかれていた俺は、神楽から頬を引っぱたかれてやっと現実に帰ってきた。
「しっかりするネ!銀ちゃん!まずは検査薬で調べてから、陽性が出たら産婦人科に連れて行くヨロシ!」
「お、おぅ、お前やけに詳しいな…」
「ドラマでは大体そんな感じネ」
「神楽ちゃん、ドラマも程々にした方がいいよ。てか何時そんなの見たの」
「黙ってろチェリー!」
「うううっさいわ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ神楽と新八に背中を押され、俺は薬局へと検査薬を買いに急げとしまいにゃ玄関から放り出される形で外に追い出されてしまった。
そうして手に取った検査薬には、陽性が出た時には病院へとの注意書きがしてある。
まさか俺がこんなものを手に取る時が来るとは、そう思うと何とも言えない気持ちで口元を引き締めたくても上手く力を入れることが出来ない。
「あれぇ?旦那ァ、こんなとこで何してんですかい」
「んわあっ!?」
急な掛け声に慌てて棚へと商品を戻し、声の主に嫌な予感がしながらも振り返ればそこにはいつものチンピラ警察が居た。
一人はあの沖田くんに、もう一人はジミーだ。
「い、いやぁ、別に?」
「何でェ、怪しさ満点じゃねぇですか」
「ちょっと沖田隊長!棚見たら分かるでしょう。旦那はアレ買いに来てるんですよ」
沖田くんを止めながらも、ジミーが指さしたのは避妊具の箱だ。
俺はその箱の一つをパッと手に取ると、沖田くんを指さして決して自然とは言えない笑顔を何とか作り上げた。
「そ、そうだよ沖田くゥん。避妊は交際におけるマナーだからさぁ?そろそろ無くなるから買っておこうと思ってさぁ?
もしナマでやってデキちゃったら、女が苦労するじゃん?まぁ俺はぽん子がデキても?別に?責任取るつもりではあるけど?
一応っつーか、ぽん子の都合もあるからっつーか、ぽん子の体に負担がかかるんだから、男としてのマナーだよねぇジミー!」
「旦那、目が泳いでまさァ」
もはや途中から何を話していたか自分でも分からないが、あまりに焦ってぽん子の名前を出しまくってしまったのだけは覚えている。
そして急に名指しにされたジミーは「お、俺ぇ?!」と慌てていたが、検査薬を買うより何より、沖田くんに色々追求される前に俺は店内を出たいとしか頭に無かった。
「へぇー、意外でしたねェ」
「えっ何が?」
「旦那は結構遊んでんのかと思ってやしたから、ゴムひとつ買うのにそんな挙動不審になるなんて……」
にやり、と沖田くんの口元が意地悪く歪む。
「まさか旦那ァ、山崎のことチェリーだなんだ言っといてアンタこそぽん子が初めての女だったんじゃないでしょうねぇ」
「はぁぁ?!!んなわけあるか!」
「沖田隊長ォォ!俺まで巻き込まないでェェェ!」
絶叫、嘆き。
もはやカオスな雰囲気に、痺れを切らした店主がブチ切れて「うるせーよアンタら!買わないなら出ていきな!!」と俺たちに怒鳴ったことでやっと俺は沖田くんから解放された。
「結局、買ってねーし」
とぼとぼと思い足取りでぽん子の家に向かうも、色々なことが頭を巡ってこのまま彼女の家に行ってもいいのかと少しだけ躊躇したが、意を決して向かうことにした。
ぽん子の家に着き、チャイムを鳴らして声をかければ珍しくバタバタと足音がして、直ぐにぽん子が顔を見せた。
「こんにちは!やっとお仕事が一段落して、私から万事屋さんに行こうかと思っていたところでした!」
にこにこしながら俺を招き入れたぽん子は、体調も良さそうで上機嫌だ。
そんなぽん子を前に、いつになく緊張した俺は出されたお茶を一気に飲み干すと、あぐらを正座に座り直してぽん子としっかり向き合った。
「あのよ、ぽん子…こないだからの体調不良のことだが…」
「あ!そうでした!その事で話さなきゃでした」
パン!と手を打ったぽん子は、俺と同じように正座をしたかと思うと急に顔を曇らせて俺をじっと見つめた。
もしや、既に知っているのだろうか?俺は本当に、子を持つ親になってしまったのだろうか?
じわりと手に汗を握りながらぽん子の言葉を静かに待つと、ぽん子は手をモジモジとさせながら口を開いた。
「あの、病院へ行ったんですよね」
「お、おぅ」
「それで…その、言いにくいんですけど……」
「………お、おぅ…」
ゴクリと唾を飲み込み、次の言葉を待つ俺の心臓は未だかつてない程に早鐘を打っている。
責任を取る、とか言えばいいだろうか?万事屋で一緒に暮らそう、とか?その前に入籍……入籍!
「あの……運動不足と食生活を改善して、治らなかったらまた来てくださいって言われちゃって……」
「わかった!て、は?」
ぽん子の言葉に一瞬頭が混乱したが「治らなかったら」のフレーズを思い出して目の前のぽん子を見れば、気まずそうな恥ずかしそうな顔をしている。
「カラクリでも症状を調べてから病院に行ったんです。そしたら、迷走反射神経ってやつみたいで…
えっと、私はとくに運動しないし食事も生活も不規則だから、血流も悪くなってて血圧の変動にも体が対応しきれなくて……ていう…」
「あ………そ、そうなの…」
「お恥ずかしいです…」
「あぁいや、大病じゃなくて良かったさ」
色々と思い悩んでいた事が見当違いだった事と、ぽん子の口から大したことではないと聞けて安心したのか、俺はどっと疲れが押し寄せて肩の荷が一気に降りたような気になった。
ぽん子はというと、そんな俺を見て目を丸くしながらどうしたんです?と声をかけてきたが、俺はひらひらと手を振って何でもねぇよとだけ呟いた。
「とりあえず、運動不足としっかり野菜も肉も食うことからだな?」
「あっはい!」
ぽん子は目をきらきらさせながら両手をぐっと握りしめると、その片手をどんと胸に押し当てた。
「なので私、新八くんの道場に通おうと思います!」
ぽん子の言葉に、俺は本日何度目かの「はぁぁ!?」を繰り出した。
体調不良にご注意を!
「それなら俺が教えてやるから」
「いやいや、銀さんは万事屋のお仕事があるじゃないですか」
「じゃあ依頼として受ければウィンウィンだろ」
「うぅっ……」