短編集
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
彼と私が初めて出会ったのは近所の公園だった。
ラケットを一心不乱に振りながら汗を流す姿に変な人だなと思ったのを覚えている。
次に会ったのは私が働くスーパーだった。
「すみません、マヨネーズどこですか?」と声をかけられ、私はぼんやりとどこかで見たような…と思いながらも調味料のコーナーまで案内した。
大きな箱を抱えてお店を出た姿を見て、あの公園の人だと思い出した。
その後、しばらくしてまた公園で素振りをしているのを目撃。
キレッキレの動きだけど、一人で壁打ちを始めた頃には相手がいなくて可哀想と思っていた。
その時、風に流されたシャトルが私の足元に転がってきて、取りに来た彼に誘われて一緒にバドミントンをした。すっごく嬉しそうだったのが印象的で、変な人から面白い人に変わった瞬間だった。
その時に彼の名前が山崎さんだと知った。
山崎さんと話す時はいつも楽しくて、いつの間にか山崎さんと会うことを楽しみにしていた。
時々メールをするようになった頃には、山崎さんのことが好きだとハッキリ意識するようになった。
そうしてひと月ほど前、私はいつものように公園でバドミントンを楽しんだ後のご機嫌な彼に思い切って告白をした。
彼は驚いて困ったような顔をして返事に悩んでいたようだった。
その反応を見て、あぁ私はそういうんじゃなかったんだと気付き、断られるのも怖くて悲しくて、情けなく涙を見せる前に脇目も振らず全力で逃げだしてしまった。
その日から山崎さんはお店にも来なくて、公園にも姿を現していないし、メールも届いていない。
そりゃそうか、私も気まずいけれどきっとあちらも気まずいだろう。
未だに彼への未練を引きずったままの私は山崎さんと表示された受信メールを見直してはうるうると涙を滲ませ、時々こうして公園に来て、しょんぼりとして帰る。
こんなに辛いのだから早く忘れてしまった方がいいと頭のどこかで分かっていながら、彼の笑顔を思い出すと胸がキュンとしてたまらない。
またじわりと涙で視界が霞み、手でぐしぐしと乱暴に拭うが、ポロポロと涙が溢れて止まらない。
そのまま俯き気味にふらふらと歩いていたら、頭にトンっと軽く衝撃が走った。
「す、すみません」
ぶつかった頭を押さえながら慌てて顔を上げると、相手も同じように謝りながらくるっと振り向いた。
「あっ!ぽん子ちゃん!」
お約束のように、そこにはずっと会いたかったけど会いたくなかった山崎さんがいた。
処理できずに涙がぶわっと溢れ、驚いた顔をして私に伸ばしかけた手を止めた山崎さんの前で踵を返してまたあの時のように走り出せば、今度は私の名前を叫びながら山崎さんは追ってきた。
いつの間にか人気のない方へ走っていたのか、山崎さんから強く腕を引かれ、為す術なくそのまま彼の腕の中に捕まった。
私は酷く息を切らしているのに、山崎さんはすぐに呼吸を整えて、肩に顔をうずめる私の頭を何度も撫でてくれた。
「ごめん、ぽん子ちゃん」
すぐ近くで聞こえる声はいつもより優しくて、それにまた胸が締め付けられ、山崎さんの背中にぎゅうっと腕を回して離されないように抱きついた。
「オレ、ぽん子ちゃんに黙ってたことがあって…そのままでいいから聞いてくれるかな?」
山崎さんの手が止まって私がこくこくと頷くと、息遣いから頭上で苦笑されたような気がした。
「まず、オレの年齢が三十過ぎてる。ぽん子ちゃんはまだ二十歳そこそこでしょ?ぽん子ちゃんには同じくらいの歳の子の方が」
「そんなの!年齢なんて関係ない!!」
私は山崎さんの肩にぐりぐりと強く頭を押し付けながら、遮るように大声を上げた。
ぽんぽんと頭を軽く叩かれ、またしゅんとして黙ると背中に腕を回された。
「それからオレの職業だけど、服装の通り評判のあんまりよくないお巡りさんなんだ」
「うん…真選組…だよね…」
「そう。危ない仕事だってあるから、ぽん子ちゃんを巻き込むことも無いとは限らないし、オレだっていつどうなるか分からない」
小さい子供に言い聞かせるような口調で言われると、燃えるように熱くなっていた頭が少しずつ落ち着いてきてぐす、と鼻を鳴らして真っ黒な隊服に頬を擦り寄せると、片手でまた頭を優しく撫でつけてくれた。
「ぽん子ちゃん、だから」
「~~~っやだ!イヤだ!イヤだ!イヤ!山崎さんはずるい!」
「ぽん子ちゃん!」
背中を掴んでいた手を離し、思い切り山崎さんの体を押すと抱き締められていた腕はすんなりと解けて、私はよろよろと後ろにふらついたがしっかりと踏ん張って、立ち止まった。
「私は山崎さんの気持ちが知りたいの!仕事とか歳とか、どうでもいいの!山崎さんは私のことどう思ってるの?嫌いなの?好きなんでしょ?!それならっ…」
「つべこべ言わず好きだって言えバカヤロー!!」
小さい子供のように両手を握りしめて思い切り叫ぶと、山崎さんは口をぎゅっと結んで少しだけ怒ったような顔をした。
「…バカはどっちだ!人の気も知らないで!」
「知るかバカ!意気地無し!ヘタレ!ばかばかばか!」
向かい合って思い切り罵倒すると、また涙が込み上げてきた。
「大好きなのっ…一緒に居たい…うぅっ」
もう涙も出なくなってきたのか、つうっと一筋頬に伝うと、ぽたっとそのまま落ちていった。
山崎さんはそんな私の顔を隊服の袖で優しく拭って、困った顔で優しく笑っている。
「オレの負けだよ、ぽん子ちゃん。泣かせてごめん。辛い思いさせてごめん。ちゃんと言わないで逃げてごめん」
「…山崎さん…?」
涙で濡れてすっかり冷たくなった私の頬に、山崎さんの温かくて大きい手が包み込むように触れて、そのままおでこにチュッと口付けられた。
「オレもぽん子ちゃんの事が好きだ。大好きだよ」
そのまますっぽり抱き締められて、腕の中に収まると私も山崎さんの背中に腕を回してきつく抱きついた。
きっと世界中を探してもこんな幸せな人は私しか居ないはず、と、そんなことを思いながら、山崎さんの肩に嬉し涙の雫をひとつぽたりとこぼすのだった。
ラケットを一心不乱に振りながら汗を流す姿に変な人だなと思ったのを覚えている。
次に会ったのは私が働くスーパーだった。
「すみません、マヨネーズどこですか?」と声をかけられ、私はぼんやりとどこかで見たような…と思いながらも調味料のコーナーまで案内した。
大きな箱を抱えてお店を出た姿を見て、あの公園の人だと思い出した。
その後、しばらくしてまた公園で素振りをしているのを目撃。
キレッキレの動きだけど、一人で壁打ちを始めた頃には相手がいなくて可哀想と思っていた。
その時、風に流されたシャトルが私の足元に転がってきて、取りに来た彼に誘われて一緒にバドミントンをした。すっごく嬉しそうだったのが印象的で、変な人から面白い人に変わった瞬間だった。
その時に彼の名前が山崎さんだと知った。
山崎さんと話す時はいつも楽しくて、いつの間にか山崎さんと会うことを楽しみにしていた。
時々メールをするようになった頃には、山崎さんのことが好きだとハッキリ意識するようになった。
そうしてひと月ほど前、私はいつものように公園でバドミントンを楽しんだ後のご機嫌な彼に思い切って告白をした。
彼は驚いて困ったような顔をして返事に悩んでいたようだった。
その反応を見て、あぁ私はそういうんじゃなかったんだと気付き、断られるのも怖くて悲しくて、情けなく涙を見せる前に脇目も振らず全力で逃げだしてしまった。
その日から山崎さんはお店にも来なくて、公園にも姿を現していないし、メールも届いていない。
そりゃそうか、私も気まずいけれどきっとあちらも気まずいだろう。
未だに彼への未練を引きずったままの私は山崎さんと表示された受信メールを見直してはうるうると涙を滲ませ、時々こうして公園に来て、しょんぼりとして帰る。
こんなに辛いのだから早く忘れてしまった方がいいと頭のどこかで分かっていながら、彼の笑顔を思い出すと胸がキュンとしてたまらない。
またじわりと涙で視界が霞み、手でぐしぐしと乱暴に拭うが、ポロポロと涙が溢れて止まらない。
そのまま俯き気味にふらふらと歩いていたら、頭にトンっと軽く衝撃が走った。
「す、すみません」
ぶつかった頭を押さえながら慌てて顔を上げると、相手も同じように謝りながらくるっと振り向いた。
「あっ!ぽん子ちゃん!」
お約束のように、そこにはずっと会いたかったけど会いたくなかった山崎さんがいた。
処理できずに涙がぶわっと溢れ、驚いた顔をして私に伸ばしかけた手を止めた山崎さんの前で踵を返してまたあの時のように走り出せば、今度は私の名前を叫びながら山崎さんは追ってきた。
いつの間にか人気のない方へ走っていたのか、山崎さんから強く腕を引かれ、為す術なくそのまま彼の腕の中に捕まった。
私は酷く息を切らしているのに、山崎さんはすぐに呼吸を整えて、肩に顔をうずめる私の頭を何度も撫でてくれた。
「ごめん、ぽん子ちゃん」
すぐ近くで聞こえる声はいつもより優しくて、それにまた胸が締め付けられ、山崎さんの背中にぎゅうっと腕を回して離されないように抱きついた。
「オレ、ぽん子ちゃんに黙ってたことがあって…そのままでいいから聞いてくれるかな?」
山崎さんの手が止まって私がこくこくと頷くと、息遣いから頭上で苦笑されたような気がした。
「まず、オレの年齢が三十過ぎてる。ぽん子ちゃんはまだ二十歳そこそこでしょ?ぽん子ちゃんには同じくらいの歳の子の方が」
「そんなの!年齢なんて関係ない!!」
私は山崎さんの肩にぐりぐりと強く頭を押し付けながら、遮るように大声を上げた。
ぽんぽんと頭を軽く叩かれ、またしゅんとして黙ると背中に腕を回された。
「それからオレの職業だけど、服装の通り評判のあんまりよくないお巡りさんなんだ」
「うん…真選組…だよね…」
「そう。危ない仕事だってあるから、ぽん子ちゃんを巻き込むことも無いとは限らないし、オレだっていつどうなるか分からない」
小さい子供に言い聞かせるような口調で言われると、燃えるように熱くなっていた頭が少しずつ落ち着いてきてぐす、と鼻を鳴らして真っ黒な隊服に頬を擦り寄せると、片手でまた頭を優しく撫でつけてくれた。
「ぽん子ちゃん、だから」
「~~~っやだ!イヤだ!イヤだ!イヤ!山崎さんはずるい!」
「ぽん子ちゃん!」
背中を掴んでいた手を離し、思い切り山崎さんの体を押すと抱き締められていた腕はすんなりと解けて、私はよろよろと後ろにふらついたがしっかりと踏ん張って、立ち止まった。
「私は山崎さんの気持ちが知りたいの!仕事とか歳とか、どうでもいいの!山崎さんは私のことどう思ってるの?嫌いなの?好きなんでしょ?!それならっ…」
「つべこべ言わず好きだって言えバカヤロー!!」
小さい子供のように両手を握りしめて思い切り叫ぶと、山崎さんは口をぎゅっと結んで少しだけ怒ったような顔をした。
「…バカはどっちだ!人の気も知らないで!」
「知るかバカ!意気地無し!ヘタレ!ばかばかばか!」
向かい合って思い切り罵倒すると、また涙が込み上げてきた。
「大好きなのっ…一緒に居たい…うぅっ」
もう涙も出なくなってきたのか、つうっと一筋頬に伝うと、ぽたっとそのまま落ちていった。
山崎さんはそんな私の顔を隊服の袖で優しく拭って、困った顔で優しく笑っている。
「オレの負けだよ、ぽん子ちゃん。泣かせてごめん。辛い思いさせてごめん。ちゃんと言わないで逃げてごめん」
「…山崎さん…?」
涙で濡れてすっかり冷たくなった私の頬に、山崎さんの温かくて大きい手が包み込むように触れて、そのままおでこにチュッと口付けられた。
「オレもぽん子ちゃんの事が好きだ。大好きだよ」
そのまますっぽり抱き締められて、腕の中に収まると私も山崎さんの背中に腕を回してきつく抱きついた。
きっと世界中を探してもこんな幸せな人は私しか居ないはず、と、そんなことを思いながら、山崎さんの肩に嬉し涙の雫をひとつぽたりとこぼすのだった。