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俺が密かに思いを寄せる彼女には好きな男がいる。よりにもよって心底気に入らねぇ、スットコドッコイ土方の事だ。
あんなマヨラーのどこがいいのか皆目見当もつかねぇが、どうやら風紀委員の活動中に土方コノヤローが声を掛けたのがきっかけらしい。
俺の方が先に知り合っていたにも関わらず、俺の良さに気付きもしやがらねぇで、どうしてかあの男がかっこいいだの何だの言いやがる。
「今日もかっこいいな~土方くんは何してもかっこいいわぁ」
俺の前でぼんやり片肘をつきながら窓の外を眺めるぽん子の視線の先には、近藤さんを追いかける土方さんの姿が映っているんだろう。
そのまますっ転んじまえばいいと願いながら、サボった授業の内容をぽん子のものから俺のノートへせっせと書き写していく。
すっかり見慣れた、丸っこいわりに整った見やすい文字に指を滑らせて、真面目なやつでさァとポツリと呟いたら、聞こえたのかたまたまかぽん子がこちらを向いた。
「総悟もちゃんと授業に出た方がいいよ。土方くんを見習いなよ」
じいっとこちらを見つめてきたかと思えば、口を開けば出てくるあいつのぽん子にこいつの頭の中は一体どうなっているんだと疑いたくなる。
少し腹が立つが、やっと俺に視線をよこしたぽん子をまた外に戻してやりたくなくて、手を止めてまでしっかり目を合わせてやる。
「気が向いたら出まさァ」
「そう言って何度もサボってるでしょ」
はぁーやれやれと態とらしくため息を吐かれるが、何だかんだ言って毎日こうしてノートを貸してくれるのは、何なんでしょうねェと言いたい。
案外この時間を嫌がってないように思えるのは俺の勘違いかもしれねェけど、俺にとってはこいつを独占できる唯一の時間なのでどうでもよしとする。
「あ~土方くんと遊びに行ってみたいわ。1日でいいからさ。景色が違って見えそう」
「アホかィ。時間の無駄でさァ」
なんでそんなイジワル言うかなぁ~と唇を尖らしているが、文句を言いたいのはこっちの方だ。
コイツは俺の気持ちになんて1ミリだって気付きやしねェ。こんなに近くにいて、毎日話して、土方さんよりもずっとずっと沢山の時間を過ごしてるってのに。
それがたった数回話しただけの土方さんの事をかっこいいだなんだと浮かれやがってと心の中がずっとモヤモヤさせられる。
「あんたのソレはアイドルの追っかけと同じでさァ
かっこいいかっこいいって、結局あの人の顔しか見てねェじゃねーか
遊びたいってのも、見た目のいい男連れて歩きたいだけだろィ」
「アンタはあの人のことなんざ、本気で好きじゃねェ」
我慢していたものが吹き出したように止まらず言い切ってしまった。やってしまったと思った時には遅く、何とも言えない表情のぽん子から目を逸らすと、もうとっくに写し終わっていたノートを向かいへと押しやる。
それから乱暴に自分の荷物をリュックに押し込んでいく。我ながらガキくせぇと笑いたくなった。
「なにそれ、ねぇ、どういうこと?」
震えている声に、もしかした泣いているのかもしれないと思ったが顔を上げることが出来ず、すっかり片付いた机に視線を落として未だ胸に残るもやもやを持て余す。
あーあ、土方さんのせいで嫌われちまった。
「どーもこーもねェや」
ここまで言ってしまったからには、お前は恋に恋してただけだと言ってしまえと思い顔を上げると、そこには顔を真っ赤にして震えるぽん子の姿があった。 が、思わぬ形で。
「土方くんに恋っ……ぶふっふっ」
「え」
「ふふっ、何か勘違いしてるみたいだけどっ、ぶっくくく…」
すっかり紅潮した頬を冷ますよう、手でパタパタと扇ぎながらも呼吸を整えりは姿に何が起こったんだと考えるが、その前にぽん子の方が深く息を吐いて、キッと俺を睨みつけた。
「たしかに土方くんのことはかっこいいって思うよ。でも彼氏になって欲しいとか、私一言も言ったことないと思うけど?」
首を傾げながら、ぽん子ははっきり否定を口にしたが、その表情もすぐに緩んでいく。何だ、ワケが分からねェ
「急に怒り出したと思ったら、私が土方くんのこと大好き!付き合いたい!ってなこと言ってましたけど!」
ぽん子は未だに治まりきらないでいるのか、ふふふと笑いながらうっすらと滲んだ涙を拭っている。
泣くほどおかしな事を言ったかと頭の処理が追いつかずにいる俺は、もはやワケが分からなくて「はーおかしい」なんて言うぽん子をぽかんと見ることしか出来ずに居た。
そんな俺に、コホンとわざとらしく一呼吸置いたぽん子が、動揺を隠せない俺の頬にそっと触れてきたと思うと少し潤んだ瞳で真っ直ぐに見つめてきた。
触れられたところがほんのりと熱を持っていて、俺はどうしようもない気持ちになったがグッと堪え、ぽん子の言葉を待つ。
「総悟、私は土方くんに恋してません。いい?」
「…分かりやした」
ぽん子は納得したようにウンウンと頷くと、今度はイタズラを含んだような目をしてにっこりと笑った。
「私が好きな人は目の前の人なの
だからヤキモチ妬かないで?総悟クン?」
窓から差していた夕日のせいか、今の言葉のせいか、目の前のぽん子の顔がすっかり真っ赤に染まっている。
そうして離されそうになった温かい手を慌てて掴み、負けじと熱くなっている俺の頬に触れさせたまま強くこちらへと引っ張ってやる。
小さな身体は机に倒れ込むように両肘を着いて踏ん張ったと同時に、無理やり動かされた椅子の音が悲鳴を上げ静かな教室に大きく響いた。
「舐めた真似してくれやしたねェ」
頬につけたままにしていた手の力を弛め、自分のそれとは違ったほっそりとした手首からなぞる様に、ゆっくりと手のひらで撫でながら下へ下へと向かっていく。
机につけたまま動かせずにいる細い肘を上からそっと押さえつけて、先程とは打って変わって不安そうに見上げるぽん子の表情に、怒りとは違う何かが腹の中からフツフツと湧き上がっていく。
「これからみっちり恋人していきやしょうや」
「みみ、みっちりって…」
「大丈夫、何も怖くありやせんよ」
鼻先がくっつきそうな程に距離を詰め、にやりと笑えばぽん子はヒイッと小さく声を漏らしてギュッと目を閉じてしまった。
色気も何もねぇなと笑いそうになるが、ぷっくりとした膨らみをカプリと噛んで、小さなそれをそっと唇で塞いだ。
「アンタのことが好きでさァ
これから一生付き合ってくだせェよ」
キスで惚けた目の前の口元がもっとふにゃりと弛んで、こちらこそ、と笑って応えてくれた。
あんなマヨラーのどこがいいのか皆目見当もつかねぇが、どうやら風紀委員の活動中に土方コノヤローが声を掛けたのがきっかけらしい。
俺の方が先に知り合っていたにも関わらず、俺の良さに気付きもしやがらねぇで、どうしてかあの男がかっこいいだの何だの言いやがる。
「今日もかっこいいな~土方くんは何してもかっこいいわぁ」
俺の前でぼんやり片肘をつきながら窓の外を眺めるぽん子の視線の先には、近藤さんを追いかける土方さんの姿が映っているんだろう。
そのまますっ転んじまえばいいと願いながら、サボった授業の内容をぽん子のものから俺のノートへせっせと書き写していく。
すっかり見慣れた、丸っこいわりに整った見やすい文字に指を滑らせて、真面目なやつでさァとポツリと呟いたら、聞こえたのかたまたまかぽん子がこちらを向いた。
「総悟もちゃんと授業に出た方がいいよ。土方くんを見習いなよ」
じいっとこちらを見つめてきたかと思えば、口を開けば出てくるあいつのぽん子にこいつの頭の中は一体どうなっているんだと疑いたくなる。
少し腹が立つが、やっと俺に視線をよこしたぽん子をまた外に戻してやりたくなくて、手を止めてまでしっかり目を合わせてやる。
「気が向いたら出まさァ」
「そう言って何度もサボってるでしょ」
はぁーやれやれと態とらしくため息を吐かれるが、何だかんだ言って毎日こうしてノートを貸してくれるのは、何なんでしょうねェと言いたい。
案外この時間を嫌がってないように思えるのは俺の勘違いかもしれねェけど、俺にとってはこいつを独占できる唯一の時間なのでどうでもよしとする。
「あ~土方くんと遊びに行ってみたいわ。1日でいいからさ。景色が違って見えそう」
「アホかィ。時間の無駄でさァ」
なんでそんなイジワル言うかなぁ~と唇を尖らしているが、文句を言いたいのはこっちの方だ。
コイツは俺の気持ちになんて1ミリだって気付きやしねェ。こんなに近くにいて、毎日話して、土方さんよりもずっとずっと沢山の時間を過ごしてるってのに。
それがたった数回話しただけの土方さんの事をかっこいいだなんだと浮かれやがってと心の中がずっとモヤモヤさせられる。
「あんたのソレはアイドルの追っかけと同じでさァ
かっこいいかっこいいって、結局あの人の顔しか見てねェじゃねーか
遊びたいってのも、見た目のいい男連れて歩きたいだけだろィ」
「アンタはあの人のことなんざ、本気で好きじゃねェ」
我慢していたものが吹き出したように止まらず言い切ってしまった。やってしまったと思った時には遅く、何とも言えない表情のぽん子から目を逸らすと、もうとっくに写し終わっていたノートを向かいへと押しやる。
それから乱暴に自分の荷物をリュックに押し込んでいく。我ながらガキくせぇと笑いたくなった。
「なにそれ、ねぇ、どういうこと?」
震えている声に、もしかした泣いているのかもしれないと思ったが顔を上げることが出来ず、すっかり片付いた机に視線を落として未だ胸に残るもやもやを持て余す。
あーあ、土方さんのせいで嫌われちまった。
「どーもこーもねェや」
ここまで言ってしまったからには、お前は恋に恋してただけだと言ってしまえと思い顔を上げると、そこには顔を真っ赤にして震えるぽん子の姿があった。 が、思わぬ形で。
「土方くんに恋っ……ぶふっふっ」
「え」
「ふふっ、何か勘違いしてるみたいだけどっ、ぶっくくく…」
すっかり紅潮した頬を冷ますよう、手でパタパタと扇ぎながらも呼吸を整えりは姿に何が起こったんだと考えるが、その前にぽん子の方が深く息を吐いて、キッと俺を睨みつけた。
「たしかに土方くんのことはかっこいいって思うよ。でも彼氏になって欲しいとか、私一言も言ったことないと思うけど?」
首を傾げながら、ぽん子ははっきり否定を口にしたが、その表情もすぐに緩んでいく。何だ、ワケが分からねェ
「急に怒り出したと思ったら、私が土方くんのこと大好き!付き合いたい!ってなこと言ってましたけど!」
ぽん子は未だに治まりきらないでいるのか、ふふふと笑いながらうっすらと滲んだ涙を拭っている。
泣くほどおかしな事を言ったかと頭の処理が追いつかずにいる俺は、もはやワケが分からなくて「はーおかしい」なんて言うぽん子をぽかんと見ることしか出来ずに居た。
そんな俺に、コホンとわざとらしく一呼吸置いたぽん子が、動揺を隠せない俺の頬にそっと触れてきたと思うと少し潤んだ瞳で真っ直ぐに見つめてきた。
触れられたところがほんのりと熱を持っていて、俺はどうしようもない気持ちになったがグッと堪え、ぽん子の言葉を待つ。
「総悟、私は土方くんに恋してません。いい?」
「…分かりやした」
ぽん子は納得したようにウンウンと頷くと、今度はイタズラを含んだような目をしてにっこりと笑った。
「私が好きな人は目の前の人なの
だからヤキモチ妬かないで?総悟クン?」
窓から差していた夕日のせいか、今の言葉のせいか、目の前のぽん子の顔がすっかり真っ赤に染まっている。
そうして離されそうになった温かい手を慌てて掴み、負けじと熱くなっている俺の頬に触れさせたまま強くこちらへと引っ張ってやる。
小さな身体は机に倒れ込むように両肘を着いて踏ん張ったと同時に、無理やり動かされた椅子の音が悲鳴を上げ静かな教室に大きく響いた。
「舐めた真似してくれやしたねェ」
頬につけたままにしていた手の力を弛め、自分のそれとは違ったほっそりとした手首からなぞる様に、ゆっくりと手のひらで撫でながら下へ下へと向かっていく。
机につけたまま動かせずにいる細い肘を上からそっと押さえつけて、先程とは打って変わって不安そうに見上げるぽん子の表情に、怒りとは違う何かが腹の中からフツフツと湧き上がっていく。
「これからみっちり恋人していきやしょうや」
「みみ、みっちりって…」
「大丈夫、何も怖くありやせんよ」
鼻先がくっつきそうな程に距離を詰め、にやりと笑えばぽん子はヒイッと小さく声を漏らしてギュッと目を閉じてしまった。
色気も何もねぇなと笑いそうになるが、ぷっくりとした膨らみをカプリと噛んで、小さなそれをそっと唇で塞いだ。
「アンタのことが好きでさァ
これから一生付き合ってくだせェよ」
キスで惚けた目の前の口元がもっとふにゃりと弛んで、こちらこそ、と笑って応えてくれた。