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「ひぇええええ!銀ちゃん銀ちゃん銀ちゃん!」
「あー何なに、もううるせーな」
「蜘蛛いる!ちょっと!取ってほしい!」
「……はぁ」
ぽん子は虫が苦手だ。
それは分かるが、指先ほどしかない小さな虫にすらビビって、こうして俺に助けを求めてくる。
ため息を吐きながら重い体を起こして、袖口を這っていた小さな蜘蛛を払って外に逃してやる。
別にそこらに放っておいてもいいのだが、ぽん子が騒ぐとうるさいから初めから外に逃してやるのが得策だ。
ぽん子は安心したように俺の隣りにちょこんと腰掛けると、落ち着いた様子で茶をすすり始めた。
「ぽん子、今度の依頼はお前は呼べねーから」
そんなコイツの横顔を眺めながらそう言うと、ぽん子はあからさまにショックを受けた顔で慌ててグラスをテーブルに置いた。
暇さえあれば依頼についてくるぽん子は、いつの間にか万事屋のサブ従業員のような扱いだが、今回はそういう訳にはいかない。
「えっ!えっ?!何で?」
「虫捕りだから」
「えっ」
虫捕り。
そう告げた俺を、信じられないものを見るような目でぽん子は見つめている。
毎年のことだが、神楽が大会だか何だかで騒ぐほどには、カブトムシ需要は高いのだ。
という訳で、今年も万事屋はカブトムシを探しに行く予定だが、ぽん子は万事屋と知り合って初めての夏ということで、まだ知らなかったようだ。
「えっ…何で虫?」
「は?そりゃ金になるからだろ」
「えっ…普通に仕事した方が良くない?」
「ぽん子…夢がねぇなぁ」
やれやれと半目でぽん子を見やれば、それこそ訳がわからないといった表情で、ぽん子も半目だ。
何だこの空気。
「そういうことだから、お前はついてこなくていいってこと」
丸っこい頭をぐりぐり撫でながら言うと、ぽん子は小さく唸って黙り込んでしまった。
そもそも従業員でもないのだから、普段からついてくる必要もないのに、ぽん子という奴はあれこれ理由をつけて着いてくるから不思議なやつだ。
「……いいなぁ」
「は?」
何かと思えば、予想外の言葉に意表を突かれて手を引っ込める。
ぽん子は俺をじっと見ているが、半目ではなくなり今は子供のように拗ねた顔だ。
「…神楽ちゃんと新八くんと行くんでしょ?」
「そりゃあな」
「…楽しそうでいいなぁって」
何だこいつ。
もしかして除け者にされるのが嫌で拗ねていたのか。
そう思い、引っ込めた手を再びぽん子の頭に触れると、今度はぽんぽんと軽く弾ませてから静かに乗せた。
「何だァ、いっちょ前に妬いてんのか」
「…は?!」
「そーかそーか。悪かったなぁ、気付いてやれなくて」
「は?!何言ってんの?!」
俺の言葉に顔を真っ赤にさせたぽん子は、俺の手を払い除けて立ち上がると、そんな訳ないし!とそっぽを向いてしまった。
その様子に笑いがこみ上げてきて、ケラケラと笑っているとぽん子は俺をキっと睨む。
「はぁー、悪い悪い」
はぁ、と息を整えて、俺を見下ろすぽん子にひらひらと手を振り、座れとジェスチャーで促した。
渋々といった様子で隣りにまた腰を下ろしたぽん子は、未だに不満げな顔をしている。
「笑って悪かったって。いやぁ、まさかお前がそんなに好きだと思ってなかったからよ」
「い、いや、そんな……好き、だなんて」
「いやいや、隠さなくていいって。好きなんだろ?神楽たちのこと。だから最近いっつも付き纏って…グホァッ」
俺の言葉を遮るように、ぽん子の右ストレートが俺の脇腹にきれいに決まった。
女の力とはいえ、油断していた所を狙われて殴られたところがズキズキと痛む。
というか俺はなぜ殴られなければならなかったのか。
「ちょっ……痛っ…」
「銀ちゃんって変なとこ鈍いよね。なんかもう疲れたし帰るわ」
「は?!意味分かんね…イテテ……」
先程までは、少しだけ可愛いやつだなと思っていたがとんだゴリラに豹変してしまった。
文句の一つでも言ってやろうと顔を上げてぽん子を見やれば、そこには半目でこちらを見るぽん子の姿があった。
「銀ちゃんのバカ!全身蚊に刺されて痒くなってしまえ!」
「何怖いこと言ってくれてんのお前ェェェ!!」
「あー何なに、もううるせーな」
「蜘蛛いる!ちょっと!取ってほしい!」
「……はぁ」
ぽん子は虫が苦手だ。
それは分かるが、指先ほどしかない小さな虫にすらビビって、こうして俺に助けを求めてくる。
ため息を吐きながら重い体を起こして、袖口を這っていた小さな蜘蛛を払って外に逃してやる。
別にそこらに放っておいてもいいのだが、ぽん子が騒ぐとうるさいから初めから外に逃してやるのが得策だ。
ぽん子は安心したように俺の隣りにちょこんと腰掛けると、落ち着いた様子で茶をすすり始めた。
「ぽん子、今度の依頼はお前は呼べねーから」
そんなコイツの横顔を眺めながらそう言うと、ぽん子はあからさまにショックを受けた顔で慌ててグラスをテーブルに置いた。
暇さえあれば依頼についてくるぽん子は、いつの間にか万事屋のサブ従業員のような扱いだが、今回はそういう訳にはいかない。
「えっ!えっ?!何で?」
「虫捕りだから」
「えっ」
虫捕り。
そう告げた俺を、信じられないものを見るような目でぽん子は見つめている。
毎年のことだが、神楽が大会だか何だかで騒ぐほどには、カブトムシ需要は高いのだ。
という訳で、今年も万事屋はカブトムシを探しに行く予定だが、ぽん子は万事屋と知り合って初めての夏ということで、まだ知らなかったようだ。
「えっ…何で虫?」
「は?そりゃ金になるからだろ」
「えっ…普通に仕事した方が良くない?」
「ぽん子…夢がねぇなぁ」
やれやれと半目でぽん子を見やれば、それこそ訳がわからないといった表情で、ぽん子も半目だ。
何だこの空気。
「そういうことだから、お前はついてこなくていいってこと」
丸っこい頭をぐりぐり撫でながら言うと、ぽん子は小さく唸って黙り込んでしまった。
そもそも従業員でもないのだから、普段からついてくる必要もないのに、ぽん子という奴はあれこれ理由をつけて着いてくるから不思議なやつだ。
「……いいなぁ」
「は?」
何かと思えば、予想外の言葉に意表を突かれて手を引っ込める。
ぽん子は俺をじっと見ているが、半目ではなくなり今は子供のように拗ねた顔だ。
「…神楽ちゃんと新八くんと行くんでしょ?」
「そりゃあな」
「…楽しそうでいいなぁって」
何だこいつ。
もしかして除け者にされるのが嫌で拗ねていたのか。
そう思い、引っ込めた手を再びぽん子の頭に触れると、今度はぽんぽんと軽く弾ませてから静かに乗せた。
「何だァ、いっちょ前に妬いてんのか」
「…は?!」
「そーかそーか。悪かったなぁ、気付いてやれなくて」
「は?!何言ってんの?!」
俺の言葉に顔を真っ赤にさせたぽん子は、俺の手を払い除けて立ち上がると、そんな訳ないし!とそっぽを向いてしまった。
その様子に笑いがこみ上げてきて、ケラケラと笑っているとぽん子は俺をキっと睨む。
「はぁー、悪い悪い」
はぁ、と息を整えて、俺を見下ろすぽん子にひらひらと手を振り、座れとジェスチャーで促した。
渋々といった様子で隣りにまた腰を下ろしたぽん子は、未だに不満げな顔をしている。
「笑って悪かったって。いやぁ、まさかお前がそんなに好きだと思ってなかったからよ」
「い、いや、そんな……好き、だなんて」
「いやいや、隠さなくていいって。好きなんだろ?神楽たちのこと。だから最近いっつも付き纏って…グホァッ」
俺の言葉を遮るように、ぽん子の右ストレートが俺の脇腹にきれいに決まった。
女の力とはいえ、油断していた所を狙われて殴られたところがズキズキと痛む。
というか俺はなぜ殴られなければならなかったのか。
「ちょっ……痛っ…」
「銀ちゃんって変なとこ鈍いよね。なんかもう疲れたし帰るわ」
「は?!意味分かんね…イテテ……」
先程までは、少しだけ可愛いやつだなと思っていたがとんだゴリラに豹変してしまった。
文句の一つでも言ってやろうと顔を上げてぽん子を見やれば、そこには半目でこちらを見るぽん子の姿があった。
「銀ちゃんのバカ!全身蚊に刺されて痒くなってしまえ!」
「何怖いこと言ってくれてんのお前ェェェ!!」