短編集
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ひっじかったさーん!」
明るい声を出しながらこちらへ駆けてくるのは、万事屋とよくつるんでいるぽん子だ。
以前、依頼だか何だかで大騒ぎしていたところを注意して以来、こいつからよく声をかけられるようになってしまった。
俺達のことを良く思わない民間人は多いが、こいつは万事屋と馴れ合っているぐらいだから、ちっと頭のネジがぶっ飛んでいるんだろう。
何度も顔を合わす度、懐かれてしまったらしい。
「何でぃチビ助」
「なっ!チビじゃないわよ。沖田さんと土方さんが大きいだけでしょ」
「別に俺達だってデカくもねぇだろ。万事屋だって同じぐれーだろうが」
わざわざ身をかがめてやれば、小柄なぽん子は悔しそうに俺と総悟を睨んだが、生憎ちっとも怖く無い。
むしろガキが睨んでいるようで、見下ろしながら鼻で笑うとぽん子はムッツリと口を結んだ。
「で、今日は何だよ」
「あぁ、そうだった」
「どうせくだらん内容でしょうや」
「うっさいなぁー!意地悪なアンタには無いんだから」
そう言ってぽん子が取り出したのは、いくつかの柏餅だ。
小ぶりな重箱に並んだそれの形は不揃いで、素人目にも大小のバラつきが分かるそれはどうやら手作りのようだ。
「遅くなっちゃったけど、誕生日でしたよね。こどもの日に因んで作ってみました」
「そういやそうだったな」
こどもの日が誕生日だなんて!と近藤さんや総悟どころか隊士からも散々からかわれた数日前のことを思い出し、自然と眉を顰めると、ぽん子は慌てて蓋を閉めた。
「すみません!嫌いでしたか?」
「ちっと嫌な事を思い出しただけだ。気を遣わせてすまねぇな」
「へえ~、ぽん子の手作りにしちゃなかなか美味いじゃねぇですか」
「沖田さん?!いつの間に取ったの!」
「えっ?今」
「勝手に食べるなんて…土方さんに作ってきたのに」
一つ食べ終えた総悟から柏の葉をでこに貼られて、ぽん子は顔を真っ赤にして怒っている。
こうして見ると二人はいいコンビのようだが、それをストレートに言えばぽん子の機嫌が悪くなった経験を踏まえ、オブラートに包んで言ってやった。
「おめーら楽しそうだな」
煙を細く吹き出しながらその光景に笑えば、総悟に背を向けて重箱を守るぽん子は勢いよくこちらを振り向いた。
「どこが!」
「俺ァ楽しいですぜ、ぽん子さん」
「マジで腹立つ!クソガキ!」
「アンタもそう変わりゃせんでしょう。あっ、見た目なら俺よりガキに見えまさァね」
「変わるわよ!こっちは成人してんのよ!」
あの総悟から何とか中身を守ったらしいぽん子は、重箱を俺の腹に突き付けた。
軽い衝撃に慌てて重箱を支えると、ぽん子はグイグイと腹に押し付けながら背伸びをして俺に顔を近づけてきた。
「これ!土方さんに!」
「お、おぅ…」
あまりの気迫に顔をひきつらせながら受け取れば、総悟が横からぽん子の頬を掴んで泣かしにかかっている。
好きなやつほど虐めたいってやつだろうか。
そして何故これを俺にくれるのかと聞きたい所だが、両手が空いたぽん子と手加減しながらもあの手この手で構う二人の中に割って入るほど愚かではない。
「いひゃい!何するのよクソガキ!」
「おーおー、一丁前に色気付きやがって似合わねぇったらねーや」
「総悟、そろそろ見廻り行くぞ」
「へーい」
俺の言葉にぽん子の頭を思い切りかき混ぜたあと、総悟は楽しそうにそのぐしゃぐしゃになった姿にカメラを向けて腹黒い顔でパシャリと一枚撮影した。
もはやズタボロになったぽん子は反撃すら諦めたのか、溜息をつきながら手ぐしで軽く整えると、俺の方に力なく手を振った。
片手を上げてやれば、ぱっと明るい顔になったぽん子は嬉しそうに反対方向へと走り去ってしまった。
「土方さん、後でこの画像面白おかしく加工して送ってあげまさァ」
「何でだよ。つか備品を私用で使ってんじゃねぇ」
結局その後は、柏餅を狙う総悟の相手で全く仕事にならず、そのまま屯所に帰る羽目になったのは言うまでもない。
そのせいか自室に戻った途端どっと疲れが出た俺は、机に重箱置きその蓋を開けて中を確認した。
少し形は崩れているが、粒あん、味噌あんと中の見えるように包まれた柏餅が並んでいる。
一つ口にしてみると、さほど甘くない味が口に広がった。見た目はアレだが味はまぁまぁなものだ。
ぽん子にしては意外に…などと失礼なことを思いつつ食べ進めていると、唐突にメールの着信音が鳴り響く。
怪しく思いながらも二枚の添付画像を開いてみれば、一枚は先程もみくちゃにされたぽん子の姿が届いていた。
「ぶっ……派手にやられてんな」
軽く吹き出してしまったが、気を取り直してもう一枚のデータを開くと、いつの間に撮影したのか俺とぽん子のツーショットが写っていた。
それもただ二人で並んだ写真ではなく、その頭上には総悟の手によって文字がデコレーションされている。
「何が『入籍しました』だ!ふざけんな!クソガキが!」
バチンと音を立てて携帯を閉じ、総悟を探すべく部屋を出ると、俺は全速力で廊下を駆け出した。
恐らくあいつの事だから、手当たり次第にこの画像を見せて回っているに違いない。
コドモは誰だ!
「近藤さん見てくだせぇ、この土方さんの顔」
「おー!珍しく笑ってやがるな!
って!入籍しましたァァァ?!」
「そうでさァ」
「誰が入籍だァァァ!」
「とか言って満更でもねェくせに~」
2021年ハピバ!
明るい声を出しながらこちらへ駆けてくるのは、万事屋とよくつるんでいるぽん子だ。
以前、依頼だか何だかで大騒ぎしていたところを注意して以来、こいつからよく声をかけられるようになってしまった。
俺達のことを良く思わない民間人は多いが、こいつは万事屋と馴れ合っているぐらいだから、ちっと頭のネジがぶっ飛んでいるんだろう。
何度も顔を合わす度、懐かれてしまったらしい。
「何でぃチビ助」
「なっ!チビじゃないわよ。沖田さんと土方さんが大きいだけでしょ」
「別に俺達だってデカくもねぇだろ。万事屋だって同じぐれーだろうが」
わざわざ身をかがめてやれば、小柄なぽん子は悔しそうに俺と総悟を睨んだが、生憎ちっとも怖く無い。
むしろガキが睨んでいるようで、見下ろしながら鼻で笑うとぽん子はムッツリと口を結んだ。
「で、今日は何だよ」
「あぁ、そうだった」
「どうせくだらん内容でしょうや」
「うっさいなぁー!意地悪なアンタには無いんだから」
そう言ってぽん子が取り出したのは、いくつかの柏餅だ。
小ぶりな重箱に並んだそれの形は不揃いで、素人目にも大小のバラつきが分かるそれはどうやら手作りのようだ。
「遅くなっちゃったけど、誕生日でしたよね。こどもの日に因んで作ってみました」
「そういやそうだったな」
こどもの日が誕生日だなんて!と近藤さんや総悟どころか隊士からも散々からかわれた数日前のことを思い出し、自然と眉を顰めると、ぽん子は慌てて蓋を閉めた。
「すみません!嫌いでしたか?」
「ちっと嫌な事を思い出しただけだ。気を遣わせてすまねぇな」
「へえ~、ぽん子の手作りにしちゃなかなか美味いじゃねぇですか」
「沖田さん?!いつの間に取ったの!」
「えっ?今」
「勝手に食べるなんて…土方さんに作ってきたのに」
一つ食べ終えた総悟から柏の葉をでこに貼られて、ぽん子は顔を真っ赤にして怒っている。
こうして見ると二人はいいコンビのようだが、それをストレートに言えばぽん子の機嫌が悪くなった経験を踏まえ、オブラートに包んで言ってやった。
「おめーら楽しそうだな」
煙を細く吹き出しながらその光景に笑えば、総悟に背を向けて重箱を守るぽん子は勢いよくこちらを振り向いた。
「どこが!」
「俺ァ楽しいですぜ、ぽん子さん」
「マジで腹立つ!クソガキ!」
「アンタもそう変わりゃせんでしょう。あっ、見た目なら俺よりガキに見えまさァね」
「変わるわよ!こっちは成人してんのよ!」
あの総悟から何とか中身を守ったらしいぽん子は、重箱を俺の腹に突き付けた。
軽い衝撃に慌てて重箱を支えると、ぽん子はグイグイと腹に押し付けながら背伸びをして俺に顔を近づけてきた。
「これ!土方さんに!」
「お、おぅ…」
あまりの気迫に顔をひきつらせながら受け取れば、総悟が横からぽん子の頬を掴んで泣かしにかかっている。
好きなやつほど虐めたいってやつだろうか。
そして何故これを俺にくれるのかと聞きたい所だが、両手が空いたぽん子と手加減しながらもあの手この手で構う二人の中に割って入るほど愚かではない。
「いひゃい!何するのよクソガキ!」
「おーおー、一丁前に色気付きやがって似合わねぇったらねーや」
「総悟、そろそろ見廻り行くぞ」
「へーい」
俺の言葉にぽん子の頭を思い切りかき混ぜたあと、総悟は楽しそうにそのぐしゃぐしゃになった姿にカメラを向けて腹黒い顔でパシャリと一枚撮影した。
もはやズタボロになったぽん子は反撃すら諦めたのか、溜息をつきながら手ぐしで軽く整えると、俺の方に力なく手を振った。
片手を上げてやれば、ぱっと明るい顔になったぽん子は嬉しそうに反対方向へと走り去ってしまった。
「土方さん、後でこの画像面白おかしく加工して送ってあげまさァ」
「何でだよ。つか備品を私用で使ってんじゃねぇ」
結局その後は、柏餅を狙う総悟の相手で全く仕事にならず、そのまま屯所に帰る羽目になったのは言うまでもない。
そのせいか自室に戻った途端どっと疲れが出た俺は、机に重箱置きその蓋を開けて中を確認した。
少し形は崩れているが、粒あん、味噌あんと中の見えるように包まれた柏餅が並んでいる。
一つ口にしてみると、さほど甘くない味が口に広がった。見た目はアレだが味はまぁまぁなものだ。
ぽん子にしては意外に…などと失礼なことを思いつつ食べ進めていると、唐突にメールの着信音が鳴り響く。
怪しく思いながらも二枚の添付画像を開いてみれば、一枚は先程もみくちゃにされたぽん子の姿が届いていた。
「ぶっ……派手にやられてんな」
軽く吹き出してしまったが、気を取り直してもう一枚のデータを開くと、いつの間に撮影したのか俺とぽん子のツーショットが写っていた。
それもただ二人で並んだ写真ではなく、その頭上には総悟の手によって文字がデコレーションされている。
「何が『入籍しました』だ!ふざけんな!クソガキが!」
バチンと音を立てて携帯を閉じ、総悟を探すべく部屋を出ると、俺は全速力で廊下を駆け出した。
恐らくあいつの事だから、手当たり次第にこの画像を見せて回っているに違いない。
コドモは誰だ!
「近藤さん見てくだせぇ、この土方さんの顔」
「おー!珍しく笑ってやがるな!
って!入籍しましたァァァ?!」
「そうでさァ」
「誰が入籍だァァァ!」
「とか言って満更でもねェくせに~」
2021年ハピバ!