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人と人の繋がりなんて、ひとつのきっかけでどうとでもなっていくものだと知ったのは、つい最近のこと。
文芸部に入部してすぐに、山崎先輩から話でも詩でも何でもいいから書いて!と文芸誌を書かされた時、それはそれは恥ずかしくて顔から火が出るほどだった。
だけど初めて文字を綴り、小さくてもそれが本になった時、私の中で恥ずかしい以上に楽しいという気持ちでいっぱいになった。
それは山崎先輩が褒めてくれたこともあったけど、もう1人の影響も大きい。
それが今、目の前にいる河上先輩の存在だ。
「ぬしの書く詩は、やはりいいな」
「そ、そうですかね…」
「うむ。例えるならば、初夏のそよ風のような心地良さを感じるでござるよ」
「ふふっありがとうございます」
文芸部のメンバーでは冊子の内容も量も足りないということで、山崎先輩が万事部に頼み込んだ時、初めて私と河上先輩は出会った。
私のたどたどしい小説を読んだ河上先輩から、詩を書いて欲しいと言われた時には頭が真っ白になったけれど、今はこうして山崎先輩抜きでも会うようになった。
「して、ぽん子」
「なんですか?」
私の書いた詩を何枚かめくりながら、河上先輩はほんの少しだけ眉をひそめた気がした。
「ぽん子は悩みでも抱えておるのか?」
「えっ?」
「いや、ここの所…ぬしの書く言葉に迷いというか、何と申したら良いか…」
口元に手をやりながら悩む先輩に、やっぱり鋭い人だなぁと苦笑いをする。
先輩が言うように、私は絶賛迷いに迷っているのだ。
「やっぱり分かっちゃいますよね」
私は河上先輩のことが好きで、こんなに近くにいるのに伝えられないでいる弱い自分に嫌気がさしている。
そんな思いがきっと今の私が書く言葉に滲んでいるんだろう。
「拙者が手伝えることはあるか?悩みを聞くぐらいしか出来ぬかもしれんが…」
「いえ!大丈夫です!」
そうか、と小さく呟く先輩はいつも通り格好よくて、こんな姿を間近で見られるだけ私は幸せ者かもしれない。
喧嘩ばかりしていて、学校にもあまり来なくて、不良で、怖い人。
そういう風に思われている先輩の、こんな優しい姿を知っている人はきっと少ないと思うから。
「私、先輩の作る曲…すごく好きです」
「ほう、それは嬉しいな」
「先輩の見た目って怖いから、こんな優しい曲作ってるなんて皆知ったら驚くだろうなぁ」
「ぽん子…拙者のことそんな風に見ておったのか…」
「あっ、えっと…今は怖くないですよ!」
しゅんとした先輩に慌てて否定すれば、先輩はクックっと小さく笑って私はからかわれたと瞬時に理解した。
「拙者がこんな曲を書けるようになったのも、ぽん子が優しい詩を書いてくれるからでござるよ」
ありがとう。
河上先輩がそういうと、私の心はきゅっと切なくなった。
(先輩は誰を思って、この歌を歌うのかな)
(私が書いた先輩へのメッセージを受け取る誰か)
(誰かが)
「そんな事ないですよ。先輩が作る音楽は、最初からとっても優しいですもん」
じゃあそろそろ私は帰りますね、とへらっと笑って席を立てば、先輩は優しく微笑んで「ではまた」と手を振ってくれた。
教室を出ればギターを弦を優しく弾く音が小さく聞こえて、私はその音に目元がじわりと熱くなった。
(好きと言ったら、応えてくれますか)
文芸部に入部してすぐに、山崎先輩から話でも詩でも何でもいいから書いて!と文芸誌を書かされた時、それはそれは恥ずかしくて顔から火が出るほどだった。
だけど初めて文字を綴り、小さくてもそれが本になった時、私の中で恥ずかしい以上に楽しいという気持ちでいっぱいになった。
それは山崎先輩が褒めてくれたこともあったけど、もう1人の影響も大きい。
それが今、目の前にいる河上先輩の存在だ。
「ぬしの書く詩は、やはりいいな」
「そ、そうですかね…」
「うむ。例えるならば、初夏のそよ風のような心地良さを感じるでござるよ」
「ふふっありがとうございます」
文芸部のメンバーでは冊子の内容も量も足りないということで、山崎先輩が万事部に頼み込んだ時、初めて私と河上先輩は出会った。
私のたどたどしい小説を読んだ河上先輩から、詩を書いて欲しいと言われた時には頭が真っ白になったけれど、今はこうして山崎先輩抜きでも会うようになった。
「して、ぽん子」
「なんですか?」
私の書いた詩を何枚かめくりながら、河上先輩はほんの少しだけ眉をひそめた気がした。
「ぽん子は悩みでも抱えておるのか?」
「えっ?」
「いや、ここの所…ぬしの書く言葉に迷いというか、何と申したら良いか…」
口元に手をやりながら悩む先輩に、やっぱり鋭い人だなぁと苦笑いをする。
先輩が言うように、私は絶賛迷いに迷っているのだ。
「やっぱり分かっちゃいますよね」
私は河上先輩のことが好きで、こんなに近くにいるのに伝えられないでいる弱い自分に嫌気がさしている。
そんな思いがきっと今の私が書く言葉に滲んでいるんだろう。
「拙者が手伝えることはあるか?悩みを聞くぐらいしか出来ぬかもしれんが…」
「いえ!大丈夫です!」
そうか、と小さく呟く先輩はいつも通り格好よくて、こんな姿を間近で見られるだけ私は幸せ者かもしれない。
喧嘩ばかりしていて、学校にもあまり来なくて、不良で、怖い人。
そういう風に思われている先輩の、こんな優しい姿を知っている人はきっと少ないと思うから。
「私、先輩の作る曲…すごく好きです」
「ほう、それは嬉しいな」
「先輩の見た目って怖いから、こんな優しい曲作ってるなんて皆知ったら驚くだろうなぁ」
「ぽん子…拙者のことそんな風に見ておったのか…」
「あっ、えっと…今は怖くないですよ!」
しゅんとした先輩に慌てて否定すれば、先輩はクックっと小さく笑って私はからかわれたと瞬時に理解した。
「拙者がこんな曲を書けるようになったのも、ぽん子が優しい詩を書いてくれるからでござるよ」
ありがとう。
河上先輩がそういうと、私の心はきゅっと切なくなった。
(先輩は誰を思って、この歌を歌うのかな)
(私が書いた先輩へのメッセージを受け取る誰か)
(誰かが)
「そんな事ないですよ。先輩が作る音楽は、最初からとっても優しいですもん」
じゃあそろそろ私は帰りますね、とへらっと笑って席を立てば、先輩は優しく微笑んで「ではまた」と手を振ってくれた。
教室を出ればギターを弦を優しく弾く音が小さく聞こえて、私はその音に目元がじわりと熱くなった。
(好きと言ったら、応えてくれますか)